1 弁護士となる資格(現行弁護士法4条,5条及び6条)
弁護士となる資格については,弁護士法(昭和24年法律第205号。1949年9月1日から施行(同法80条))の第4条,第5条及び第6条に規定があります(本記事5(2)及び6並びに「「二回試験」(あるいは「司法修習生考試」)及びその由来」記事(https://donttreadonme.blog.jp/archives/981057.html)参照)。
(1)弁護士法4条:司法修習生の修習を終えた者
本則は弁護士法4条で,「司法修習生の修習を終えた者は,弁護士となる資格を有する。」と規定しています。「司法修習制度の意義は,〔略〕歴史に照らしても明らかなとおり,判事,検事,弁護士が統一に修習を受けることにある。このことは「明治年代以来引き続いて判事,検事と弁護士との間に多少とも認められていた格差を払拭」したものとも評されている」とのことです(日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法(第2版補正版)』(弘文堂・1998年)43頁)。
弁護士の前身たる明治時代における「代言人の地位・待遇は,当時にあって大変低く,判事・検事と差別的に取り扱われていた。一例を示せば,代言人が裁判所に入るためには,守衛に名刺を出してその認印を受けて裁判官に回してもらわなければならなかったし,退出するためには,先の名刺に裁判官の認印をもらって守衛に示さなければならなかった。廷吏が代言人を呼ぶのはすべて呼び捨てであり,退出の際は廷吏の「サガレ」という号令に従わなければならなかった。また,官吏に「不恭ノ言」があったときは,直ちに裁判官により弁護人たることを免ぜられることになっており,社会的に声望のあった星亨も,ある重罪事件で検事に抗議したため,弁護人を免ぜられている。」(司法研修所『平成18年版 刑事弁護実務』4頁)というような官尊民卑の伝統は,なかなか払拭できないものだったのでしょう。
(2)現行弁護士法5条:法務大臣の認定を受けた者
弁護士法4条の原則規定に対して,同法5条は法務大臣の認定を受けた者についての弁護士の資格の特例について定めていますが,当該認定を受けるためのそもそもの前提として,「司法修習生となる資格を得た」こと(同条1号,2号及び4号)又は「検察庁法(昭和22年法律第61号)第18条第3項に規定する考試を経た」こと(弁護士法5条3号及び4号)が必要となります。
ア 司法修習生となる資格=司法試験合格
よく知られているように,司法修習生となる資格を得るためには,司法試験に合格しなければなりません(裁判所法(昭和22年法律第59号)66条1項及び司法試験法(昭和24年法律第140号)1条2項)。
司法試験は短答式(択一式を含む。)及び論文式による筆記の方法で行われ(司法試験法2条1項),短答式試験は憲法,民法及び刑法の3科目について(同法3条1項),論文式試験は公法系科目(憲法及び行政法に関する分野の科目),民事系科目(民法,商法及び民事訴訟法に関する分野の科目),刑事系科目(刑法及び刑事訴訟法に関する分野の科目)及び専門的な法律の分野に関する科目のうちから受験者があらかじめ選択した1科目の4科目(同条2項)について行われます。
イ 検察官特別考試を経た者
検察庁法18条3項は「3年以上副検事の職に在つて政令で定める考試を経た者は,第1項の規定にかかわらず,これを二級の検事に任命及び叙級することができる。」と規定しています。ここでの政令は,検察官特別考試令(昭和25年政令第349号)です。
検察官特別考試は検察官・公証人特別任用等審査会(国家行政組織法(昭和23年法律第120号)8条並びに法務省組織令(平成12年政令第248号)54条及び56条)によって行われ,筆記及び口述の2段階があり(検察官特別考試令5条1項),筆記試験は憲法,民法,商法,民事訴訟法,刑法,刑事訴訟法及び検察の実務の7科目について行われ(同令6条),口述試験は憲法,刑法,刑事訴訟法及び検察の実務の4科目について行われます(同令8条1項)。
