Bureau de Saitoh, Avocat (弁護士 齊藤雅俊)

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1 情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第28号)の成立・公布を承けて

2019531日に成立し,同年67日に公布された情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第28号)については,法案段階において,その第1条に関して平成最後の日に当ブログで御紹介したことがありました(「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案(第198回国会閣法第49号)の第1条に関して」http://donttreadonme.blog.jp/archives/1074600258.html)。今回は,同法の第2条,すなわち同法による金融商品取引法(昭和23年法律第25号。以下「金商法」といいます。)の改正について見てみましょう。

なお,金商法は,「〔金融商品取引法という〕法令の名称からみれば,「金融商品」の取引に関する法律であるかのようにイメージされるが,法の規定においては「金融商品」という用語は,〔略〕デリバティブ取引の原資産というきわめて限られた意味を有するにすぎない」ものです(山下友信=神田秀樹編『金融商品取引法概説 第2版』(有斐閣・2017年)57頁(山下友信))。すなわち,金商法の元となる金融審議会の答申は「投資サービス法」という仮称を用いていたところ,金商法は「金融商品」の取引に関する法律ではなく,「金融商品取引」に関する法律と理解すべきものです(同頁)。そうであれば,金融商品取引法の略称は金商法ではなく「金取法」の方がよかったようにも思われますが,金取法では,「かねとりほう」と読んでも「きんとりほう」読んでも物騒ですね。

以下の金商法及び資金決済に関する法律(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」といいます。)の条文は,特に断らない限り,令和元年法律第28号の施行日以後のものです(同法は,201967日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日から施行されます(同法附則1条本文)。)。民法の条文は,同様,平成29年法律第44号による改正後のものです(同法は,同法附則1条及び同条に基づく平成29年政令第309号により202041日から施行されます。)。

 

2 電子記録移転権利に関して

 

(1)電子記録移転権利概念の登場及びその内容

 

ア 電子記録移転権利概念の登場

 金商法23項は「取得勧誘」(新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘のことをいいます。)を「有価証券の募集」に該当するもの及び「有価証券の私募」に該当するものの二つに分かった上でその両者を定義する規定ですが(有価証券の私募は,取得勧誘のうち有価証券の募集に該当しないものとして消極的に定義されています。),同項において,「電子記録移転権利」という概念が登場しています。

 電子記録移転権利は,金商法22項各号に掲げる権利が「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示される場合(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く。)」におけるその権利をいいます(同条3項第2括弧書き)。

 ここで金商法22項各号の権利を御紹介すると,大雑把にいって,受益証券に表示されるべきもの以外の信託の受益権(同項1号参照),合名会社若しくは合資会社(これらについては全社員又は全無限責任社員が株式会社又は合同会社である場合に限られます(金融商品取引法施行令(昭和40年政令第321号。以下「金商法施行令」といいます。)1条の2)。)若しくは合同会社の社員権(金商法223号)又は組合契約,匿名組合契約,投資事業有限責任組合契約若しくは有限責任事業組合契約に基づく権利,社団法人の社員権その他の権利のうち出資者が出資若しくは拠出をした金銭を充てて行う事業から生ずる収益の配当若しくは当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利(同項5号参照)といったようなものになります。

 

イ 有価証券の私募ではなく募集となる電子記録移転権利の取得勧誘

金商法23項の改正による電子記録移転権利概念導入の同項における効果は,従来同条2項各号に掲げる権利(これは有価証券として取り扱われます。すなわち,同項によって,これらの権利は証券又は証書に表示されるべき権利以外の権利であっても有価証券とみなされています。)の取得勧誘が有価証券の募集に該当するのは「その取得勧誘に応じることにより相当程度多数の者が当該取得勧誘に係る有価証券を所有することとなる場合として政令で定める場合」(同条33号。金商法施行令1条の72により「相当程度多数の者」は500名以上ということになります。)に限られていたところ(したがって,それ以外の場合は有価証券の私募であったわけです。),これからは金商法22項各号の権利のうち電子記録移転権利とされるものの取得勧誘は,同条1項の本来的有価証券と同様に,要は多数の者に所有されるおそれが少ないものとして政令で定める場合(同条32号ハ)以外の場合には,有価証券の募集に該当するとされるものです(同項。電子記録移転権利は「第一項有価証券」とされます。)。

 

ウ 金商法と資金決済法との二重適用の回避及び電子記録移転権利(権利)と暗号資産(財産的価値)との関係

再言すると,電子記録移転権利は,金商法22項各号に掲げる権利が「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示される場合(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く。)」におけるその権利をいうものでした(同条3項第2括弧書き)。よく読むと,金商法22項各号の権利とはまた別に財産的価値があって,当該財産的価値に当該権利が表示されると当該権利が電子記録移転権利となるとの規定です(有価証券とのアナロジーでいうと,有価証券における紙が電子記録移転権利における財産的価値に対応するようです。)。これに対して,資金決済法25項は,同項1号又は2号によって暗号資産となるものであっても電子記録移転権利を表示するものは同法の暗号資産には含まれないものとする旨規定しています(「この法律において「暗号資産」とは,次に掲げるものをいう。ただし,金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3号に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。」)。暗号資産は,一定の(いわば通貨的)性格を帯びた「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)」です(資金決済法25項各号)。資金決済法25項ただし書のいわんとすることは,金商法22項各号に掲げる権利が仮想通貨(令和元年法律第28号による改正前の資金決済法25項)をいわば乗り物とする場合(当該「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値」たる仮想通貨に「表示」される場合)が想定されているとともに,そのような場合に係る乗り物の「カラード・コイン(Colored Coin)」は暗号資産にあらずということになる,ということでしょうか。

 

   カラード・コインとは,ビットコインに資産(アセット)に関する情報を付加することによって,さまざまなアセット(株式,債券,貴金属など)を少量のビットコインと共に移動させるという手法です。ビットコインに「色」(情報)をつけることで,あらゆるアセットを表現し,その移転を行うことができることから,「色のついたコイン」と呼ばれています。

   ビットコインには,その取引に必要なデータ(送(ママ)額や送信先など)を書き込むスペース(レイヤー)以外に,付加情報を書き込めるレイヤーが用意されており,カラード・コインでは,ここに資産のデータを載せて相手に送ることによって,アセットを移動させます。基本的にはビットコインの送(ママ)の仕組みを利用していますので,アセットを移動させるためには,少額のビットコイン(0.000001BTCなど)を実際に送ることが必要になります(中島真史『アフター・ビットコイン 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』(新潮社・2017年)254-255頁)

 

 第198回国会の衆議院財務金融委員会(2019517日)において三井秀範政府参考人(金融庁企画市場局長)は「金融商品取引法上の電子記録移転権利に該当するセキュリティートークンにつきましては,規制の重複排除の観点から,今回の改正によりまして,資金決済法上の暗号資産の定義から場外するということにしておりまして,〔略〕二つの法律が重畳適用することはございません。」と説明し(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第143頁),更に同政府参考人は,同国会の参議院財政金融委員会(同月30日)において,「ICO〔イニシャル・コイン・オファリング〕,その発行主体がいて,その発行主体が仮に投資的なことを行うと,こういったものですとキャッシュフローが見込めるものでございますが,この法律ではそういったものは暗号資産の定義から外していまして」と,あるいは「金融商品取引法,今回の法案の中では,そのうち収益分配を受ける権利が付与されたいわゆる投資性ICOトークン,これ法律上では電子記録移転権利というふうに称させていただいております」とも表現しています(第198回国会参議院財政金融委員会会議録第128頁)。

 

(2)電子記録移転権利の「流通性」

 

ア 電子記録移転権利から除かれる場合を定める内閣府令と「流通性」

 なお,金商法23項第2括弧書き中の更に第2括弧書きにおいて規定される電子記録移転権利から除かれる場合たる「流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合」については,「電子記録移転権利につきましては流通の蓋然性が高いか低いかという観点で,今までは,集団投資スキーム,流通する蓋然性が低いものとして開示規制がかかっておらなかったわけでございますけれども〔令和元年法律第28号による改正前の金商法33号参照〕,それが,今回の暗号()資産()につきましては流通性が高いということで,一項有価証券として扱わせていただくという案になってございます。/ただし,それは,ブロックチェーン技術を使ったさまざまなトークン,いろいろなものが今後あり得るということで,恐らく,御指摘のとおり,多くの投資家に流通する蓋然性がないという場合もあり得るだろうというふうに思っております。したがいまして,第一項有価証券に分類する必要がないと思われるようなものとしまして,トークンが多くの投資家に流通する蓋然性がない場合というのが一つあり得ると思います。/今後,よく実態を把握しながら,関係者の意見を聞きながら,こうしたことについて検討してまいりたいと思っております。との三井政府参考人答弁がありました198回国会衆議院財務金融委員会議録第144頁)。

 

イ 法律面から見た流通性:組合の場合

 しかしながら,「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示される」こと(金商法23項第2括弧書き)によって確かに技術的には当該権利の流動性は高まり得るのでしょうが,技術的には可能であっても法律的には不能ということはあり得ます。

そこでここでは,金商法225号の権利(同号は,「集団投資スキーム持分についての包括条項としての意義を有する」ものとされています(山下=神田39頁・40頁(山下))。)中,代表的なものとして,組合契約(民法667条)に基づく権利のうち出資者が出資をした金銭を充てて行う事業から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利について,法的にその流通可能性はどのようになっているかを確認してみましょう。

 まず,事業から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利のみを取り出して,債権譲渡ができるものでしょうか。(債権譲渡について民法4662項は,「当事者が債権の譲渡を禁止し,又は制限する旨の意思表示〔略〕をしたときであっても,債権の譲渡は,その効力を妨げられない。」と規定しているところです。)組合契約に基づく収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利が,支分権たる現実の請求権として発生した後には,当該請求権について譲渡その他の処分をすることは認められています(我妻榮『債権各論中巻二(民法講義Ⅴ₃)』(岩波書店・1962年)817頁)。しかし,「配当・払戻・残余財産などに対する請求の基本権も組合員たる地位と切り離して処分することはできないといわねばならない。けだし,この権利も,組合員として共同に事業を運営することを前提とするものであって,組合員でありながら,何等の配当を請求する権利もなく,脱退・解散の場合にも払戻請求や残余財産の分配を請求する権利のないものが存在することは,許されないからである。」とされています(我妻819頁)。

 そこで組合員たる地位の譲渡の可否が問題になりますが,民法には契約上の地位の移転に係る一般規定として第539条の2(「契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において,その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは,契約上の地位は,その第三者に移転する。」)があるものの,組合の節(同法667条以下)にはなお条文がありません。しかし,組合員全員の同意があれば組合員たる地位の譲渡を認めるスイス民法の規定及び組合契約で許容するときは組合員の地位の譲渡は可能であるとするドイツの学説を参考に「組合契約でこれを許容するときは可能だと解して妨げあるまい。」とされ,その場合「他の組合員の同意とは,譲受人を特定して他の組合員全員が同意することを必要とする意味ではなく,組合契約で概括的に譲渡の可能性を認めることも妨げないと解すべきである」と説かれています(我妻841-842頁)。更に,「組合員たる地位の譲渡は,譲渡契約によって効力を生ずる。但し,譲渡したことと譲受人の氏名とを組合に通知しなければ,譲渡をもつて他の組合員に対抗しえないと解すべきであろう。」と論じられています(我妻842頁)。結局,組合契約次第ということのようです。

 

ウ 有価証券的効果の有無の問題

なお,組合員たる地位が電子記録移転権利である場合には,当該地位の譲渡は当該電子記録移転権利が表示されている財産的価値が譲受人に帰属したときに効力を生じ(民法520条の2又は520条の13及び会社法(平成17年法律第86号)1281項各類推(ここで「類推」というのは,電子記録移転権利は金商法22項によって同法においては有価証券とみなすものとされていますが,本来紙(Papier)を前提とする民商法上の有価証券(Wertpapier)であるものとまでは直ちにいえないでしょうからです。)),譲渡人からの組合に対する通知は,電子記録移転権利が表示されている財産的価値が譲受人に帰属していることを譲受人が組合に対して立証することをもって代える(民法520条の4又は520条の14及び会社法1311項並びに同法1332項及び会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)2221号各類推)ということになるのでしょうか。逆からいえば,このような効果がなければ,電子記録移転権利化は流通性を向上させるものであるとは直ちにいえないところではあります。

なお,金融庁の仮想通貨交換業等に関する研究会(座長・神田秀樹教授)は,「トークン表示権利は,トークンとともに電子的に移転するものと考えられており,事実上の流通性が高い。」と述べています(「仮想通貨交換業等に関する研究会報告書」(20181221日)22頁)。「考えられてお」るだけであって,流動性が高いのも「事実上」のことである,ということです。前記の有価証券的効果が私法上あるとまでは断言されていないわけです。

 

エ PTS及びその認可の必要性

また,金融商品取引業者(金商法29項)が私的取引システム(同条810号。PTS (proprietary trading system)。コンピュータ・ネットワーク上で電子記録移転権利をマッチングさせるための仕組み)を有価証券(電子記録移転権利が含まれます。)について運営する場合には,金商法301項の内閣総理大臣の認可が必要になるということもあるようです(罰則は同法2011号(1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はこれを併科)及び両罰規定として同法20715号(法人には1億円以下の罰金刑))。

例えば,「電子情報処理組織を使用して,同時に多数の者を一方の当事者又は各当事者として」(金商法2810号),「顧客の提示した指値が,取引の相手方となる他の顧客の提示した指値と一致する場合に,当該顧客の提示した指値を用いる方法」たる売買価格の決定方法により行う電子記録移転権利の売買の媒介(同号ホ,金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令(平成5年大蔵省令第14号)171号)や,「金融商品取引業者が,同一の銘柄に対し自己又は他の金融商品取引業者等の複数の売付け及び買付けの気配を提示し,当該複数の売付け及び買付けの気配に基づく価格を用いる方法」たる売買価格の決定方法により行う電子記録移転権利の売買(金商法2810号ホ,金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令172号)などについては,前記内閣総理大臣の認可が必要となりそうです。

なお,PTSにおいて取り扱う有価証券の種類,銘柄及び取引の最低単位は,金商法301項の認可に係る認可申請書の記載事項ですが(同法30条の32項,金融商品取引業等に関する内閣府令174号),その変更には内閣総理大臣の認可は不要であるものと解されます(同法316項,同令19条)。

 

(3)電子記録移転権利とICO及びSTO

 ちなみに,「ICO」の語義ですが,仮想通貨交換業等に関する研究会は,「ICOInitial Coin Offering)について,明確な定義はないが,一般に,企業等がトークンと呼ばれるものを電子的に発行して,公衆から法定通貨や仮想通貨の調達を行う行為を総称するものとされている。」(「仮想通貨交換業等に関する研究会報告書」19頁),「ICOについては,明確な定義がないため,例えば,投資性を有するものについてはSTOSecurity Token Offering)等の他の呼び方が一般的となる可能性も含め,今後の展開は必ずしも見通し難い面があるが,本研究会で検討された内容は,呼び方の如何を問わず,電子的に発行されたトークンを用いて資金調達を行う行為全般に妥当するものと考えられる。」としています(同頁註35)。

 したがって,電子記録移転権利の取得勧誘はまた,STOに係るもの,とも表現されることにもなるようです。

「このSTOと金商法の関係でございますけれども,基本的には同様の機能,リスクを有するものには同様の規制を適用するという基本的な考え方で,この電子記録移転権利につきましては,流通性が高いということで,株式や社債権などを規定しています第一項有価証券と言われているものと同様の取扱いでこの法案を構成してございます。/具体的な開示ルールの適用につきましては,私募もこの金商法の中にあるわけでございますが,関係者がこの新しいルールの下で健全かつ適正にビジネスに取り組んでいくことができるように,よく関係者の意見をしっかり聞きながら,また実態をよく把握しながら必要な対応について努めてまいりたいと存じます。」と三井政府参考人は答弁しています(第198回国会参議院財政金融委員会会議録第122頁)。電子記録移転権利の括り出しは,開示ルール等との関係で行われたということになるようです。電子記録移転権利の「発行者に対しましては事業や財務の状況についての開示規制を掛けてございます。それから,このトークンを販売するという者に対しましては金融商品取引業の登録を求めまして,広告規制,虚偽説明の禁止などの販売,勧誘規制を課すこととしてございます。」ということです(第198回国会参議院財政金融委員会会議録第128頁(三井政府参考人))。

企業内容等の開示に係る金商法の第3章の適用除外は,電子記録移転権利についてはありません(同法3条3号ロ)。金商法22項各号の権利に係る従来からの有価証券投資事業権利等(同法33号イ)と同様です(同号,同法241項・5項)。

電子記録移転権利は金商法22項各号によって従来から有価証券とみなされているものですから,その販売又は媒介,取次ぎ若しくは代理を業として行うことは,金融商品取引業に含まれ(同条81号・2号),かつ,それらは令和元年法律第28号による金商法改正後は金融商品取引業のうち第一種金融商品取引業に含まれるものであって(同法2811号括弧書き。第二種金融商品取引業には含まれないことになります(同括弧書き及び同条22号)。),当該金融商品取引業を行う者として内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行うことができません(同法29条。違反に対する罰則は同法197条の210号の45年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はこれの併科)及び両罰規定として20712号(法人には5億円以下の罰金刑))。

STOについては,参議院財政金融委員会の藤末健三委員は「STOは何かと申しますと,ICO〔イニシャル・コイン・オファリング〕の一部という定義もありますけれども,セキュリティ・トークン・オファリングといいまして,例えば証券,あとは債(ママ),あとは例えば特許権とか,あとは絵画などの権利を後ろ盾として,それをトークン,仮想通貨的なものにして販売し,その配当をもらったり値上がり益を期待するというものでございます。説いています198回国会参議院財政金融委員会会議録第122頁)。ただし,藤末委員がそこで挙げている証券等の権利は,金商法22項各号の権利そのものとは一見すると異なるもののようにも思われます。

また,STOには次のような利点があると,藤末委員は熱弁をふるっています。

 

   ちなみに,STOのメリットを申し上げますと,やはり利便性の向上,今の証券取引所は朝の9時から昼の15時,昼休み1時間あります。ところが,このトークンを用いたシステムを使いますと,ブロックチェーン技術を使いますんで,技術的には24時間が可能となると,取引が。

   そしてまた,証券の業務,いろんな管理業務がございます。お金の出し入れとか,あとは証券を保管し管理してキャッシュフローを見るとか,あと,精算を受領する,精算を見るというような細かいサプライチェーンがございますけれど,そのサプライチェーンが恐らく大きく簡素化するんではないかということ。

   あともう一つございますのは,コンプライアンスの自動化ということで,このトークンという機能には,例えばスマートコントラクトという,トークン自体に例えばこれは誰に売買しては駄目ですよとかいろんな条件を付す機能がございまして,トークンを用いますと細かく,例えば帳簿でこの人はどうですかというようなコンプライアンスの管理を簡素化できるのではないかと。(第198回国会参議院財政金融委員会会議録第122頁)

 

(4)地方自治体の関心

 暗号資産又は電子記録移転権利を資金調達の手段として考えている地方公共団体もあるようです。暗号資産についてですが(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第145頁参照),2019530日の参議院財政金融委員会において,佐々木浩政府参考人(総務大臣官房地域力創造審議官)から次のような紹介があったところでした。

 

   総務省で把握している限りということでございますが,長崎県平戸市や岡山県西粟倉村では,持続可能な地域社会を実現していくため,税収以外の新たな財源を確保する手段としてICOの活用を検討されているものと伺っております。

   ICOを活用して調達された資金を用いて,長崎県平戸市では世界遺産の保護や観光の資源化など観光を中心にした持続可能な地域づくりを,また岡山県西粟倉村では村で事業を立ち上げようとするローカルベンチャー事業の支援をそれぞれ検討されていると伺っております。

   なお,どちらの自治体も,自治体がICOトークンを発行せず,発行は自治体と連携する協議会が,そして利用者への販売は暗号資産交換業者が行う仕組みを公表し,検討を進めているとのことであります。(第198回国会参議院財政金融委員会会議録第127頁)

 

 また,「今回,そこから電子記録移転権利,いわゆるセキュリティートークンの方も法律上も明確にしましたけれども,事業収益を上げることでその利益が分配されるというような投資も,今後,自治体ICOの中では期待されているところなんです。」とは,2019517日の衆議院財務金融委員会における緑川貴士委員の主張でした(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第145頁)。

 2019530日,情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案の可決に際し参議院財政金融委員会は附帯決議を行っていますが,その第9項は「地方公共団体が暗号資産及び電子記録移転権利を資金調達の手段として適切に利用することができるようにするための方策について検討を加え,その結果に基づき,必要な措置を講ずること」について十分配慮するよう政府に求めるものでした(第198回国会参議院財政金融委員会会議録第1219頁。なお,同月17日の衆議院財務金融委員会の附帯決議第9項も同文でした(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第1420頁)。)。既に金商法31号により地方債証券(同法212号)については企業内容等の開示に係る同法第3章の規定の適用が免除されていること及び地方公共団体は同法28項各号の行為を行っても金融商品取引業を行うことにはならないこと(同項,金商法施行令1条の8611号ロ)などを承けての求めでしょう(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第145-6頁の三井政府参考人の答弁参照)。むしろ地方自治法制の問題ではあります。

 ただし,地方公共団体とその関係団体とは峻別されるべきもので,そもそも「地方公共団体自身ではなくて,この外郭団体が発行するということのセキュリティートークン」については,「その外郭団体の支払い能力あるいは業務の行い方というのが恐らくまちまちでございまして,こういったものにつきましては,現状,地方公共団体と同程度に債務不履行の懸念がないとは言えない状況かと思います。/したがいまして,これを地方公共団体による発行行為と全く同視するというわけにはいかないと思いまして,現在の段階で,これを地方公共団体が直接発行するもの並みに開示規制や業規制を例えば免除するといったことは難しいのではないかというふうに考えている次第でございます。」ということになります(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第146頁(三井政府参考人))。

(5)電子記録移転権利の保護預り

 金商法2816号では,金融商品取引業を構成する行為の一つである保護預りの対象に,電子記録移転権利が追加されています。「その行う第1号から第10号までに掲げる行為に関して,顧客から〔略〕電子記録移転権利の預託を受けること」を業として行えば金融商品取引業を行っているということになるのですから(金商法28項),「他人の行う電子記録移転権利の売買又はその媒介,取次ぎ若しくは代理(同項1号・2号)に関して」ならば,顧客から電子記録移転権利の預託を受けることを業として行っても金融商品取引業を行うことにはならず,金融商品取引業を行うための内閣総理大臣の登録を受ける必要はないのでしょう(同法29条反対解釈)。

 電子記録移転権利についても「預託」を受けるものとの文言が用いられていますが,この「預託」関係は寄託契約関係になるということでしょうか。電子記録移転権利は物にではなく電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示されますところ(金商法23項),同様の財産的価値たる暗号資産については,「管理」の語が用いられているところです(資金決済法274号)。寄託に係る民法657条は「寄託は,当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し,相手方がこれを承諾することによって,その効力を生ずる。」と規定して,物を対象としています。

 金融商品取引業者は,「預託」を受けた電子記録移転権利を自己の固有財産と分別して管理しなければならないのですが(金商法43条の212号),その方法を定める金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)136条を見ると,その第15号ロによることになるようです(同条11号から4号まで及び5号イは書類の存在を,1号から3号までは保管場所の存在を前提としています。同条2項は金融商品取引業者と顧客との共有の場合です。)。すなわち,「第三者をして当該権利を顧客有価証券として明確に管理させ,かつ,その管理の状況が自己の帳簿により直ちに把握できる状態で管理する方法」によるべきものとなるものと解されます。

 

3 暗号資産関係

 

(1)金融商品化

 金商法2243号の2は,暗号資産を新たに金融商品に加えています。デリバティブ取引は「原資産の類型により,有価証券に係るもの,金利や通貨などの金融に係るもの,商品に係るものの三つに大別される」ところ,金商「法が有価証券および金融に係るデリバティブ取引のみを対象とすることから,法では,原資産を金融商品,参照指標を金融指標とよび」それぞれ第224項及び25項で定義しているものです(山下=神田50頁・51頁(山下))。金商法2243号の2は,暗号資産を原資産とする,又は暗号資産に係る金融指標(同条251号は「金融商品」の価格又は利率等を金融指標とします。)を参照指標とするデリバティブ取引を規制するための前提整備規定です。

 ただし,暗号資産について他の金融商品と異なる取扱いをする点として,「暗号資産のリスクに関する説明をしていただくとか,あるいは原資産となる暗号資産の事前届出をしていただくと,こういった暗号資産の特性を踏まえたものがそれに付け加わっている」ということが説明されています(第198回国会参議院財政金融委員会会議録第123頁(三井政府参考人))。

前者については,金融商品取引業者等(金融商品取引業者又は登録金融機関(金商法34条))が暗号資産のリスクに関する説明をすることを求める規定として,金商法43条の6が設けられています。そのうち同条2項は罰則付きであって,同項は「金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は,その行う暗号資産関連業務〔「暗号資産関連業務」は,暗号資産に関する内閣府令で定める金融商品取引行為(「暗号資産関連行為」)を業として行うことです(同条1項)。なお,金融商品取引行為は,同法28項各号に掲げる行為です(同法34条)。〕に関して,顧客を相手方とし,又は顧客のために暗号資産関連行為を行うことを内容とする契約の締結又はその勧誘をするに際し,暗号資産の性質その他内閣府令で定める事項についてその顧客を誤認させるような表示をしてはならない。」と規定していますが,違反した者は1年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処され,又はこれを併科されるものとされています(同法198条の62号の2。両罰規定たる同法20714号で法人には2億円以下の罰金。なお,適格機関投資家等特例業務を行う特例業務届出者及び金融商品仲介業者にも準用(同法6311項,66条の15)。安易に„Tauschen ist Täuschen.“などといって口八丁商売をしてはなりません。金商法43条の61項は「金融商品取引業者等は,暗号資産関連業務〔略〕を行うときは,内閣府令で定めるところにより,暗号資産の性質に関する説明をしなければならない。」と規定しています。

後者については,原資産となる暗号資産の事前届出をするように義務付けるために,金商法313項の「特定業務内容等」に,デリバティブ取引の原資産たる暗号資産又はデリバティブ取引の参照指標の算出がそれに基づくものたる暗号資産が含まれるように同項の当該内閣府令の定めが設けられることになるのでしょう。金融商品取引業者は,特定業務内容等について変更しようとするときはあらかじめ内閣総理大臣に届け出なければならないものとされます(金商法313項。違反の場合同法205条の231号で30万円以下の罰金)。その前提として,金商法29条の222号に掲げる書類(登録申請書に添付される「業務の内容及び方法として内閣府令で定めるものを記載した書類その他内閣府令で定める書類」)の記載事項にも,デリバティブ取引の原資産たる暗号資産又はデリバティブ取引の参照指標の算出がそれに基づくものたる暗号資産に係るものが含まれるよう当該内閣府令の改正がされるものでしょう。

 

(2)金銭みなし

 金商法2条の2は「暗号資産は,前条第2項第5号の金銭,同条第8項第1号の売買に係る金銭その他政令で定める規定の金銭又は当該規定の取引に係る金銭とみなして,この法律(これに基づく命令を含む。)の規定を適用する。」と規定しています。

このうち,金商法225号の金銭については,「集団投資スキーム持分に対しまして出資された暗号資産を金銭とみなすという規定を設けさせていただいていまして,これによりまして,暗号資産で出資された部分も規制対象となることを明確としております。」(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第143頁(三井政府参考人))ということであるとされています(また,「仮想通貨交換業等に関する研究会報告書」23頁)。ちなみにこれは,2018年末のSENER事件における詐取された出資のうちビットコイン分が金商法違反の無登録営業の罪では立件できなかったからゆえの法改正であるね,という趣旨の松平浩一委員の問いに対する答弁です。当該事件における被疑者らは,金商法22項の規定により有価証券とみなされる同項5号の権利たる有価証券の募集又は私募に係る金融商品取引業(同条87号ヘ)を同法29条の登録を受けずに行ったものでしょう。なお,金商法225号の金銭には,従来から政令の定めによってそれに類するものを含めることができましたが(同号),当該政令の定めたる金商法施行令1条の3には暗号資産は含まれていません。

金商法281号の売買は有価証券の売買ですが,「代」(民法555条)ならぬ代暗号資産であっても,有価証券と暗号資産との交換(同法586条)というような正確ながらも面倒な表現は用いないことにしたということでしょう。

 

(3)証拠金倍率の規制

「仮想通貨交換業等に関する研究会報告書」においては,「仮想通貨の証拠金取引における証拠金倍率については,現状,最大で25倍を採用している業者も存在するところ,仮想通貨の価格変動は法定通貨よりも大きいことを踏まえ,実態を踏まえた適切な上限を設定することが適当と考えられる。」と説かれています(17頁)。政府が「適切な上限を設定」するのでしょうが,その権限の法的根拠条文は何でしょうか。

「いわゆる外国為替証拠金取引,いわゆるフォーリンエクスチェンジ,FX取引ですか,あれと同様に内閣府令で定めることに予定をしておりますけれども。」との麻生太郎国務大臣の答弁(第198回国会衆議院財務金融委員会議録1416頁)によれば,FX取引規制と同様の内閣府令の定めでする,ということになります。