この考試は狭き門であるようで,2024年9月3日の検察官・公証人特別任用等審査会検察官特別任用分科会(出席委員は,寺脇一峰弁護士(分科会長),小川恵司弁護士,北川佳世子早稲田大学大学院法務研究科教授,佐伯仁志中央大学大学院法務研究科教授及び堀田眞哉最高裁判所事務総長)の議事概要を見ると,同年7月2日から同月4日まで行われた筆記試験においては8人が受験し,合格者無しであったそうです。2023年には筆記試験の受験者3人中合格者無しであり(同分科会議事概要同年9月5日),2022年には筆記試験受験者9人中2名が合格したものの(同議事概要同年9月6日),口述試験を経ての最終合格者はありませんでした(同議事概要同年10月21日)。最後に最終合格者が出たのは,2020年の1名です(同議事概要同年10月16日)。
(なお,検察庁法には,「検事は,一級又は二級とし,副検事は二級とする。」(同法15条2項)とか,「検察事務官は二級又は三級とする。」(同法27条2項)というような規定がありますが,ここでの一級,二級及び三級は,それぞれ,旧官吏制度における親任官及び勅任官(一級),奏任官(二級)並びに判任官(三級)に対応するものです(旧裁判所構成法(明治23年法律第6号)79条1項及び88条1項並びに検察庁法15条1項参照。)。)
ウ 元最高裁判所裁判官
司法試験又は検察官特別考試という試験を経ずに弁護士となり得る場合としては,弁護士法6条が「最高裁判所の裁判官の職に在つた者は,第4条の規定にかかわらず,弁護士となる資格を有する。」と規定しています。最高裁判所の裁判官に任命されるためには,確かに「識見の高い,法律の素養のある年齢40年以上の者」であればよいのであって(裁判所法41条1項),そこでは司法修習生となる資格を得たことは要求されていません。
「「最高裁判所裁判官の職に在つた」ということは,「司法修習生の修習を終えた」こととその内容を相当異にするものであることは否めない」ものの,「最高裁判所は,上告及び訴訟法で特に認める抗告について裁判権をもつ(裁判所法7条)他,規則制定権(憲法77条1項),法律等の違憲審査権(同81条),下級裁判所の裁判官の指名権(同80条1項),司法行政監督権(裁判所法80条1号)等の権能を有する。/最高裁判所裁判官は,かかる権能の行使の担い手として高度の法律的職責に携わってきたものであり,この職に在ったことのみで,特に弁護士の資格が付与されることとされたのである。」ということだそうです(日本弁護士連合会調査室50頁)。
2 弁護士法5条の原始規定(1949年9月1日)
現行弁護士法(昭和8年法律第53号の同名の法律(旧弁護士法)の全部を改正したもの)の成立当初は,現在の弁護士法5条及び6条に相当する規定が第5条一本にまとめられていました。(なお,同条1号から3号までの各号には句点が付されていますが,「号における字句の場合,その字句が名詞形で終るときには,〔略〕原則として句点を付けない。しかし,その字句が名詞形で終っても,「こと」又は「とき」で終るとき及びその号の中で更に字句が続くときには,〔略〕句点を付ける。また,その字句が動詞形で終わるときにも,〔略〕句点を付ける。」と説く(前田正道編『ワークブック法制執務〈全訂〉』(ぎょうせい・1983年)567頁)現在の立法技術上の美学からすると,当該美学がなおも確立していなかった昭和二十年代という時代を感じさせるものとなっています。)
(弁護士の資格の特例)
第5条 左に掲げる者は,前条の規定にかかわらず,弁護士となる資格を有する。
二 司法修習生となる資格を得た後,5年以上簡易裁判所判事,検察官,裁判所調査官,裁判所事務官,法務府事務官又は司法研修所若しくは法務府研修所の教官の職に在つた者。
三 5年以上別に法律で定める大学の学部,専攻科又は大学院において法律学の教授又は助教授の職に在つた者。
四 前2号に掲げる職の2以上に在つて,その年数を通算して5年以上となる者。但し,第2号に掲げる職については,司法修習生となる資格を得た後の在職年数に限る。