であれば,金融商品取引業等に関する内閣府令117条に,暗号資産の証拠金取引における証拠金倍率規制に係る規定を追加することになるのでしょう。同条の根拠条項は金商法389号で,「投資家の保護に欠け,若しくは取引の公正を害し,又は金融取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為」を金融商品取引業者若しくは登録金融機関又はその役員若しくは使用人はしてはならないものと規定しています。金融商品取引業者が金商法399号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令117条の規定に違反すると,法令違反ということになりますから,登録取消し又は業務停止の処分を覚悟せねばなりません(金商法5217号)。

 

(4)第6章の3「暗号資産の取引等に関する規制」(185条の22から185条の24まで)の追加

「暗号資産の取引等に関する規制」ということで,金商法に第6章の3185条の22から185条の24まで)が追加されています。第185条の22の見出しは「不正行為の禁止」,第185条の23のそれは「風説の流布,偽計,暴行又は脅迫の禁止」,第183条の24のそれは「相場操縦行為等の禁止」です。同章の各条は,「有価証券の取引等に関する規制」に係る同法第6章の第157条から第159条(第3項を除く。)とパラレルな規定です。また,罰則についても横並びです(金商法19716号及び5号(10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれを併科。両罰規定の同法20711号で法人は7億円以下の罰金)。また,同法1972項)。

暗号資産は,金商法上の有価証券(同法21項)ではなく,有価証券とみなされるもの(同条2項)でもないので,暗号資産の売買(デリバティブ取引に該当するものを除く。)その他の取引については,有価証券の売買(デリバティブ取引に該当するものを除く(同法281号)。)その他の取引及びデリバティブ取引等(同法333項,284号)に関する同法157条から159条までで対応できないということで,新たな条項が設けられたものでしょう。暗号資産関連デリバティブ取引等(金商法185条の2211号),暗号資産等(同法185条の231項),暗号資産関連市場デリバティブ取引(同法185条の241項)及び暗号資産関連店頭デリバティブ取引(同項)については,同法157条から159条までの規定の適用があり得るところでしたが,同法157条から159条までの規定の適用はあえて排除されています(同法185条の222項,185条の232項,185条の243項)。

金商法157条から159条までの規定の適用の排除の結果,同法第6章の3の規定に対する違反については,罰則はあるものの(同法197条),同法173条の課徴金は課されず(同法185条の23違反の場合),同法174条又は174条の2の課徴金も課されず(同法185条の24違反の場合),同法160条の賠償責任も負わない(同法185条の24違反の場合),ということになっています。また,金商法158条において定義される「有価証券等」には一見暗号資産が含まれるようであり(「デリバティブ取引に係る金融商品(有価証券を除く。)」には暗号資産は含まれるでしょう(同法2243号の2)。),そうであれば,暗号資産の相場を偽って公示し,又は公示し若しくは頒布する目的をもって暗号資産の相場を偽って記載した文書を作成し,若しくは頒布した者は,1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処され,又はこれを併科されそうにも思われるのですが(同法1681項,20020号。両罰規定の20715号により法人は1億円以下の罰金),そもそも同法158条の規定は暗号資産については適用されないものとされているのでした(同法185条の232項(暗号資産は同条1項の「暗号資産等」に含まれています。))。

 

(5)厳しい経過規定

 現在仮想通貨を原資産とする店頭デリバティブ取引を行っている仮想通貨交換業者については,令和元年法律第28号の施行日から起算して6箇月間は,第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者の登録を受けていなくても引き続き当該デリバティブ取引に係る金融商品取引業を行うことができるという6箇月の猶予期間があります(同法附則101項)。しかし,行うことができる取引は,既存の顧客を相手方とし,又は当該顧客のためにするものに限られます(同項)。

 また,上記6箇月の猶予期間中に金商法29条の登録の申請をすれば,その申請について登録又は登録の拒否の処分があるまでの間は当該猶予期間が更に延長されるのですが(令和元年法律第28号附則102項本文),何と,この猶予期間の延長は,令和元年法律第28号の施行日から起算して最大限16箇月までと制限されています(同項ただし書)。せっかく登録申請をしても,金融庁御当局の担当者が書類の山(又は電子データの巨大な混沌)に圧迫されてうんうんうなってばかりで何らの処分もしていないうちに令和元年法律第28号の施行日から起算して16箇月の期間が経過してしまうと,その時からは前記のデリバティブ取引は行ってはならない(行うと金商法違反の犯罪),ということになるわけです(その後めでたく登録がされれば,その時からは再開が可能なのでしょうが。)。

 仮想通貨交換業に対する規制を新規に導入した2016年の情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律(平成28年法律第62号)の附則81項とは大いに異なります。同項の規定によれば,既存の仮想通貨交換業者は,同法の施行日(201741日)から起算して6箇月の猶予期間中に仮想通貨交換業者の登録の申請をしておけば,当該申請に対する許否の処分がされるまでは引き続き仮想通貨交換業を行うことが可能であり(施行日から16箇月間に限るというような制限はありません。),かつ,新規顧客開拓も当然認められていたのでした。御参考までに同項の規定は,「この法律の施行の際現に仮想通貨交換業(第11条の規定による改正後の資金決済に関する法律(以下この条において「新資金決済法」という。)第2条第7項に規定する仮想通貨交換業をいう。以下この条において同じ。)を行っている者は,施行日から起算して6月間(当該期間内に新資金決済法第63条の51項の規定による登録の拒否の処分があったとき,又は次項の規定により読み替えて適用される新資金決済法第63条の171項の規定により仮想通貨交換業の全部の廃止を命じられたときは,当該処分のあった日又は当該廃止を命じられた日までの間)は、新資金決済法第63条の2の規定にかかわらず,当該仮想通貨交換業を行うことができる。その者がその期間内に同条の登録の申請をした場合において,その期間を経過したときは,その申請について登録又は登録の拒否の処分があるまでの間も,同様とする。」というものでした。

 令和元年法律第28号附則10条の厳しい規定の背景には,平成28年法律第62号附則81項の下における仮想通貨交換業のいわゆるみなし業者らの行状等に対する反省があったものです。

 

   こうした〔平成28年法律第62号の〕経過措置については,その適用を受けている期間中に,みなし業者が積極的な広告を行って事業を急拡大させた,との指摘や,多くの顧客が,取引の相手がみなし業者であることやその意味を認識していなかった,との指摘がある。(「仮想通貨交換業等に関する研究会報告書」30頁)

 

 暗号資産デリバティブ取引等について業規制を導入する際の経過措置において,既存業者に「業務内容や取り扱う仮想通貨等の追加を行わないこと。」,「新規顧客の獲得を行わないこと(少なくとも,新規顧客の獲得を目的とした広告・勧誘を行わないこと)。」等を求めるべきであるとの見解は,「仮想通貨交換業等に関する研究会報告書」において記載されていたところです(30頁)。また,「みなし業者としての期間の長期化を回避するとともに,予見可能性を高める観点から,みなし業者として業務を行うことができる期間について,一定の制限を設けることも考えられる。」との提案もされていました(同頁)。

 「仮想通貨デリバティブ取引については,原資産である仮想通貨の有用性についての評価が定まっておらず,また,現時点では専ら投機を助長している,との指摘もある中で,その積極的な社会的意義を見出し難い。」(「仮想通貨交換業等に関する研究会報告書」16頁)という暗号資産に係るデリバティブ取引に対する否定的な評価があるところ,金融庁御当局の担当者においても当該登録申請に対する前向きな審査には「積極的な社会的意義を見出し難い」ということでなかなか能率が上がらないかもしれません。申請者の側における早期かつ十分な準備が必要でしょう。

  

4 第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者の業務の範囲と暗号資産交換業者

第一種金融商品取引業を行う証券会社が仮想通貨交換業(令和元年法律第28号による改正前の資金決済法27項)を行うためには金商法354項の内閣総理大臣の承認が必要であるということは,仮想通貨交換業に関する規定を資金決済法に設けるための法案審議の際に政府が既に前提としていたところと解されます(第190回国会参議院財政金融委員会会議録第145頁(池田唯一政府参考人(金融庁総務企画局長)答弁))。

この前提には変化がないということで,デリバティブ取引の原資産に暗号資産が加わっても(金商法2243号の2),第一種金融商品取引業又は投資運用業を行う金融商品取引業者が行うことができる業務に係る金商法351項(同項の業務を行うについては内閣総理大臣への届出も不要(同条3項参照))の第13号には「通貨その他デリバティブ取引(有価証券関連デリバティブ取引を除く。)に関連する資産(暗号資産を除く。第15号及び次項第6号において同じ。)として政令で定めるものの売買又はその媒介,取次ぎ若しくは代理」と,しっかり下線部分が挿入されています。(なお関連して,金商法29条の219号の文言はこの点読みづらいのですが,「暗号資産〔略〕に係るデリバティブ取引についての次に掲げる行為」と読むべきものであって,「暗号資産〔略〕についての次に掲げる行為」と読んではならないものでしょう。令和元年法律第28号による金商法改正によっては,暗号資産は有価証券とはされていません。)

さて,店頭デリバティブ取引(金商法284号)を行うことは第一種金融商品取引業であって(同法2812号),第二種金融商品取引業(同条2項),投資助言・代理業(同条3項)及び投資運用業(同条4項)のいずれにも属しませんが,暗号資産交換業者が令和元年法律第28号附則102項に基づき第一種金融商品取引業を行う者として金商法29条の登録の申請をした場合(同法29条の2111号は「他に事業を行つているときは,その事業の種類」を登録申請書に記載することを求めています。),同法354項との関係はどうなるのでしょうか。この場合は,金商法354項ではなく,登録の拒否事由に係る同法29条の415号ハ(の反対解釈)が優先するのでしょう。すなわち,同号ハによれば,「他に行つている事業が第35条第1項に規定する業務及び同条第2項各号に掲げる業務のいずれにも該当せず,かつ,当該事業に係る損失の危険の管理が困難であるために投資家保護に支障を生ずると認められる者」に対しては,内閣総理大臣は登録を拒否しなければならないものとされています。換言すると,「当該事業に係る損失の危険の管理が困難であるために投資家保護に支障を生ずると認められ」なければ登録を受けられるわけです。(ということはつまり,金商法354項の承認の許否の基準は,「当該事業に係る損失の危険の管理が困難であるために投資家保護に支障を生ずると認められる」か否かということになるようです。このことは,同項の承認を受けようとする金融商品取引業者が提出すべき承認申請書が当該業務に関する損失の危険の管理方法に関する事項の記載を特に求めていることからも窺知されるところです(金融商品取引業等に関する内閣府令7022号参照)。

 

5 顧客に関する情報の第三者提供

第一種金融商品取引業又は投資運用業を行う金融商品取引業者が行うことができる業務に係る金商法351項に第16号が加えられています。いわく,「顧客から取得した当該顧客に関する情報を当該顧客の同意を得て第三者に提供することその他当該金融商品取引業者の保有する情報を第三者に提供することであつて,当該金融商品取引業者の行う金融商品取引業の高度化又は当該金融商品取引業者の利用者の利便の向上に資するもの(第8号に掲げる行為〔有価証券に関連する情報の提供又は助言〕に該当するものを除く。)」

当該規定と個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)との関係については,「この法律〔令和元年法律第28号〕は,オーバーライドする,あるいはひっくり返すという意図はございません。あくまで個人情報保護法の法律の適用にのっとって行うという趣旨でございます。」とされています(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第148-9頁(三井政府参考人))。情報の提供を受ける第三者については,「この法律の中で,画一的あるいは形式的に特定の業態あるいは形態を個別列挙する形で,これがいいとか,これがいけない,こういうふうな個別列挙の規定の仕方はしてございません」が,「金融機関が,例えば社会的な要請が明らかに認められないような,そういう情報関連業務を行うということがあれば,これは,今回の法律改正が銀行業の高度化,利用者の利便性の向上に資する情報の提供ということですので,今回の改正の規定の趣旨に反するのではないかというふうに考える次第でございます。」との一般論が述べられています(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第149頁(三井政府参考人)頁)。なお,令和元年法律第28号の第10条により,銀行の業務の範囲に係る銀行法(昭和56年法律第59号)10条の第2項に第20号として「顧客から取得した当該顧客に関する情報を当該顧客の同意を得て第三者に提供する業務その他当該銀行の保有する情報を第三者に提供する業務であつて,当該銀行の営む銀行業の高度化又は当該銀行の利用者の利便の向上に資するもの」が追加されます。

そもそもの大義名分は,「近年,情報通信技術の飛躍的な発展などが背景となりまして,データの利活用が社会全体の中で大きく進展していると。金融と非金融の垣根を越えたデータ活用が進みまして,従来存在しなかったような利便性の高いサービスを提供しようといった動きが,これは既存の金融機関もそうですし,フィンテック等々の既存の金融機関でない方々の取組もあろうかと思います。/こうした中で,銀行や保険会社につきましては業務範囲規制というものがございまして,実際にできる業務が列挙されてございます。こうした業務範囲規制があります金融機関につきまして,今,情報通信技術の革新が進む中で,利用者利便に資するような,そして金融機関自身の業務の新たな展開に資していくような,こういった保有情報の利活用といったものについて,真正面から銀行法上,保険業法上のこの位置付けというものを明確にするというものでございます。」ということ,更には「利用者情報であるとかこういったものを蓄積して利活用するというのが金融機関の競争力の源泉に変わりつつあるのではないか,既存ですと,ATMとか対面の顧客基盤とか,こういった物理的なものがアセットとして,資産として競争力の源泉であったものが,これがむしろレガシーになって,データというものがいかに活用できるかということが今後の金融サービスの質や競争力を変えていくのではないか。」ということのようです(第198回国会参議院財政金融委員会会議録第129頁(三井政府参考人))。ただし,「金融機関のいわゆるデータの集中とか金融機関によるデータの独占というものに関して,それを加速させよう」とするものではありません(第198回国会参議院財政金融委員会会議録第1218頁(麻生国務大臣))。令和元年法律第28号の第11条により,保険会社の業務の範囲に係る保険業法(平成7年法律第105号)98条の第1項に第14号として「顧客から取得した当該顧客に関する情報を当該顧客の同意を得て第三者に提供する業務その他当該保険会社の保有する情報を第三者に提供する業務であって,当該保険会社の行う保険業の高度化又は当該保険会社の利用者の利便の向上に資するもの」が追加されます。

 

6 刑事訴訟法パラレル改正

 犯則事件の調査等に係る金商法第9章(同法210条以下)においては,刑事訴訟法等に倣った制度の整備がされています。

 

7 ごめんなさい改正等

 金商法51項柱書の第1括弧書き中「特定有価証券」の定義が適用される条項として挙げられているものに同法24条の71項が追加されていますが,これは今まで抜けていたところを補正するごめんなさい改正です。

 金商法29条の登録の拒否事由を定める同法29条の411号ハに資金決済法違反に違反して罰金の刑に処せられた者を追加したことも,既に当然入っているべきであったのにもかかわらず抜けていたところを補正するものでしょうか。なお,当該ハは,政令の定めで法律を追加できる旨規定していますが,当該政令の定めである金商法施行令15条の6には,資金決済法は含まれていませんでした。(金融機関の登録の拒否事由を定める金商法33条の512号及び同号の政令の定めである金商法施行令15条の6についても同様)

金商法29条の414号の柱書から「個人である場合を除く。」を削ったのは,同号ニを個人にも適用して,個人であっても認可金融商品取引業協会又は認定金融商品取引業協会への加入を必須としようとするものでしょうか。

金商法1591項の表現が,「取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる等これらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもつて,次に掲げる行為をしてはならない。」から,「取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる目的その他のこれらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもつて,次に掲げる行為をしてはならない。」に変更されています。これはどういうことでしょうか。当該規定は犯罪構成要件でもあるところ(金商法19715号,197条の213号),令和元年法律第28号による改正前の表現について,「これじゃ結局「誤解させる等」の次で文が切れるから,それとの並びでその次の「誤解を生じさせる目的をもつて」についても,誤解させられたという結果までが立証されなければ「誤解を生じさせる目的」があったことにならないことになってしまうんじゃないの。」というような苦情が,検察庁又は法務省筋から金融庁に対してあったものでしょうか,それとも金商法185条の25の法案審査中に内閣法制局参事官殿に当該疑惑の表現が発見せられてひとしきり苦吟の後に新たな表現が与えられたものでしょうか。

金商法2101項の「,又は犯則嫌疑者が任意に提出し若しくは置き去つた物件を領置することができる。」を「,又は犯則嫌疑者が任意に提出し,若しくは置き去つた物件を領置することができる。」と改めた改正は,読点の打ち方に対する厳格な姿勢が窺われる,渋い改正です。

 「すべて」との平仮名表記が,「全て」に改められています。  


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第1 Meine Bibliothek ist Makulatur.

 前回2019314日の掲載記事は,「仮想通貨交換業者の分別管理義務に関する思案分別」(http://donttreadonme.blog.jp/archives/1074204067.html)というものでした。ところが早速,当該記事掲載の翌日(15日)の閣議において,情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案が決定され,当該議案は同日内閣総理大臣から衆議院に提出されました(第198回国会閣法第49号。同日参議院にも予備審査議案として送付されています(国会法(昭和22年法律第79号)58条参照)。)。当該法改正が実現すれば,仮想通貨交換業者等をめぐる法制度に大きな変動がもたらされます。苦心の上記拙文も,あっと言う間に非現行化というわけです。

法律などという当てにならないものを憑代(よりしろ)として学者ぶるなどということは,空しいことです。

 

  Indem die Wissenschaft das Zufällige zu ihrem Gegenstande macht, wird sie selbst zur Zufälligkeit; drei berichtigende Worte des Gesetzgebers und ganze Bibliotheken werden zu Makulatur. (von Kirchmann, Die Wertlosigkeit der Jurisprudenz als Wissenschaft. 1848)

  (当該学問は,不確かなものをその対象とすることによって,自らが不確かなものとなる。立法者が3度訂正の語を発すれば,一大文献群が反故の山となる。(フォン・キルヒマン「法学の学問としての無価値性」1848年))

 

第2 「等」の話

 さて,「・・・資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」といった場合の,この題名における「等」は曲者です。この僅か1文字から,3以上の多数の法律が改正されることを読み取って,覚悟しなければなりません。

 

   一部改正法には,その本則において,1の法律を改正するものと2以上の法律を改正するものとがあるが〔略〕,2以上の法律を1の一部改正法の本則で改正する場合において,改正される法律が2であるときと,3以上であるときとでは,題名の付け方に差がある。その数が2であるときは,原則として,〔略〕「A法及びB法の一部を改正する法律」という題名を付け,その数が3以上であるときは,〔略〕「A法等の一部を改正する法律」という題名を付ける。(前田正道編『ワークブック法制執務〈全訂〉』(ぎょうせい・1983年)351-352頁)

 

今次国会に提出された情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案の本則においては,13法律について一部改正が行われます。すなわち,資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)(第1条),金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(第2条),金融商品の販売等に関する法律(平成12年法律第101号)(第3条),農業協同組合法(昭和22年法律第132号)(第4条),水産業協同組合法(昭和23年法律第242号)(第5条),中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号)(第6条),信用金庫法(昭和26年法律第238号)(第7条),長期信用銀行法(昭和27年法律第187号)(第8条),労働金庫法(昭和28年法律第227号)(第9条),銀行法(昭和56年法律第59号)(第10条),保険業法(平成7年法律第105号)(第11条),農林中央金庫法(平成13年法律第93号)(第12条)及び金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律(平成10年法律第108号)(第13条)の13です。題名の「等」には,12の法律が隠されていたのでした。なお,改正時期は,改正法の公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日からということになります(附則1条)。あるいは202041日あたりでしょうか。

(なお,「等」に関しては,2014127日に掲載した「「等」に注意すべきこと等」(http://donttreadonme.blog.jp/archives/2806453.html)も御参照ください。)

 

第3 情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案1条研究

今回は,情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律(案)の第1条による一部改正によって,資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます。)が来年以降どのように変わるのかを見ておきたいと思います。

 

1 「仮想通貨」から「暗号資産」へ

まず,「仮想通貨」との呼称が,「暗号資産」に変わります。

これは,先般終了した金融庁の仮想通貨交換業等に関する研究会(座長は神田秀樹教授)の報告書(20181221日。以下「研究会報告書」といいます。)において,「最近では,国際的な議論の場において,“crypto-asset”(「暗号資産」)との表現が用いられつつある。また,現行の資金決済法において,仮想通貨交換業者に対して,法定通貨との誤認防止のための顧客への説明義務を課しているが,なお「仮想通貨」の呼称は誤解を生みやすい,との指摘もある。」ということから「法令上,「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」に変更することが考えられる。」と提案されていたものです(31頁)。(註:第198回国会衆議院財務金融委員会議録第1415頁の麻生太郎国務大臣(金融担当)答弁参照)

 

2 電子記録移転権利を表示するものの暗号資産からの除外(2条5項)

仮想通貨改め暗号資産の定義に係る資金決済法25項には新たに,「ただし,金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。」とのただし書が付されることになります。改正後の金融商品取引法23項に規定する電子記録移転権利を表示するものであれば,資金決済法25項各号に一見該当するものであっても暗号資産とはならない,ということのようです。

それでは電子記録移転権利とは何かといえば,金融商品取引法22項各号に掲げる権利であって,電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示される場合(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く。)のものであるそうです(改正後金融商品取引法23項の第2括弧書き)。金融商品取引法22項各号に掲げる権利については,そもそも,「証券又は証書に表示されるべき権利以外の権利であつても有価証券とみなして,この法律〔金融商品取引法〕の規定を適用する」とされていたものです(同項柱書)。(なお,従来からも資金決済法25項においては,本邦通貨若しくは外国通貨又は通貨建資産たる財産的価値は,一見仮想通貨に含まれるもののようであっても,仮想通貨に含まれないものとされていました。)

 

3 仮想通貨カストディ業務の暗号資産交換業取り込み(2条7項)

資金決済法27項の改正による新たな「暗号資産交換業」は,従来の仮想通貨交換業よりも広い範囲のものとなります。すなわち,改正後資金決済法27項の新たな第4号は「他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。」(「暗号資産の管理」)を業として行うことを暗号資産交換業に含まれるものとしているところです。従来は,その行う仮想通貨の交換等に関して利用者の仮想通貨を管理する管理行為に限って仮想通貨交換業に含まれるものとしていましたが(現行資金決済法273号),「その行う前2号の行為〔仮想通貨の交換等〕に関して」との縛りが撤廃されたものです。

これまで,「仮想通貨の売買等〔仮想通貨の売買・交換やそれらの媒介・取次ぎ・代理〕は行わないが,顧客の仮想通貨を管理し,顧客の指図に基づき顧客が指定する先のアドレスに仮想通貨を移転させる業務(以下「仮想通貨カストディ業務」)を行う者も存在するが,当該業務は,仮想通貨の売買等を伴わないため,仮想通貨交換業には該当しない。」とされていたところ(研究会報告書14頁),「決済に関連するサービスとして,一定の規制を設けた上で,業務の適正かつ確実な遂行を確保していく必要があると考えられ」て(同頁),当該仮想通貨カストディ業務も暗号資産交換業に含まれるものとされたわけでしょう。

 (1:「利用者の暗号資産のアドレスに係る秘密鍵は利用者自身,お客さん自身が管理し,業者は秘密鍵を管理しない,暗号資産の移転を容易にするようなソフトウェアのみを提供するといった行為は,この法律案におきます暗号資産の管理の行為には該当しない」と解する旨の政府参考人答弁があります(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第144頁(三井秀範金融庁企画市場局長))。暗号資産の管理を業として行わなければ,暗号資産交換業には含まれません。)

(註2:また,暗号資産の売買等に関してですが,「資金決済法の中でございますが,暗号資産と法定通貨の交換などを規制対象としていますが,暗号資産の発行行為そのもの自体については特段の規制を入れておりません。また,暗号資産の発行者が暗号資産の販売を暗号資産交換業者に委託するという場合には,発行者自身の暗号資産交換業の登録は不要というふうにさせていただいております。」との政府参考人答弁がありました((第198回国会衆議院財務金融委員会議録第145頁(三井局長))。)

  

4 一般社団法人日本仮想通貨交換業協会の重用(63条の5第1項6号)

暗号資産交換業者の登録に係る登録拒否事由として,「暗号資産交換業者をその会員(第87条第2号に規定する会員をいう。)とする認定資金決済事業者協会に加入しない法人であって,当該認定資金決済事業者協会の定款その他の規則(暗号資産交換業の利用者の保護又は暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行に関するものに限る。)に準ずる内容の社内規則を作成していないもの又は当該社内規則を遵守するための体制を整備していないもの」が加えられています(改正後資金決済法63条の516号)。(なお,改正後資金決済法872号は,「前払式支払手段発行者,資金移動業者又は暗号資産交換業者を社員(以下この章において「会員」という。)とする旨の〔一般社団法人の〕定款の定めがあること。」と規定しています。「社員」(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)1115号等参照)を「会員」と言い換えてしまっているので特に「(第87条第2号に規定する会員をいう。)」と言及されているのでしょう。)

上記改正後資金決済法63条の516号の事由は,同様に登録制度及び認定資金決済事業者協会制度を採用している第三者型前払式支払手段に係る第三者型発行者又は資金移動業者については規定されていないところの,新たな追加的登録拒否事由となっています(前者については資金決済法10条を,後者については同法40条を参照)。

また,暗号資産交換業者については一般社団法人日本仮想通貨交換業協会が20181024日に資金決済法87条の認定を受けて認定資金決済事業者協会となっているところですが,改正後資金決済法63条の516号は,暗号資産交換業者をその会員とする認定資金決済事業者協会が今後常時存在し続けていくものであることを前提としているようです。一般社団法人日本仮想通貨交換業協会に対して,金融庁は資金決済法962項の認定取消権を発動しないものとしているのでしょうか。美濃部達吉の1940年の著作において,産業統制に係る同業者の協同組合に関して「時としては,啻に組合員に対してのみならず,組合員以外の者でも,組合地区内で同種の産業を営む者に対し,政府が組合の統制決定に従ふべきことを命じ得るものとして居ることが有る。商業組合法(9条)・工業組合法(8条)・貿易組合法(1862条)は其の例である。此の規定あるが為めに,此等の組合は任意加入の組合であるに拘らず,統制決定に関する限りは,行政官庁の監督の下に,強制加入の組合と同様の機能を発動し得るのである。」との記述があったことが想起されなどします(美濃部達吉『日本行政法下巻』(有斐閣・1940年)417-418頁)。

改正後資金決済法63条の516号は,「必要に応じて行政当局による監督権限の行使を可能とする法令に基づく規制と,環境変化に応じて柔軟かつ機動的な対応を行い得る認定協会の自主規制規則との連携が重要であると考えられ」たことにより,求められていた規定です(研究会報告書9頁)。

 

5 「商号」と「名称」とに係る厳密論理ごりごり改正(63条の5第1項7号)

改正後資金決済法63条の517号は,現在の同項6号が「他の仮想通貨交換業者が現に用いている商号若しくは名称と同一の商号若しくは名称又は他の仮想通貨交換業者と誤認されるおそれのある商号若しくは名称を用いようとする法人」(下線は筆者)であることを登録の拒否事由とする旨規定していることを改め,「他の暗号資産交換業者が現に用いている商号と同一の商号又は他の暗号資産交換業者と誤認されるおそれのある商号を用いようとする法人」として,「名称」を排除しています。

これは,資金決済法63条の511号見合いの厳密論理ごりごり改正というべきでしょう。

そもそも暗号資産交換業者は株式会社又は外国会社でしかあり得ないのですが(資金決済法63条の511号参照),株式会社がその一である会社(会社法(平成17年法律第86号)21号)の名称は商号でしかあり得ず(同法61項),外国会社は外国会社の登記をするまでは日本において取引を継続してすることができないところ(同法8181項),外国会社の登記においては「商号」が登記されることになるからでしょう(同法9332項柱書き及び91132号,9122号,9132号又は9142号)。資金移動業者についても,こっそり同様の改正が行われることになります(資金決済法401号及び6号参照)。

(「こっそり」改正については,2014115日掲載の「会社法改正の年に当たって(又は「こっそり」改正のはなし)」(http://donttreadonme.blog.jp/archives/2471090.html)も御参照ください。)

 

6 金融商品取引法違反の登録拒否事由化(63条の5第1項9号及び11号ニ)

改正後資金決済法63条の519号(現行8号)及び11号ニにおいて金融商品取引法違反の前科が登録拒否事由に加えられるのは,暗号資産関係の規制が改正後金融商品取引法に導入されるからでしょう(例えば,同法2243号の2によって,暗号資産は同法上の「金融商品」とされます(ちなみに,同項3号は,通貨を金融商品としています。)。)。

 

7 取扱暗号資産並びに暗号資産交換業の内容及び方法の変更に係る事前届出義務(65条の6第1項)

 改正後資金決済法63条の61項は,「取り扱う暗号資産の名称」(同法63条の317号)及び「暗号資産交換業の内容及び方法」(同項8号)の変更については従来の仮想通貨交換業者は事後に届け出ればよかったところ,暗号資産交換業者は事前に届け出るべきものと変更しています。

「移転記録が公開されずマネロンに利用されやすいなどの問題がある暗号資産が登場」(金融庁作成の国会審議参考用説明資料(20193月。以下「金融庁説明資料」といいます。)3頁)していることを承けての監督強化ということになります。「仮想通貨交換業者が取り扱う仮想通貨の変更を事前届出の対象とし,行政当局が,必要に応じて,認定協会とも連携しつつ,柔軟かつ機動的な対応を行い得る枠組み」(研究会報告書10頁)が構築されるのだ,ということでしょう。具体的には,一般社団法人日本仮想通貨交換業協会の事務局による快刀乱麻を断つ活躍が期待されているのでしょうか。