これを見ると,最高裁判所の元裁判官(第1号)の外,別に法律で定める大学の学部,専攻科又は大学院において法律学の教授又は助教授の職に在った者(第3号)も司法試験を経ずに弁護士になり得るものとされていました。弁護士法5条3号の「別に法律で定める大学」は旧弁護士法第五条第三号に規定する大学を定める法律(昭和25年法律第188号)によって,同法施行日の1950年5月18日から「学校教育法(昭和22年法律第26号)による大学で法律学を研究する大学院の置かれているもの及び旧大学令(大正7年勅令第388号)による大学」とされていました。
3 弁護士法5条等の変遷その1(中央省庁等改革(2001年1月6日)まで)
1950年4月14日から,弁護士法5条2号の司法研修所の次に「,裁判所書記官研修所」が加えられます(裁判所法等の一部を改正する法律(昭和25年法律第96号)3条及び附則1項)。「簡易裁判所判事,検察官,裁判所調査官,裁判所事務官,法務府事務官又は司法研修所,裁判所書記官研修所若しくは法務府研修所の教官の職に在つた者。」となったわけです。
1951年6月9日からは,弁護士法5条2号の最後に「又は衆議院若しくは参議院の法制局参事」が加わりました(弁護士法の一部を改正する法律(昭和26年法律第221号))。その結果は「簡易裁判所判事,検察官,裁判所調査官,裁判所事務官,法務府事務官,司法研修所,裁判所書記官研修所若しくは法務府研修所の教官又は衆議院若しくは参議院の法制局参事の職に在つた者。」となりました。日本国憲法と共に1947年5月3日から施行された国会法(昭和22年法律第79号)131条において既に各議院に法制部を置くこととされていましたが(当時の同条の内容は現在の同法131条1項に相当する規定のみであって,「法制局」が「法制部」となっていたもの),1948年7月5日から法制局と改められ,法制局長及び参事に関する規定も整備されています(昭和23年法律第87号。同法により改正された国会法131条の内容は,現在の同条の規定に加えて第7項として「法制局の事務の処理に関し必要な規程を定めるには,議院運営委員会の承認を得なければならない。」という規定があったもの)。
ここで,衆議院法制局及び参議院法制局の各参事があるのに内閣法制局参事官がないのはどうしてだろう,という疑問が不図生ずるかもしれませんが,それは法務府事務官に含まれていたところです。
1952年8月1日に法務府が法務省と法制局に分かれた際(法務府設置法等の一部を改正する法律(昭和27年法律第268号)及び法制局設置法(昭和27年法律第252号)),弁護士法5条2号も「司法修習生となる資格を得た後,5年以上簡易裁判所判事,検察官,裁判所調査官,裁判所事務官,法務 事務官,司法研修所,裁判所書記官研修所若しくは法務 研修所の教官,衆議院若しくは参議院の法制局参事又は法制局参事官の職に在つた者。」に改められています(昭和27年法律第268号17条及び附則1項)。法制局の名称は総理府設置法等の一部を改正する法律(昭和37年法律第77号)6条によって内閣法制局に改められ(1962年7月1日からです(同法附則1項)。物事の名称は短い方が偉いのであって,内閣にある法制局が端的に法制局と名乗ってしまうと衆議院法制局及び参議院法制局はそれよりも格が落ちる亜流と受け取られてしまう,というような苦情があったのでしょう。),同法附則9項により弁護士法5条2号も1962年7月1日から「司法修習生となる資格を得た後,5年以上簡易裁判所判事,検察官,裁判所調査官,裁判所事務官,法務事務官,司法研修所,裁判所書記官研修所若しくは法務総合研究所の教官,衆議院若しくは参議院の法制局参事又は内閣法制局参事官の職に在つた者。」と改められています。法務研修所の法務総合研究所への改編は法務省設置法の一部を改正する法律(昭和34年法律第50号)によって1959年4月1日に既に行われていたので(同法附則),昭和37年法律第77号附則9項による弁護士法5条2号中の「法務研修所」を「法務総合研究所」に改める改正は,3年来の改正漏れを事後弥縫する「こっそり改正」でしょう。