 (註:「日本仮想通貨交換業協会におきましては,新たな暗号資産を業者が取り扱う場合には,自主規制規則におきまして,協会への事前届出を行わせ,外部の知見を活用しつつ,暗号資産の安全性等を技術的側面から評価を行うとともに,いわゆる匿名性の高い暗号資産につきましては,マネーロンダリング等の問題が解決されない限り禁止するなどの措置を講ずることとしております。/金融庁といたしましては,問題がある暗号資産の類型が技術革新によりまして変わり得るものであるということなども踏まえまして,当局の監督上のチェックにおきまして,自主規制機関である協会における審査の結果を参考とするなど,緊密な連携を行うことで,より実効的かつ効率的な対応が可能になるものと考えております。」との政府参考人答弁があります(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第143頁(佐々木清隆金融庁総合政策局長))。)
 

8 利用者の保護等に関する措置に係る規制強化・罰則導入

 従来の資金決済法63条の10は「仮想通貨交換業者は,内閣府令で定めるところにより,その取り扱う仮想通貨と本邦通貨又は外国通貨との誤認を防止するための説明,手数料その他の仮想通貨交換業に係る契約の内容についての情報の提供その他の仮想通貨交換業の利用者の保護を図り,及び仮想通貨交換業の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じなければならない。」と規定していましたが(下線は筆者),違反に対する罰則はありませんでした。

 

(1)広告における表示必要事項規制(63条の9の2及び112条9号)

 ところが,改正後資金決済法により新設される同法63条の92は,暗号資産交換業者のする暗号資産交換業に関する広告について,内閣府令で定めるところにより,①暗号資産交換業者の商号,②暗号資産交換業者である旨及びその登録番号,③暗号資産は本邦通貨又は外国通貨ではないこと並びに④暗号資産の性質であって利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして内閣府令で定めるものを表示すべきことを義務付けており,かつ,同条に規定する事項を表示しなかった者は,同法1129号により,6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処され,又はこれを併科されることになります(同法11514号に両罰規定あり。)。

 

(2)禁止行為規制(63条の9の3並びに109条8号及び112条10号)

 また,こちらも新設条項である改正後資金決済法63条の93は,暗号資産交換業者又はその役員若しくは使用人に係る禁止行為を掲げています。当該罪と罰とのカタログは,次のとおりとなります。

改正後資金決済法63条の931号の禁止行為は「暗号資産交換業の利用者を相手方として第2条第7項各号に掲げる行為〔暗号資産交換業に係る行為〕を行うことを内容とする契約の締結又はその勧誘〔略〕をするに際し,虚偽の表示をし,又は暗号資産の性質その他内閣府令で定める事項〔略〕についてその相手方を誤認させるような表示をする行為」です。当該禁止行為を行った者は,同法1098号によって罰せられます(1年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれを併科(同法11512号の両罰規定により法人には特に2億円以下の罰金刑))。

改正後資金決済法63条の932号の禁止行為は「その行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し,虚偽の表示をし,又は〔暗号資産の性質その他内閣府令で定める事項〕について人を誤認させるような表示をする行為」であり,第3号の禁止行為は「〔暗号資産交換業の利用者を相手方として第2条第7項各号に掲げる行為〔暗号資産交換業に係る行為〕を行うことを内容とする契約の締結又はその勧誘〕をするに際し,又はその行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し,支払手段として利用する目的ではなく,専ら利益を図る目的で暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示をする行為です(下線は筆者)。これらの禁止行為を行った者は,同法11210号によって罰せられます(6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金又はこれを併科(同法11514号に両罰規定))。

 虚偽の表示や人を誤認させるような表示がいけないのは当然のこととしても(改正後資金決済法63条の931号・2号),「支払手段として利用する目的ではなく,専ら利益を図る目的で暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示をする行為」が犯罪とされてしまうこと(同条3号)は厄介です。現実には,暗号資産を支払手段として実際に利用しており,又は利用しようとしている人は,多数派ではないようであるからです(例えば老舗のビットコインであっても支払手段としての使い勝手は悪く,「ビットコインの取引は,最大でも世界全体で1秒間に7件しか行うことができませんでした(これは,10分間では4200件,1日では約60万件にあたります)。しかし,ビットコインの取引件数が増える中で,取引量がこのブロックサイズの上限を上回るようになってしまいました。取引量がブロックの容量を超えて,取引の渋滞や承認の遅延が発生してしまったのです。」というような事情だったそうです(中島真志『アフター・ビットコイン』(新潮社・2017年)90頁)。)。また,そもそもhomo oeconomicusの行う経済取引の動機が利益を図ることでないわけがないところであって,利益を図るべしと言うななどとは「余計なお世話である」感があります。ただし,当該条文の文言に再び戻ってよく読んでみると,「専ら利益を図る目的で暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示」であって初めて犯罪なのですから,これが「専ら」ではなく「主に」ならば,少なくとも犯罪捜査当局筋の問題とはならないものと考えてよいものではありましょうか。悩ましいところです。(「助長」については,「宋人有閔其苗之不長而揠之者,芒芒然帰,謂其人曰,今日病矣,予助苗長矣,其子趨而往視之,苗則槁矣」との出典(孟子・公孫丑章句上)に忠実に解釈すると,暗号資産交換業利用者が「れる」という痛ましい結果となるほどの強引なもの(揠之者これをぬけるもの)でなければならないのでしょう。)

しかしながら,「仮想通貨交換業者による積極的な広告等により,仮想通貨の値上がり益を期待した投機的取引が助長され」ていること(研究会報告書8頁)自体が問題であって「投機的取引を助長する広告・勧誘」は行わないことを求めることが適当と考えられる(同9頁)ということであれば,業規制当局筋の解釈・運用は厳しいものとなるのでしょう。投機については,“ “Speculation” has an ugly ring, but a successful derivatives market needs speculators who are prepared to take on risk and provide more cautious people…with the protection they need.”(「投機」には醜い響きがある。しかしながら,デリバティブ市場が成功するためには,リスクを取る準備があり,そして〔略〕より慎重な人々に対して彼らが必要とする保護を与える投機家が必要なのである。)などともいわれており(Brealey and Myers, Principles of Corporate Finance, 7th ed., McGraw-Hill, 2003, p.773),経済社会全体として効用はあるはずなのですが,暗号資産の市場における事情は異なるのでしょうか。「仮想通貨デリバティブ取引については,原資産である仮想通貨の有用性についての評価が定まっておらず,また,現時点では専ら投機を助長している,との指摘もある中で,その積極的な社会的意義を見出し難い。」との厳しい評価が下されているところです(研究会報告書16頁)。
 (註:「専ら利益を得る目的でという言葉でございますが,これは法令用語で〔,〕平たく申し上げますと,投機心をあおる,あるいは投機的取引を助長するというふうな意味合いで使って」いるところ,「例えばでございますけれども,暗号資産が今すごく価格が高騰していて,今がチャンスで今買うんだということで,投機をすごく助長する,こういった,投機を助長するような広告は不適切ではないか。」という政府参考人答弁があります(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第1414頁(三井局長))。)

 なお,改正後資金決済法63条の10には新たに第2項が設けられ,同項は「暗号資産交換業者は,暗号資産交換業の利用者に信用を供与して暗号資産の交換等を行う場合には,前項に規定する措置のほか,内閣府令で定めるところにより,当該暗号資産の交換等に係る契約の内容についての情報の提供その他の当該暗号資産の交換等に係る業務の利用者の保護を図り,及び当該業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じなければならない。」と規定しています。暗号資産交換業者から信用の供与を受けることまでして暗号資産の売買・交換をしてしまう利用者の存在自体は,御当局としても容認せざるを得ないということなのでしょう。従来の状況は,「仮想通貨の売買・交換を業として行うことは資金決済法の規制対象とされているが,仮想通貨信用取引自体に対する金融規制は設けられていない。」というものであったところです(研究会報告書18頁)。

 

9 受託金銭及び受託暗号資産の分別管理義務並びに履行保証暗号資産

 

(1)受託金銭の管理(63条の11第1項)

 従来の資金決済法63条の111項では,仮想通貨交換業者は利用者の金銭を分別管理するだけでよいとされていました。しかしながら,改正後資金決済法63条の111項では,利用者の金銭については内閣府令で定めるところにより信託会社等(資金決済法216項参照)への信託もしなければならないものとされています。仮想通貨交換業者に係る「制度の施行時と比べて,受託金銭の額が高額になってきているほか,検査・モニタリングを通じて,仮想通貨交換業者による受託金銭の流用事案も確認されている」ことから,「受託金銭については,流用防止及び倒産隔離を図る観点から,仮想通貨交換業者に対し,信託義務を課すことが適当と考えられ」たこと(研究会報告書7頁)によるものです。

 

(2)受託暗号資産の管理(63条の11第2項)

 受託暗号資産については,信託の義務付けは検討されたものの,結局その導入には至っていません(研究会報告書6頁参照)。しかしながら,従来の分別管理義務に加えて,「この場合〔分別管理に係る改正後資金決済法63条の112項前段の場合〕において,当該暗号資産交換業者は,利用者の暗号資産(利用者の利便の確保及び暗号資産交換業の円滑な遂行を図るために必要なものとして内閣府令で定める要件に該当するものを除く。)を利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定める方法で管理しなければならない。」と,その方法についての新たな義務が規定されています(同項後段)。「仮想通貨交換業者には,セキュリティ対策の観点から,可能な限り,受託仮想通貨の移転に必要な秘密鍵をコールドウォレット(オフライン)で管理することが求められ」ているところです(研究会報告書3頁)。金融庁説明資料では「コールドウォレット」で管理することを義務付けるものとされています(2頁。下線は筆者)。

  (註:「利用者の保護に欠けるおそれが少ないという方法で,現時点では,オフライン環境,したがってコールドウォレットといったものを想定してございます。」との政府参考人答弁があります(第198回国会衆議院財務金融委員会議録第148頁(三井局長))。)

(3)履行保証暗号資産(63条の11の2及び108条3号)

 他方,「こうしたセキュリティ対策に加えて,流出事案が生じた場合の〔略〕顧客に対する弁済原資が確保されていることも,利用者保護の観点から重要と考えられる」ことから,暗号資産交換業者に対し「ホットウォレットで秘密鍵を管理する受託仮想通貨に相当する額以上の純資産額及び弁済原資(同種・同量以上の仮想通貨)の保持を求めることが適当と考えられ」(研究会報告書4頁。外部のネットワークに接続されたウォレットは「ホットウォレット」と呼ばれています(同3頁註8)。),改正後資金決済法63条の1121項は履行保証暗号資産制度を導入し,「暗号資産交換業者は,前条第2項に規定する内閣府令で定める要件に該当する暗号資産〔ホットウォレット(金融庁説明資料2頁参照)で秘密鍵を管理することが認められる暗号資産〕と同じ種類及び数量の暗号資産(以下この項,第63条の1921項及び第108条第3号において「履行保証暗号資産」という。)を自己の暗号資産として保有し,内閣府令で定めるところにより,履行保証暗号資産以外の自己の暗号資産と分別して管理しなければならない。この場合において,当該暗号資産交換業者は,履行保証暗号資産を利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定める方法で管理しなければならない。」と規定しています。

なお,「ホットウォレットで秘密鍵を管理する受託仮想通貨に相当する額以上の純資産額」の保持義務が採用されなかった理由については,いわく。「弁済資金として金銭等の安全資産の保持を求めることも考えられるが,仮想通貨交換業者が顧客に対して負っている義務は受託仮想通貨を返還することであることや,安全資産の保持額が仮想通貨の価格変動により弁済必要額に満たなくなる場合があり得ること等に留意が必要と考えられる。また,仮に受託仮想通貨が流出したとしても,仮想通貨交換業者が顧客に対して受託仮想通貨を返還する義務が当然に消滅するわけではないことを踏まえても,弁済原資としては同種の仮想通貨の保持を求めることが適当と考えられる。」と(研究会報告書4-5頁註11)。

暗号資産交換業者には,ホットウォレット保管分に相当する同種・同量の暗号資産を重ねて別途購入等して確保し,かつ,保管しなければならない(寝かせておく)負担が新たに生ずることになります。また,履行保証暗号資産の管理の状況については,定期に,公認会計士又は監査法人の監査を受けなければなりません(改正後資金決済法63条の1122項)。

改正後資金決済法63条の192については,次の10で説明します。

改正後資金決済法1083号は,「第63条の1121項前段の規定に違反して,履行保証暗号資産を保有せず,又は履行保証暗号資産を履行保証暗号資産以外の自己の暗号資産と分別して管理しなかった者」を2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科するものとしています(同法11511号の両罰規定により,法人は特に3億円以下の罰金刑が科せられます。)。

 

10 対象暗号資産の弁済等(63条の19の2及び63条の19の3)

 新たに設けられる改正後資金決済法63条の192及び63条の193は,次のように規定しています。

 

   (対象暗号資産の弁済)

  第63条の19の2 暗号資産交換業者との間で当該暗号資産交換業者が暗号資産の管理を行うことを内容とする契約を締結した者は,当該暗号資産交換業者に対して有する暗号資産の移転を目的とする債権に関し,対象暗号資産(当該暗号資産交換業者が第63条の112項の規定により自己の暗号資産と分別して管理するその暗号資産交換業の利用者の暗号資産及び履行保証暗号資産をいう。)について,他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する。

  2 民法(明治29年法律第89号)第333条の規定は,前項の権利について準用する。

  3 第1項の権利の実行に関し,必要な事項は,政令で定める。

 

   (対象暗号資産の弁済への協力)

  第63条の19の3 暗号資産交換業者から暗号資産の管理の委託を受けた者その他の当該暗号資産交換業者の関係者は,当該暗号資産交換業者がその行う暗号資産交換業に関し管理する利用者の暗号資産に係る前条第1項の権利の実行に関し内閣総理大臣から必要な協力を求められた場合には,これに応ずるよう努めるものとする。

 