同項に続く昭和37年法律第77号附則10項には「改正後の弁護士法第5条の規定の適用については,第6条の規定の施行前における法務研修所の教官の在職は法務総合研究所の教官の在職と,法制局参事官の在職は内閣法制局参事官の在職とみなす。」との経過規定があります。なお,ここでねちっこく,同項の規定は正確かつ厳密に書くのならば「改正後の弁護士法第5条の規定の適用については,法務省設置法の一部を改正する法律(昭和34年法律第50号)の施行前における法務研修所の教官の在職は法務総合研究所の教官の在職と,第6条の規定の施行前における法制局参事官の在職は内閣法制局参事官の在職とみなす。」であるべきだ,などというのは野暮なのでしょう。昭和34年法律第50号の施行日である1959年4月1日より前の時期は,昭和37年法律第77号の「第6条の規定の施行前」に含まれます。
また,裁判所書記官(裁判所法60条)及び検察事務官(検察庁法27条)の位置付けも気になりますが,弁護士法5条においては,前者は「裁判所事務官」に,後者は「法務事務官」に含まれています(日本弁護士連合会調査室51頁)。
国家行政組織法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(昭和58年法律第78号)32条によって,同法施行日の1984年7月1日(同法附則1項)から法務総合研究所を置くことが法律事項から政令事項に落ちたため,同法39条によって弁護士法5条2号も「司法修習生となる資格を得た後,5年以上簡易裁判所判事,検察官,裁判所調査官,裁判所事務官,法務事務官,司法研修所,裁判所書記官研修所若しくは法務省設置法(昭和22年法律第193号)第3条第35号及び第36号の事務をつかさどる機関で政令で定めるものの教官,衆議院若しくは参議院の法制局参事又は内閣法制局参事官の職に在つた者。」に改められました。当該弁護士法5条2号の政令は昭和59年政令第221号で,その題名は当初は「弁護士法第五条第二号の機関を定める政令」でしたが,現在は「弁護士法第五条第一号の機関を定める政令」となっています。なお,中央省庁等改革関係法施行法(平成11年法律第160号)316条により,2001年1月6日から(同法附則1条),弁護士法5条2号は「司法修習生となる資格を得た後,5年以上簡易裁判所判事,検察官,裁判所調査官,裁判所事務官,法務事務官,司法研修所,裁判所書記官研修所若しくは法務省設置法(平成11年法律第93号)第4条第36号又は第38号の事務をつかさどる機関で政令で定めるものの教官,衆議院若しくは参議院の法制局参事又は内閣法制局参事官の職に在つた者。」となりました。
4 弁護士法5条等の変遷その2(司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律(平成15年法律第128号)=2004年4月1日第1次改正)
(1)平成15年法律第128号による2004年4月1日第1次改正
現在の弁護士法5条から6条までに規定された制度の形に向けた・それまでの弁護士法5条の規定に係る大きな改正が,司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律(平成15年法律第128号)7条によってされることになりました(同法附則1条は,同法は2004年4月1日から施行されるものと規定)。
同法による改正直後の弁護士法を以下「2004年4月1日第1次弁護士法」といいます。
2004年4月1日第1次弁護士法などとは「同日には第1次に続いて第2,第3の弁護士法があったのであろうか」と訝しがられるものであろう面妖な呼称ですが,実はそのとおりで,2004年4月1日には,平成15年法律第128号によるもののほか,裁判所法の一部を改正する法律(平成16年法律第8号)附則5条による改正(「〔弁護士法〕第5条中「裁判所書記官研修所」を「裁判所職員総合研修所」に改める」もの)及び弁護士法の一部を改正する法律(平成16年法律第9号)による小さからざる改正が弁護士法に対して重畳的(3重)に行われていたのでした(平成16年法律第8号附則1条及び同年法律第9号附則1条はいずれも2004年4月1日を各法の施行日としています。)