 改正資決済法63条の1921項の権利に係る制度導入は,暗号資産交換業者の管理に係る利用者からの受託暗号資産については当該利用者に対して信託受益権も取戻権も(研究会報告書5頁註12参照)認められていないとの認識に基づくものなのでしょう。「資金決済法上,分別管理された顧客の仮想通貨は交換業者破産時に信託財産とみなし破産財産に属しない旨明記」することも,「取戻権構成」により「交換業者倒産時に特定性が担保された顧客分の仮想通貨は交換業者の一般債権者の弁済原資とならずに顧客に返還される旨明記」することも(小野傑「仮想通貨交換業者の分別管理義務」金融法務事情2013号(20181210日号)1頁)されなかったということになるのでしょう。先取特権(「先取特権者は,この法律その他の法律の規定に従い,その債務者の財産について,他の債権者に先立って自己の債務の弁済を受ける権利を有する」(民法303条))的に「顧客の仮想通貨交換業者に対する受託仮想通貨の返還請求権を優先弁済の対象とすること」とした上で(研究会報告書6-7頁参照),「受託仮想通貨の返還請求権を優先弁済の対象とすることについては,他の債権者との関係にも留意が必要との意見もあった。こうした意見も踏まえ,優先弁済権の目的財産を,仮想通貨交換業者の総財産ではなく,例えば,本来的に顧客以外の債権者のための財産とはいえない受託仮想通貨と,〔略〕流出リスクに備えて顧客のために保持を求める弁済原資(同種の仮想通貨)に限定するといった対応も考えられる。」とされていたところに鑑み(同7頁註16),結論として,正に当該「限定するといった対応」が採用されたものでしょう。

ちなみに民法333条は,「先取特権は,債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は,その動産について行使することができない。」と規定しています。暗号資産に即していえば,いったんネットワーク上に流出してしまったら仕方がない,ということでしょう。

なお,先取特権は民法の物権編に規定されていますが,一般の先取特権であればその目的物は債務者の総財産であって(民法306条),物たる有体物(同法85条)には限定されず,「債権その他の財産のすべてを含む。」とされています(我妻榮『新訂担保物権法(民法講義Ⅲ)』(岩波書店・1968年)76頁。また,58頁)。ただし,「法律上執行の目的とならないものはおのずから除外される。なお,この場合にも総財産は1個のものとみられるのではなく,すべての財産のそれぞれの上に先取特権が成立するものとみる。」とされています(我妻Ⅲ・76頁)。目的たる対象暗号資産に対する執行の方法は,正に改正後資金決済法63条の1923項の政令を待つ,ということなのでしょう。

 

ちなみに,先取特権の実行であれば,担保権の実行としての競売(民事執行法(昭和54年法律第4号)第3章の章名参照。また,旧競売法(明治31年法律第15号)3条・22条)ということになるのでしょう。しかして,暗号資産は民事執行法1671項に規定する「その他の財産権」だとすると,それを目的とする先取特権の実行の要件等は同法193条によることになります。すなわち,暗号資産を管理する暗号資産交換業者の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所が執行裁判所となり(民事執行法1932項・1671項・1441項),担保権の存在を証する文書の提出によって(同法1931項),当該執行裁判所の差押命令によって実行が開始されることになるのでしょう(同条2項・同法1671項・143条)。配当要求は,執行力のある債務名義の正本を有する債権者及び文書により先取特権を有することを証明した債権者がすることができることになるようです(民事執行法1932項・1671項・1541項)。執行官が必ず暗号資産の引渡しを受けねばならないのでは大変でしょうから(民事執行法163条参照),執行裁判所の譲渡命令,売却命令,管理命令又は適当な方法による換価を命ずる命令によって執行されるのでしょうか(同法1932項・1671項・161条)。

改正後資金決済法63条の1921項の優先弁済権の対象である暗号資産の移転を目的とする債権は,金銭の支払を目的とする債権というわけには直ちにはいきません。先取特権の実行の場合は,履行に代わる損害賠償の債権について申立てをすることとなるのでしょうか(不動産登記法(平成16年法律第123号)8311号括弧書き参照。また,担保権の実行の申立書の記載事項に係る民事執行規則(昭和54年最高裁判所規則第5号)17012号の「被担保債権の表示」については,「債権者が当該担保権の実行の手続において配当等を受けようとする金額を明らかにするものである」,「したがって,元本債権だけでなく,利息及び遅延損害金についても配当等を受けようとするときは,その金額又は利率及び起算日をも記載すべきである」ものとされています(最高裁判所事務総局民事局監修『条解民事執行規則(第三版)』(司法協会・2007年)607-608頁。下線は筆者)。)。平成29年法律第44号による改正後民法では第41523号及び第417条に基づき金銭債権に変ぜしめられることになります。ただし,暗号資産の管理について寄託構成を採用する場合であって(片岡義広「仮想通貨の私法的性質の論点」LIBRA174号(20174月号)は,「準寄託」として考えられるであろうとします(16-17頁)。),寄託契約の告知による終了に基づき寄託物の返還請求がされると解するときは(我妻榮『債権各論中巻二(民法講義Ⅴ₃)』(岩波書店・1962年)723頁),当該返還債務について同法41523号後段の「債務の不履行による契約の解除権が発生」することは(解除すべき契約は既に終了しているのであるから)もはやないということになりそうにも思われます。ここは,解釈で補充して対応するのでしょう。我妻榮は,履行遅滞に基づく填補賠償の請求について,「債権者は,一定の期間を定めて催告した上で,期間徒過の後は,解除によって自己の債務を消滅させることなしにも填補賠償を請求する権利を取得する」と解すると述べた上で,「遺贈による債務のように契約に基づかないもの」(したがって,これについては契約の解除権の発生は観念されません。)などにおいて「債権者にとって妥当な結果となる」とその理由を挙げていたところです(『新訂債権総論(民法講義Ⅳ)』(岩波書店・1964年)114頁)。

なお,別除権(破産法(平成16年法律第75号)29項)である場合,破産手続によらないで行使できますが(同法651項),やはり民事執行法等によるその「基礎である担保権本来の実行方法によること」となります(伊藤眞『破産法(第4版)』(有斐閣・2005年)319頁)。非金銭債権を金銭債権に転化し(破産法10321号イ),破産債権者として破産手続に参加する場合(同条1項),その破産債権が優先的破産債権(同法98条)であるとよいのですが,優先的破産債権は「一般の先取特権その他一般の優先権がある」破産債権とされています(同条1項)。「優先的破産債権の基礎となるのは,民法その他の法律にもとづく一般の先取特権および企業担保権など」です(伊藤194-195頁)。これらは債務者の総財産を担保の目的としています(民法306条柱書き,企業担保法(昭和33年法律第106号)21項)。

ただし,改正資決済法63条の192及び63条の193の見出しは「対象暗号資産の弁済」といっています。「暗号資産の移転を目的とする債権に関し」(改正資決済法63条の1921項),対象暗号資産そのものによる弁済(「対象暗号資産の弁済」)を優先的に受けることが改正資決済法63条の1921項の権利なのだ,ということなのでしょう。

 

改正後資金決済法63条の193の規定は,「土屋雅一「ビットコインと税務」税大ジャーナル23号(2014年)8182頁は,〔ビットコインの移転に要する暗号の記録媒体が〕紙媒体になれば差押可能財産とできるが,滞納者から暗号解読のパスワードを聞き出す方法に問題があることを指摘している。」という記述(鈴木尊明「ビットコインを客体とする所有権の成立が否定された事例」TKCローライブラリー新・判例解説Watch民法(財産法)No.1072016219日掲載)4頁註11)などを想起させるところです。また,執行裁判所又は執行官ではなく(民事執行法2条参照),金融庁(内閣総理大臣)が,私権であろうところの改正後資金決済法63条の1921項の優先弁済権の実行に関与するという仕組みも興味深いところです。

 

 

弁護士 齊藤雅俊

大志わかば法律事務所

150-0002 東京都渋谷区渋谷三丁目5-16 渋谷三丁目スクエアビル2

電子メール:saitoh@taishi-wakaba.jp

 

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1 利用者財産の分別管理に係る仮想通貨交換業者の義務に関する法令の規定

 「利用者財産の管理」との見出しを付された資金決済に関する法律(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」といいます。)63条の11は,その第1項で「仮想通貨交換業者は,その行う仮想通貨交換業に関して,内閣府令で定めるところにより,仮想通貨交換業の利用者の金銭又は仮想通貨を自己の金銭又は仮想通貨と分別して管理しなければならない。」と規定し,第2項では「仮想通貨交換業者は,前項の規定による管理の状況について,内閣府令で定めるところにより,定期に,公認会計士(公認会計士法(昭和23年法律第103号)第16条の25項に規定する外国公認会計士を含む。第63条の143項において同じ。)又は監査法人の監査を受けなければならない。」と規定しています。

 上記資金決済法63条の111項の「内閣府令で定めるところ」は,仮想通貨交換業者に関する内閣府令(平成29年内閣府令第7号。以下「仮想通貨交換業者府令」といいます。)20条において次のように規定されています。

 

   (利用者財産の管理)

  第20条 仮想通貨交換業者は,法第63条の111項の規定に基づき仮想通貨交換業の利用者の金銭を管理するときは,次に掲げる方法により,当該金銭を管理しなければならない。

   一 預金銀行等への預金又は貯金(当該金銭であることがその名義により明らかなものに限る。)

   二 信託業務を営む金融機関等への金銭信託で元本補填の契約のあるもの

  2 仮想通貨交換業者は,法第63条の111項の規定に基づき利用者の仮想通貨を管理するときは,次の各号に掲げる仮想通貨の区分に応じ,当該各号に定める方法により,当該仮想通貨を管理しなければならない。

   一 仮想通貨交換業者が自己で管理する仮想通貨 利用者の仮想通貨と自己の固有財産である仮想通貨とを明確に区分し,かつ,当該利用者の仮想通貨についてどの利用者の仮想通貨であるかが直ちに判別できる状態(当該利用者の仮想通貨に係る各利用者の数量が自己の帳簿により直ちに判別できる状態を含む。次号において同じ。)で管理する方法

   二 仮想通貨交換業者が第三者をして管理させる仮想通貨 当該第三者において,利用者の仮想通貨と自己の固有財産である仮想通貨とを明確に区分させ,かつ,当該利用者の仮想通貨についてどの利用者の仮想通貨であるかが直ちに判別できる状態で管理させる方法

 

分別して管理する分別管理はブンベツ管理であってフンベツ管理ではありません。委任事務の処理は,分別(ふんべつ)をもって管理すべきものというよりは,「委任の本旨に従い,善良な管理者の注意をもって」行うべきものとされています(民法(明治29年法律第89号)644条)。商人による寄託物の保管についても同様,分別(ふんべつ)の語は用いられず,「商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には,報酬を受けないときであっても,善良な管理者の注意をもって,寄託物を保管しなければならない。」とされています(平成30年法律第29号による改正後の商法(明治32年法律第48号)595条)。

「善良な管理者の注意」とは何かといえば,富井政章及び本野一郎による民法644条のフランス語訳によれば“les soins d’un bon administrateur”とあります。旧民法財産取得編(明治23年法律第28号)2391項には「代理人ハ委任事件ヲ成就セシムルコトニ付テハ善良ナル管理人タルノ注意ヲ為ス責ニ任ス」とあるのでフランス民法由来の概念かとも思うのですが,フランス民法19921項は“Le mandataire répond non seulement du dol, mais encore des fautes qu’il commet dans sa gestion.”(受任者は,詐欺のみならず,その事務処理における過失についても責任を負う。)と,同条2項は“Néanmoins la responsabilité relative aux fautes est appliquée moins rigoureusement à celui dont le mandat est gratuit qu’à celui qui reçoit un salaire.”(しかしながら,過失に係る責任は,無償の委任に係る者に対しては,報酬を受領する者よりもより厳格でないものとして適用される。)と規定するのみです。「善良な管理者の注意」との言い回しは,何やら日本における発明のようであるように思われます。2019415日の追記:我妻榮『新訂債権総論(民法講義Ⅳ)』(岩波書店・1972年)26頁においては「善良なる管理者の注意」は「ドイツ民法に“in Verkehr erforderliche Sorgfalt”というに同じ」と説明されていますが,このドイツ語は,取引において(in Verkehr)必要な(erforderliche)注意(Sorgfalt)という意味です。「善良な管理者」の語源としてはしっくりしません。そこで,横着をせずに梅謙次郎の著書に遡れば,民法400条の解説にありました。語源はローマ法のpaterfamiliasです。いわく,「軽過失ヲ別チテ抽象的〇〇〇成形的〇〇〇Culpa levis in abstracto ve in concreto)ノ2ト為スハ多少理由ナキニ非ス例ヘハ売主カ其売却シタル物ヲ保存スルニ付テハ善良〇〇ナル〇〇管理者〇〇〇Bonus paterfamilias良家〇〇ト訳スヘキカ)カ通常加フル所ノ注意ヲ加フヘキモ無償ニテ寄託ヲ受ケタル者ハ受寄物ヲ保存スルニハ唯自己ノ財産ニ付テ平生加フル所ノ注意ヲ加フレハ則チ足ルカ如キ是ナリ(〔民法〕659〔条〕)即チ甲ハ抽象的ニシテ乙ハ成形的ナリ」と(梅謙次郎『民法要義巻之三債権 訂正増補第20版』(和仏法律学校=書肆明法堂・1903年)12頁)。このローマの善良なpaterfamiliasは,優しい「マイホーム・パパ」であるかといえば,そうではありません。「古典期の学説によると,父親は,妻を含む家族成員の全てに対して「生殺与奪の権利(ius vitae ac necis)」を有していた。これは,実際上,ある種の刑罰権として家内裁判の基礎をなしたものである。」という怖い人であり,かつ,「ローマの家父・家長の権能は大変に強力で,統一的・排他的・一方的・絶対的・画一的な支配をもって家族に君臨した。彼は,家族構成員の法的人格を完全に吸収し,対外的交渉を全て担当して家族を代表し,権利義務の帰属点となった。」とされています(オッコー・ベーレンツ=河上正二『歴史の中の民法―ローマ法との対話』(日本評論社・2001年)149頁)。ちなみに,necisはラテン語女性名詞nexの属格形で,このnexには殺害,殺すこと,死のような禍々まがまがしい意味があります。やれ飛行機は墜落せずに無事だったわいと成田空港にくたびれて到着した教養人に対して「次はNexに乗ってください(in Nece vehere)」と告げるのはちょっといかがなものでしょうか。我がJR東日本の成田エクスプレスの略称は,そこをおもんぱかってか,N’EXと,アポストロフィを打ってラテン語の綴りと相違せしめてあります。)

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 空港第2ビル駅で撮影

以上はさておき,仮想通貨交換業者折角の分別管理には,どのような効能があるのか思案分別してみましょう。

(ちなみに,片岡義広「仮想通貨の私法的性質の論点」LIBRA174号(20174月号)17頁には,仮想通貨交換業者が倒産したときの取扱いについて,「〔仮想通貨が〕仮想通貨保有者のものとして〔仮想通貨交換業者のもとで〕分別管理がなされている限りは,明文規定はないものの,信託法251項〔「受託者が破産手続開始の決定を受けた場合であっても,信託財産に属する財産は,破産財団に属しない。」〕を準用し,分別管理された仮想通貨保有者の財産として取り扱い,同種同量の仮想通貨をそれぞれ返還すべきであると考える。なお,その総量が不足する場合には,管財人としては,プロラタ(数量按分)となるが,いずれの場合も,一般先取特権(民法306条)があるのと同様に一般倒産債権者からは優先した金銭配当をする便宜も認められてよいと考える(破産法981項〔「破産財団に属する財産につき一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権〔略〕は,他の破産債権に優先する。」〕参照)。そう考えることが,公法(規制法)でありつつも,改正資金決済法が分別管理を要求した趣旨に適うものと考える。」と述べ,更に「換言すれば,改正資金決済法が分別管理を求めたのは,かかる私法上の法律効果が生じることを前提に(期待して)規定したものといいうる。」と付言しています(同頁(註20))。)