。その結果,後法は先法を破るとの原則によって(平成16年法律第8号及び同年法律第9号が平成15年法律第128号に対して後法の関係にあることは明らかでしょう。)――観念的にはともかくも(平成16年法律第9号の附則3条及び4条における「旧法」の存在を参照(註1))――2004年4月1日第1次弁護士法の一部には最初から効力を生じていない部分があるのでした。なお,後法・先法の「前後は,立法者の意思――法令の内容が最終的に確定した時(法律についていえば,法律案が法律として成立した時)を基準とするのが妥当とされている」ところ(前田編38頁),そうであれば,平成16年法律第8号及び同年法律第9号は2004年3月31日に参議院本会議において法案が一括して採決されて同時に成立していますから(第159回国会参議院会議録第11号4頁),両法間には先法・後法の関係はないことになります(天皇による法律の裁可(大日本帝国憲法5条及び6条)ならぬ公布(日本国憲法7条1号)の前後で決めるわけにはいかないでしょう。)。
(2)2004年4月1日第1次弁護士法
ア 条文
2004年4月1日第1次弁護士法5条から6条までは,次のとおり。
(司法修習生となる資格を得た後に簡易裁判所判事等の職に在つた者についての弁護士の資格の特例)
第5条 司法修習生となる資格を得た後,簡易裁判所判事,検察官,裁判所調査官,裁判所事務官,法務事務官,司法研修所,裁判所書記官研修所若しくは法務省設置法(平成11年法律第93号)第4条第36号若しくは第38号の事務をつかさどる機関で政令で定めるものの教官,衆議院若しくは参議院の法制局参事又は内閣法制局参事官の職に在つた期間が通算して5年以上になる者は,前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有する。
第5条の2 法務大臣が,次の各号のいずれかに該当し,その後に弁護士業務について法務省令で定める法人が実施する研修であつて法務大臣が指定するものの課程を修了したと認定した者は,第4条の規定にかかわらず,弁護士となる資格を有する。
一 司法修習生となる資格を得た後に衆議院議員又は参議院議員の職に在つた期間が通算して5年以上になること。
二 司法修習生となる資格を得た後に自らの法律に関する専門的知識に基づいて次に掲げる事務のいずれかを処理する職務に従事した期間が通算して7年以上になること。
イ 企業その他の事業者(国及び地方公共団体を除く。)の役員,代理人又は使用人その他の従業者として行う当該事業者の事業に係る事務であつて,次に掲げるもの(第72条の規定に違反しないで行われるものに限る。)
(1) 契約書案その他の事業活動において当該事業者の権利義務についての法的な検討の結果に基づいて作成することを要する書面の作成
(2) 裁判手続等(裁判手続及び法務省令で定めるこれに類する手続をいう。以下同じ。)のための事実関係の確認又は証拠の収集
(3) 裁判手続等において提出する訴状,申立書,答弁書,準備書面その他の当該事業者の主張を記載した書面の案の作成
(4) 裁判手続等の期日における主張若しくは意見の陳述又は尋問
(5) 民事上の紛争の解決のための和解の交渉又はそのために必要な事実関係の確認若しくは証拠の収集
ロ 公務員として行う国又は地方公共団体の事務であつて,次に掲げるもの
(1) 法令(条例を含む。)の立案,条約その他の国際約束の締結に関する事務又は条例の制定若しくは改廃に関する議案の審査若しくは審議
(3) 法務省令で定める審判その他の裁判に類する手続における審理又は審決,決定その他の判断に係る事務であつて法務省令で定める者が行うもの
三 検察庁法(昭和22年法律第61号)第18条第3項に規定する考試を経た後に検察官(副検事を除く。)の職に在つた期間が通算して5年以上になること。
2 前項の規定の適用については,次の各号に掲げる期間(前条又は同項第1号に規定する職に在つた期間については司法修習生となる資格を得た後のものに限り,同項第3号に規定する職に在つた期間については検察庁法第18条第3項に規定する考試を経た後のものに限る。)は,それぞれ当該各号に定める規定に規定する職に在つた期間又は職務に従事した期間とみなす。
一 前条又は第6条第1項第2号に規定する職に在つた期間 前項各号
三 前項第3号に規定する職に在つた期間 同項第1号及び第2号
第5条の3 前条第1項の規定により弁護士となる資格を得ようとする者は,氏名,司法修習生となる資格を取得し,又は検察庁法第18条第3項の考試を経た年月日,前条第1項第1号若しくは第3号の職に在つた期間又は同項第2号の職務に従事した期間及び同号の職務の内容その他の法務省令で定める事項を記載した認定申請書を法務大臣に提出しなければならない。
2 前項の認定申請書には,司法修習生となる資格を取得し,又は検察庁法第18条第3項の考試を経たことを証する書類,前条第1項第1号若しくは第3号の職に在つた期間又は同項第2号の職務に従事した期間及び同号の職務の内容を証する書類その他の法務省令で定める書類を添付しなければならない。
3 第1項の規定による申請をする者は,実費を勘案して政令で定める額の手数料を納めなければならない。
第5条の4 法務大臣は,前条第1項の規定による申請をした者(以下この章において「申請者」という。)が第5条の2第1項各号のいずれかに該当すると認めるときは,申請者に対し,その受けるべき同項の研修(以下この条において単に「研修」という。)を定めて書面で通知しなければならない。
2 研修を実施する法人は,申請者がその研修の課程を終えたときは,遅滞なく,法務省令で定めるところにより,当該申請者の研修の履修の状況(当該研修の課程を修了したと法務大臣が認めてよいかどうかの意見を含む。)を書面で法務大臣に報告しなければならない。
3 法務大臣は,前項の規定による報告に基づき,申請者が研修の課程を修了したと認めるときは,当該申請者について第5条の2第1項の認定(以下この章において単に「認定」という。)を行わなければならない。
4 法務大臣は,前条第1項の規定による申請につき認定又は却下の処分をするときは,申請者に対し,書面によりその旨を通知しなければならない。
第5条の5 法務大臣は,研修の内容が,弁護士業務を行うのに必要な能力の習得に適切かつ十分なものと認めるときでなければ,第5条の2第1項の規定による研修の指定をしてはならない。
2 研修を実施する法人は,前項の研修の指定に関して法務大臣に対して意見を述べることができる。
3 法務大臣は,第5条の2第1項の研修の適正かつ確実な実施を確保するために必要な限度において,当該研修を実施する法人に対し,当該研修に関して,必要な報告若しくは資料の提出を求め,又は必要な意見を述べることができる。
第5条の6 法務大臣は,認定に関する事務の処理に関し必要があると認めるときは,申請者に対し必要な資料の提出を求め,又は公務所,公私の団体その他の関係者に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
第5条の7 この法律に定めるもののほか,認定の手続に関し必要な事項は,法務省令で定める。
(最高裁判所の裁判官の職に在つた者等についての弁護士の資格の特例)
第6条 次に掲げる者は,第4条の規定にかかわらず,弁護士となる資格を有する。
二 別に法律で定める大学の学部,専攻科又は大学院における法律学の教授又は助教授の職に在つた期間が通算して5年以上となる者
2 前項第2号の規定の適用については,司法修習生となる資格を得た後に第5条に規定する職に在つた期間は,同号に規定する職に在つた期間とみなす。
イ 元最高裁判所裁判官及び法律学教授・助教授に係る現状維持
2004年4月1日第1次弁護士法5条は,それまでの弁護士法5条2号を踏襲したものです。それまでの弁護士法5条1号及び3号の規定は2004年4月1日第1次弁護士法6条1項に,それまでの弁護士法5条4号は2004年4月1日第1次弁護士法6条2項にまとめられています。
ウ 法務大臣の認定による特例の対象者