 

2 利用者財産の分別管理を仮想通貨交換業者に義務付けた趣旨:不正対策

 

(1)資金決済法63条の11

資金決済法63条の111項の趣旨については,2016524日の参議院財政金融委員会において,資金決済法改正による仮想通貨交換業者の登録制度の採用に関し,池田唯一政府参考人(金融庁総務企画局長)から答弁があり,「今回の仮想通貨交換業者につきましては,顧客から預かった財産を事業者の財産と分別して管理する義務が課されているなど,事業者において顧客の資産を自由に運用するものではないということ」であるとのことでした(第190回国会参議院財政金融委員会会議録第1419頁)。

より直接的には,仮想通貨交換業者又はその関係者による不正行為の防止が目的であるようです。同年427日の衆議院財務金融委員会における麻生太郎金融担当国務大臣の答弁にいわく。「いわゆる仮想通貨と法定通貨というものを交換するのをもってなりわいとしているという業者が,言われましたように,一昨年,破綻をして,その代表者が顧客の資金を着服した,横領したなどの容疑,嫌疑によって逮捕ということになったところであります。マウントゴックスというので一躍有名になりましたが,これは渋谷にあった会社だと記憶しますけれども。/私どもは,今回この法案を提出させていただくに当たりましては,こういった問題が発生していることに加えまして,いわゆる仮想通貨を利用する人たちの預けた財産,ビットコインを含む,現預金も含めまして,そういったものと自分たちの持っている会社等の財産というものをきちんと分別管理する義務というものを課すとともに,これは当然のこととして,適正な管理や,会社をやりますときには,財務諸表,比較貸借対照表,財産目録等々そういったものをきちっとした正確性を担保するために,公認会計士の外部監査というものを受ける義務を課しております。」と(第190回国会衆議院財務金融委員会議録第169-10頁)。

マウントゴックス社の内情は,池田唯一政府参考人の答弁するところでは,「マウントゴックス社が利用者から預かった金銭やビットコインを流出させていたその実態ということについては,〔略〕破綻に至る以前から債務超過に陥っていた,それから,顧客の資産と代表者あるいは会社の資産とが混同されていたというような点が,破産手続の過程で示されている資料等で報告されているところでございます。」とのことでした(第190回国会衆議院財務金融委員会議録第169頁)。すなわち,「警視庁の調べで,ハッカーによるサイバー攻撃により消失したと言われていたビットコインの大部分は,実は,元社長のマルク・カルプレスが外部の口座に送金するなどして横領していたことが分かったのです。つまり,外部のハッカーによる犯行ではなく,犯人は「ハッカーにやられた」と言って被害者役を演じていた取引所の社長その人だったのです。このためカルプレス被告は,20159月に業務上横領などで起訴されました。」ということでした(中島真志『アフター・ビットコイン 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』(新潮社・2017年)59頁)。

 (本記事掲載の翌日の追記:上記起訴に係るカルプレス氏の業務上横領等被告事件の一審判決が2019315日に東京地方裁判所で下されましたが,何と,業務上横領及びその予備的訴因の会社法違反(特別背任)は無罪,私電磁的記録不正作出・同供用罪については懲役26月の有罪でしたが4年の執行猶予が付いたそうです。同日付け(同日1340分に更新)の日本経済新聞のウェブ・サイトの記事によると,大量消失したビットコインは「ハッキングされて盗まれた」と被告人は主張していたところ,結局「警視庁の捜査でも,〔ビット〕コイン消失の原因は解明されないままとなっている」そうです。また,金銭についても裁判所は「利用者が〔マウントゴックス〕社に送金した金銭は,同社に帰属すると指摘。金銭が利用者に帰属することを前提にした検察側の主張は採用できない」と判断したそうです。)
 

(2)仮想通貨交換業者府令20

仮想通貨交換業者府令202項の由来については,金融庁の仮想通貨交換業等に関する研究会(座長・神田秀樹教授)の第6回会合(2018103日)に事務局から提出された資料(資料3「討議資料」5頁)には,資金決済法仮想通貨交換業者の倒産リスク問題に関して「資金決済法では,信託法を含め,仮想通貨の私法上の位置付けが明確でない中で,少なくとも過去の破綻事例のような顧客財産の流用を防止する観点から,仮想通貨の分別管理方法として,〔信託を用いて保全するのではなく,〕②〔自己又は委託先において顧客毎の財産を直ちに判別できる状態で管理する方法〕を規定した。」と述べられています(下線は筆者によるもの。仮想通貨交換業等に関する報告書(仮想通貨交換業等に関する研究会・20181221日)5頁も「顧客財産の流用を防止する観点」を理由として挙げています。)。

金銭の分別管理に係る同条1項の由来については,「受託金銭については,資金決済法上,仮想通貨に信託義務を課さない中で,金銭についてのみ信託を行うこととしても,どこまで利用者保護の実効性があるか疑問であるとの指摘等を踏まえ,金銭の分別管理方法としては,自己資金とは別の預貯金口座又は金銭信託で管理することを規定している」ということでした(仮想通貨交換業等に関する研究会(第6回)資料37頁)。

 

3 利用者財産の分別管理といわゆる倒産隔離

 利用者財産の分別管理と,いわゆる倒産隔離との関係についてはどうでしょうか。

「取戻権」との見出しが付された破産法(平成16年法律第75号)62条は,「破産手続の開始は,破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利〔略〕に影響を及ぼさない。」と規定しているところです。

 

(1)金融商品取引業者等の例:倒産隔離可能

倒産隔離に関して,仮想通貨交換業者と金融商品取引業者等(金融商品取引業者又は登録金融機関(金融商品取引法(昭和23年法律第25号。以下「金商法」といいます。)34条))との横並び論の観点から,まず金融商品取引業者等に係る顧客資産の分別管理の仕組みについての説明を見てみましょう。

すなわち,金融商品取引業者等については,「金融商品取引業者においては,顧客から(所有権の移転を伴う)消費寄託により預かった金銭については,顧客を受益者とする信託業務が課されている〔金商法43条の22項〕。一方で,顧客から(所有権の移転を伴わない)寄託により預かった有価証券については,顧客毎の財産を直ちに判別できる状態で管理することが求められている〔金商法43条の21項〕。/これにより,金融商品取引業者において分別管理が適切になされている限り,仮に当該金融商品取引業者が破綻したとしても,顧客は,金銭については信託受益権の行使により,有価証券については所有権に基づく取戻権の行使により〔破産法62条〕,いずれも弁済を受けることが可能な仕組みとなっている。」とされています(仮想通貨交換業等に関する報告書5頁(註12))。

 

(2)仮想通貨交換業者の場合

 

ア 消極的見解

これに対して仮想通貨交換業者に係る分別管理の仕組みは当該仮想通貨交換業者の破綻のときにどう働くかといえば,こちらは心もとない状況となっています。

仮想通貨交換業等に関する研究会の第7回会合(20181019日)に事務局から提出された資料(資料4「補足資料」5頁)によれば,顧客の金銭を仮想通貨交換業者が預かって仮想通貨交換業者府令2011号に基づき「預貯金口座で管理する場合,倒産隔離機能なし」(下線は原文)ということで当該顧客の金銭は保全されないものとされ,顧客の仮想通貨を同条21号に基づき「自己の仮想通貨と明確に区分し,顧客毎の数量を直ちに判別できる状態で管理」しても当該仮想通貨については,「倒産隔離が機能しない可能性(仮想通貨に係る私法上の位置付けが不明確なため)」(下線は原文)があるものとされています(仮想通貨交換業等に関する報告書6頁にも「仮想通貨交換業者が適切に分別管理を行っていたとしても,受託仮想通貨について倒産隔離が有効に機能するかどうかは定かとなっていない。」とあります。)。

 

イ 別預貯金口座による金銭の分別管理

預貯金口座による金銭の分別管理については,「当該金銭〔「利用者の金銭」ということでしょう。〕であることがその名義により明らか」であっても(仮想通貨交換業者府令2011号括弧書き),金融庁としては,当該預貯金債権は仮想通貨交換業者に帰属し,利用者には帰属しないと解しているのでしょう。
 (なお,最判平成
15221日民集57295頁は,被上告人損害保険会社(B火災海上保険(株))の代理店である訴外会社(D建設工業(株))が被上告人の保険契約者から収受した保険料を自己の財産と分別して管理するために上告人である信用組合において開設を受けた預金口座である「本件預金口座の名義である「B火災海上保険(株)代理店D建設工業(株)F」が預金者として訴外会社〔D建設工業(株)〕ではなく被上告人〔B火災海上保険(株)〕を表示しているものとは認められない」とした上で,通帳及び届出印の保管並びに本件預金口座に係る入金及び払戻事務を行っていたのは訴外会社であったから「本件預金口座の管理者は,名実ともに訴外会社」であると認め,(「訴外会社は,被上告人を代理して保険契約者から収受した保険料を専用の金庫ないし集金袋で保管し,他の金銭と混同していなかった」と原審が認定しているとしても)「金銭については,占有と所有が結合しているため,金銭の所有権は常に金銭の受領者(占有者)である受任者に帰属し,受任者は同額の金銭を委任者に支払うべき義務を負うことになるにすぎない」から「被上告人の代理人である訴外会社が保険契約者から収受した保険料の所有権はいったん訴外会社に帰属」するのであって「本件預金の原資は,訴外会社が所有していた金銭にほかならない」とし,「本件事実関係の下においては,本件預金債権は,被上告人にではなく,訴外会社に帰属するというべきである。訴外会社が本件預金債権を訴外会社の他の財産と明確に区分して管理していたり,あるいは,本件預金の目的や使途について訴外会社と被上告人との間の契約によって制限が設けられ,本件預金口座が被上告人に交付されるべき金銭を一時入金しておくための専用口座であるという事情があるからといって,これが金融機関である上告人に対する関係で本件預金債権の帰属者の認定を左右する事情になるわけではない。」と判示しています。)

仮想通貨交換業者府令201項には2種の分別管理の方法が規定されているところ,金銭信託に係る金商法43条の22項に対応するのは仮想通貨交換業者府令2012号の方法であるから顧客財産である金銭の保全に万全を期するのならそちらを使うべし,ということのようです。

 

ウ 仮想通貨交換業者における仮想通貨の分別管理

「自己の仮想通貨と明確に区分し,顧客毎の数量を直ちに判別できる状態で管理」しても当該仮想通貨については「倒産隔離が機能しない可能性(仮想通貨に係る私法上の位置付けが不明確なため)」があるとの問題意識は何かといえば,有価証券については「分別管理が適切になされていれば,顧客財産は保全」されて,これは「顧客は有価証券の所有権に基づき,財産を取り戻せる私法上の権利」に基づくものである一方(仮想通貨交換業等に関する研究会(第7回)資料45頁。下線は原文),これに対して仮想通貨については,取戻権(破産法62条)の基礎となる権利が観念できないのではないか,というもののようです。

 

4 仮想通貨を客体とする所有権の否定:東京地方裁判所平成27年8月5日判決

取戻権の基礎となる権利の典型としては,有価証券についていわれているように所有権(民法206条)があります。しかしながら,マウントゴックス社の破産事件に関して東京地方裁判所民事第28部平成2785日判決(平成26年(ワ)第33320号ビットコイン引渡等請求事件。裁判長裁判官は元司法研修所民事裁判教官の倉地真寿美判事)は,代表的仮想通貨であるビットコインに係る所有権の存在を否定しています。いわく。

 

 (2)所有権の客体となる要件について

 ア 所有権は,法令の制限内において,自由にその所有物の使用,収益及び処分をする権利であるところ(民法206条),その客体である所有「物」は,民法85条において「有体物」であると定義されている。有体物とは,液体,気体及び固体といった空間の一部を占めるものを意味し,債権や著作権などの権利や自然力(電気,熱,光)のような無体物に対する概念であるから,民法は原則として,所有物を含む物権の客体(対象)を有体物に限定しているものである(なお,権利を対象とする権利質(民法362条)等民法には物権の客体を有体物とする原則に対する明文の例外規定があり,著作権や特許権等特別法により排他的効力を有する権利が認められているが,これらにより民法の上記原則が変容しているとは解されない。)。

また,所有権の対象となるには,有体物であることのほかに,所有権が客体である「物」に対する他人の利用を排除することができる権利であることから排他的に支配可能であること(排他的支配可能性)が,個人の尊厳が法の基本原理であることから非人格性が,要件となると解される。

  イ 原告は,所有権の客体となるのは「有体物」であるとはしているものの,法律上の排他的な支配可能性があるものは「有体物」に該当する旨の主張をする。原告のこの主張は,所有権の対象になるか否かの判断において,有体性の要件を考慮せず,排他的支配可能性の有無のみによって決すべきであると主張するものと解される。

   このような考えによった場合,知的財産権等の排他的効力を有する権利も所有権の対象となることになり,「権利の所有権」という観念を承認することにもなるが,「権利を所有する」とは当該権利がある者に帰属していることを意味するに過ぎないのであり,物権と債権を峻別している民法の原則や同法85条の明文に反してまで「有体物」の概念を拡張する必要は認められない。したがって,上記のような帰結を招く原告の主張は採用できない。

 〔略〕

ウ 以上で述べたところからすれば,所有権の対象となるか否かについては,有体性及び排他的支配可能性(本件では,非人格性の要件は問題とならないので,以下においては省略する。)が認められるか否かにより判断すべきである。

3)ビットコインについての検討

ア ビットコインは,「デジタル通貨(デジタル技術により創られたオルタナティヴ通貨)」あるいは「暗号学的通貨」であるとされており〔略〕,本件取引所の利用規約においても,「インターネット上のコモディティ」とされていること〔略〕,その仕組みや技術は専らインターネット上のネットワークを利用したものであること〔略〕からすると,ビットコインには空間の一部を占めるものという有体性がないことは明らかである。

イ〔略〕

(ア)ビットコインネットワークの開始以降に作成された「トランザクションデータ」(送付元となるビットコインアドレスに関する情報,送付先となるビットコインアドレス及び送付するビットコインの数値から形成されるデータ等)のうち,「マイニング」(ビットコインネットワークの参加者がトランザクションを対象として,一定の計算行為を行うこと)の対象となった全てのものが記録された「ブロックチェーン」が存在する。ビットコインネットワークに参加しようとする者は誰でも,インターネット上で公開されている電磁的記録であるブロックチェーンを,参加者各自のコンピュータ等の端末に保有することができる。したがって,ブロックチェーンに関するデータは多数の参加者が保有している。