(ア)司法修習生となる資格を得た国会議員
2004年4月1日第1次弁護士法5条の2第1項1号は,それまでの弁護士法5条「2号に「衆議院又は参議院の議員」を加えることが一時問題となったこともあ」ったところが(日本弁護士連合会調査室53頁),当該問題の蒸し返しに対する対応ということになるのでしょう。
(イ)企業法務等担当者
2004年4月1日第1次弁護士法5条の2第1項2号はいわゆる企業等に対応するものとなります。(しかし,かつては事業官庁というものがあり,また,「明治憲法以来のわが国の通説は,各種の国公営サービス,たとえば,交通,郵便,電話,水道などの利用は,特別の制定法の定めがない限り,民法上の契約として理解してきた」ところであり,かつ,「官庁土木の請負は当然民法上のものと理解されてきた」(塩野宏『行政法Ⅰ』(有斐閣・1991年)142頁)にもかかわらず,2004年4月1日第1次弁護士法5条の2第1項2号ロ(2)(現行弁護士法5条2号ロ(2))が「契約書案その他の事業活動において当該事業者の権利義務についての法的な検討の結果に基づいて作成することを要する書面の作成」を除外しているのはどうしたものでしょうか。)
(ウ)検察官特別考試を経た特任検事
2004年4月1日第1次弁護士法5条の2第1項3号は,いわゆる特任検事に関する規定ということになります。「いわゆる特任検事(検察庁法六〔一八〕条3項,検察官特別考試令・昭和25年政令349号)に弁護士資格を付与すべきであるとの立法論的提言がなされたことがある(昭和39年〔1964年〕8月の臨時司法制度調査会意見書)」ところ,「これに対しては,判・検事,弁護士が等しく司法試験及び司法修習を終えることを共通の資格要件とするわが国の法曹養成制度の根幹を乱すとの立場から,強い反対の意見が述べられている(昭和39年12月19日付日弁連臨時総会決議)」(日本弁護士連合会調査室52-53頁)ということがあったにもかかわらず設けられたものということになるようです。
しかしこれについては,2004年4月1日第1次弁護士法5条の2第1項(現行弁護士法5条)の法務省令で定める法人は,弁護士となる資格に係る認定の手続等に関する規則(平成16年法務省令第13号)(註2)1条により日本弁護士連合会となっていますから,弁護士側に最終的研修実施権が留保され,かつ,修了認定に対する意見表明権(2004年4月1日第1次弁護士法5条の4第2項括弧書き,すなわち現行弁護士法5条の3第2項括弧書き)が確保されているので,よいのでしょう(これに対して当初の内閣提出案では,いわゆる特任検事に弁護士資格を認めるために,研修の修了の認定は要件とされていませんでした。)。なお,当該研修については,2004年3月12日の衆議院法務委員会において寺田逸郎政府参考人(法務省大臣官房司法法制部長)から説明があって,「特任検事は,これはもう法廷の経験は十分にあるわけでございますけれども,現に民事面での理論的な問題等が若干欠けているという,〔略〕問題といたしまして,やはり民事でいいますと,どういうものが証拠として立証されるべきであるかということについての,私どもは要件事実と申しておりますけれども,そういうものについての理論面での共通した認識を持っていただくというための講義は,当然のことながら必要になります。/そのほかに,法廷面でのいろいろな問題もございますし,特に弁護士倫理というようなところは,やはり共通の問題としてしっかり踏まえていただかなきゃならないだろうというふうに考えております。/同時に,今度は個別の,それぞれの弁護士事務所での研修におきましては,やはり実際にどのように依頼者に対応するか,裁判所に対応するかというような実際面での必要な知識なりノウハウというようなものを学んでいただく,こういうようなことを予定しているわけでございます。」と述べられていました(第159回国会衆議院法務委員会議録第3号4頁。また,同号12頁及び同国会参議院法務委員会会議録第4号5頁)。
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