(イ)ビットコインネットワークの参加者は,ビットコインの送付先を指定するための識別情報となるビットコインアドレスを作成することができ,同アドレスの識別情報はデジタル署名の公開鍵(検証鍵)をもとに生成され,これとペアになる秘密鍵(署名鍵)が存在する。秘密鍵は,当該アドレスを作成した参加者が管理・把握するものであり,他に開示されない。

(ウ)一定数のビットコインをあるビットコインアドレス(口座A)から他のビットコインアドレス(口座B)に送付するという結果を生じさせるには,ビットコインネットワークにおいて,①送付元の口座Aの秘密鍵を管理・把握する参加者が,口座Aから口座Bに一定数のビットコインを振り替えるという記録(トランザクション)を上記秘密鍵を利用して作成する,②送付元の口座Aの秘密鍵を管理・把握する参加者が,作成したトランザクションを他のネットワーク参加者(オンラインになっている参加者から無作為に選択され,送付先の口座の秘密鍵を管理・把握する参加者に限られない。)に送信する,③トランザクションを受信した参加者が,当該トランザクションについて,送付元となる口座Aの秘密鍵によって作成されたものであるか否か及び送付させるビットコインの数値が送付元である口座Aに関しブロックチェーンに記録された全てのトランザクションに基づいて差引計算した数値を下回ることを検証する,④検証により上記各点が確認されれば,検証した参加者は,当該トランザクションを他の参加者に対しインターネットを通じて転送し,この転送が繰り返されることにより,当該トランザクションがビットコインネットワークにより広く拡散される,⑤拡散されたトランザクションがマイニングの対象となり,マイニングされることによってブロックチェーンに記録されること,が必要である。

 このように,口座Aから口座Bへのビットコインの送付は,口座Aから口座Bに「送付されるビットコインを表象する電磁的記録」の送付により行われるのではなく,その実現には,送付の当事者以外の関与が必要である。

(エ)特定の参加者が作成し,管理するビットコインアドレスにおけるビットコインの有高(残量)は,ブロックチェーン上に記録されている同アドレスと関係するビットコインの全取引を差引計算した結果算出される数量であり,当該ビットコインアドレスに,有高に相当するビットコイン自体を表象する電磁的記録は存在しない。

 上記のようなビットコインの仕組み,それに基づく特定のビットコインアドレスを作成し,その秘密鍵を管理する者が当該アドレスにおいてビットコインの残量を有していることの意味に照らせば,ビットコインアドレスの秘密鍵の管理者が,当該アドレスにおいて当該残量のビットコインを排他的に支配しているとは認められない。

ウ 上記で検討したところによれば,ビットコインが所有権の客体となるために必要な有体性及び排他的支配可能性を有するとは認められない。したがって,ビットコインは物権である所有権の客体とはならないというべきである。

 

 仮想通貨が所有権の客体には当たらないことについては,学説上も異論がないようです(森田宏樹「仮想通貨の私法上の性質について」金融法務事情2095号(2018810日号)15頁)。

ところで,前記(2)イにおいて東京地方裁判所は,「法律上の排他的な支配可能性があるものは「有体物」に該当する旨」の原告の主張を排斥しています。そうであれば,(3)アでビットコインには有体性がないことが明らかである旨認定した以上は,(3)イで更に排他的支配可能性の有無の検討までを行う必要はなかったように思われます。しかしながら当該検討がされた理由を忖度するに,あるいは我妻榮が次のように説いていたために為念的になされたのでしょうか。いわく,「私は,法律における「有体物」を「法律上の排他的支配の可能性」という意義に解し,物の観念を拡張すべきものと考える。権利の主体としての人が生理学上の観念でないのと同様,権利の客体としての物も物理学上の観念ではない。従って,法律は,その理想に基づいて,この観念の内容を決定することができるはずだからである」と(我妻榮『新訂民法総則(民法講義Ⅰ)』(岩波書店・1972年)202頁)。それともまた,「〔民法85〕条は,物に関する他の規定を必要に応じ無体物に関して類推適用すること(例,主たる権利と従たる権利)を妨げるものではなく」,「有体物以外のものについては,むしろ,法の欠缺と考え,その性質と問題に応じて物または物権に関する規定を類推適用すれば足りる」との指摘(四宮和夫『民法総則(第四版)』(弘文堂・1986年)120頁・121頁註(1)。また,『新注釈民法(1)総則(1)』(有斐閣・2018年)787頁(小野秀誠))を踏まえて,類推適用の要否を判断するための吟味を行ったということになるのでしょうか。

これらとは別に,「実は,特定の取引所で管理していたビットコインを別の取引所に移転させる場合に,紙媒体に暗号を印字する形で,物理的な表象にすることができる。この場合,有体性が認められるため,この紙媒体自体の所有権が問題になる可能性がある。それを見越して,そもそもビットコインには支配可能性がないから,所有権の客体とはなり得ないと示したのではないだろうか。」と説くものもあります(鈴木尊明「ビットコインを客体とする所有権の成立が否定された事例」TKCローライブラリー新・判例解説Watch・民法(財産法)No.1072016219日)3頁)。

 所有権の対象に係る「排他的支配可能性」については「海洋や天体等を除外する際に持ち出されるのが一般的である」とされます(鈴木3頁。また,四宮122頁,我妻Ⅰ・203頁)。しかしながら,「現行法上の物権の本質は「一定の物を直接に支配して利益を受ける排他的の権利である」ということができる。」というテーゼ(我妻榮著=有泉亨補訂『新訂物権法(民法講義Ⅱ)』(岩波書店・1984年)9頁)から出発すれば(なお,所有権は物権の代表的なものです。),「物権が目的物の直接の支配権であることは目的物の特定性(・・・)を要求する。種類と数量だけで定められたものについては,債権は成立しうるが(401条参照),物権は成立しえない。」ということ(我妻Ⅱ・11頁)と関係しそうです。「特定の参加者が作成し,管理するビットコインアドレスにおけるビットコインの有高(残量)は,ブロックチェーン上に記録されている同アドレスと関係するビットコインの全取引を差引計算した結果算出される数量であり,当該ビットコインアドレスに,有高に相当するビットコイン自体を表象する電磁的記録は存在しない」と東京地方裁判所平成2785日判決は判示するところ,「差引計算した結果算出された数量」は正に差引計算によって定められた数量にすぎません。

(しかしながら,小野傑「仮想通貨交換業者の分別管理義務」金融法務事情2013号(20181210日号)1頁は,仮想通貨交換業者破綻時の倒産隔離のための仮想通貨に係る「取戻権構成」による立法提案に際して「コールドウォレットに分別管理された顧客分の仮想通貨は特定性に疑義はなく,ホットウォレットに混蔵管理された仮想通貨も交換業者の顧客口座管理により特定性は担保されてお」ると論じています。)

(また,「ビットコインアドレスに,有高に相当するビットコイン自体を表象する電磁的記録は存在しない」とされているのですから,「仮想通貨は,電磁的記録(民法4463項括弧書き)である」ということであれば(片岡12頁),ビットコインアドレスには仮想通貨(電磁的記録)は存在していないことになります。)

 

5 金銭に係る「占有=所有権」理論と倒産隔離並びに仮想通貨の帰属及び移転の法的仕組み

 しかしそもそも,仮想通貨は通貨(本邦通貨及び外国通貨)ではないとはいえ(資金決済法25項参照),本家である通貨(金銭)について見れば,金銭の所有権に基づいて破産財団から当該金銭を取り戻すということはそもそも可能なのでしょうか。「Aの金銭を騙取したBが破産した場合や他の債権者から強制執行を受けた場合に,Aに取戻権や第三者異議権が認められるか」という問題であるところの「他の債権者との関係で金銭の原所有者の権利にどの程度物権的保護を与えるか,とくに優先的効力を認めるかの問題」については,「見解の対立が大きい」とされつつ(能見善久「金銭の法律上の地位」『民法講座 別巻Ⅰ』(有斐閣・1990年)124頁),金銭に係る「占有=所有権」理論を採る「通説・判例の立場からの言及はないが,当然否定することになろう。」と説かれていました(能見・同頁註(41))。

「占有=所有権」理論について通説は,「金銭(紙幣を含む貨幣)は,動産の一種であるが,それが通貨として存在する限り,金銭が体現する抽象的・観念的な価値は金銭そのものを離れては存在しえない。したがって,金銭という物質の占有者が,その価値の排他的支配者と認められる。そして,金銭が骨董品としてではなく,通貨として取引関係に立ち現れる限り,それが体現する観念的な価値が存在のすべてであるから,金銭はその占有者の所有に属すると言うことができる。判例も,不当利得に関連してであるが,金銭の所有権は,原則として占有の移転に従って移転するものであって,騙取された場合にも騙取者の所有となるという(最判昭和291151675頁。なお最判昭和39124判時36526頁)。〔略〕金銭の所有権の移転については,引渡は対抗要件ではなく,成立要件とするもので,近時の通説と言ってよかろう」と説いています(我妻Ⅱ・185-186頁)。

仮想通貨についても,森田宏樹教授は「仮想通貨の帰属および移転には,現金通貨および預金通貨とそれぞれに共通するメカニズムを見出すことができるように思われる。」と述べた上で,「仮想通貨は,財産権であるが,その保有者に排他的に帰属するのは,支払単位という価値的権能〔「金銭債務の債務免責力という権能であって,物を客体とする物権でも,債務者の行為を目的とする債権でもない。」〕であり,その帰属および移転を実体化する通貨媒体〔支払単位が「ある者に排他的に帰属している状態を創り出す」ためのものである「社会において一定の支払単位が組み込まれたものと合意され,かつ,それを通じて価値の帰属を実体的にトレースすることを可能とするような一定の媒体」(森田18頁)〕および通貨手段〔「特定の通貨媒体に係る「支払単位」を特定の者から他の者へと移転することを実現する」もの(森田18頁)。なお,「金銭債務の弁済に用いられる各種の「決済方法」は,それを構成する「通貨媒体」と「通貨手段」との組合せによって法的に把握することが可能となる」とされています(森田18頁)。〕であるブロックチェーン上の記録を離れてその存在を認識しえないものである。このような価値的権能の帰属および移転については,現金通貨および預金通貨のいずれにおいても,その特定による観念的な帰属ないし移転を認めない固有の法理が妥当しており,仮想通貨においてもこれと同様の規律が妥当すべきものといえよう。」と論じています(森田21頁)。

現金通貨の帰属及び移転に関する法理は,「支払単位を組み込まれた通貨媒体は有体物であるが,通貨の所有権移転においては,有体物に関する規律は修正ないし排除されて適用されることになる。その結果,占有の移転とは離れて,観念的な所有権の移転は認められない。つまり,通貨媒体の占有と価値的権能(支払単位)の帰属とが結び付く」というものであり(森田19頁),預金通貨の帰属及び移転に関する法理は,「流動性のある預金口座にあっては,入金記帳ごとに成立原因を更新する1個の残高債権が存在するのであって,入金記帳によって個別の預入金はその特定性を失い,預金債権が分属することはない。このことは,預金口座の「流動性」は,現金通貨における価値的権能について特定性を観念しえないのと同一の機能を果たしていると捉えることができ」,及び「預金口座に係る預金債権については,判例において,流動性預金口座に存する預金債権は,当該預金契約の当事者としての預金口座の出入金の権限を有する預金者に帰属するという理論が確立されつつある。この点でも,現金通貨において,通貨媒体である有体物を「占有」する者に価値的権能が帰属するという法理と同じ機能を認めることができ」るというものです(森田19-20頁)。

 

6 仮想通貨を寄託物とする寄託か仮想通貨の管理の委任か

 前記東京地方裁判所平成2785日判決は,ビットコインは所有権の客体とならないことを前提に,マウントゴックス社とその利用者との間においてビットコインに係る「寄託物の所有権を前提とする寄託契約の成立も認められない」と判示しています。寄託契約に関して,寄託の「目的物の所有権の帰属には関係がない。寄託者の所有に属さない物でも,寄託者は契約上の債権として返還請求権をもつ(大判大正75241008頁(寄託者が寄託物の遺産相続人でなかつたことが判明しても返還請求権に影響なし))」と説かれていること(我妻榮『債権各論中巻二(民法講義Ⅴ)』(岩波書店・1962年)704頁)との関係で違和感のある表現です。しかしながらこれは,自分はマウントゴックス社を受寄者とするビットコインに係る混蔵寄託契約の寄託者であった旨原告が主張していたことによるものでしょう。混蔵寄託は,平成29年法律第44号による改正後(202041日以降(同法附則1条,平成29年政令第309号))の民法(以下「改正後民法」といいます。)では「混合寄託」として第665条の2に規定されています。混蔵寄託の場合「受寄者は,混合物の所有権を取得しない。混合物は,本来の所有者の,寄託された数量に応じた持分による,共有となる。」とされています(我妻Ⅴ₃・717頁。また,『新注釈民法(14)債権(7)』(有斐閣・2018年)429-430頁(𠮷永一行))。

 むしろ,寄託契約の成否については,ビットコインが所有権の客体となり得る有体物ではないことが問題だったのでしょう。無体物を目的物とする寄託の成否については,学説において「民法においては「物」とは有体物をいう(85条)から,〔改正後民法〕657条の文言〔「寄託は,当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し,相手方がこれを承諾することによって,その効力を生ずる。」〕上,無体物は寄託の目的物として含まれていない。無体物については,「保管」も「返還」も観念しえないこと,また,実際上も,例えば株式等振替制度によってペーパーレス化された有価証券の保管にしろ,著作権その他の知的財産権の管理の委託にしろ,委任と性質決定すれば足りること〔略〕からすると,あえて無体物を寄託の目的物に含める必要はないと考えられる。」と説かれています(『新注釈民法(14)』366頁(𠮷永))。委任,だそうです。

 (しかしながら,片岡17頁は「仮想通貨の管理を委託する場合は,その受託者に裁量がなく単なる保管の趣旨であるのが通常であろうから,特段の金融的な商品を組成するような場合を除き,信託ではなく,準寄託として考えられるであろう」としており,委任構成は採られていません。なお,ここでの「準寄託」の語は,「民法の寄託も有体物についてのものだが,〔略〕仮想通貨も物権又は準物権と同様の構造を有するから,契約自由の原則もあって(民法改正案521条),寄託と同様の法律関係が適用されるべきであり,「準寄託」ということとするものである」との趣旨のものであるそうです(片岡16頁(註17))。小野傑1頁にも「ホットウォレットに混蔵保管された仮想通貨」という表現があります。)

 

7 受任者の委任者に対する仮想通貨「引渡」債務と履行不能の不能

 

(1)民法646条1項

 委任に係る民法6461項は「受任者は,委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても同様とする。」と,同条2項は「受任者は,委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。」と規定しています。

                  

(2)履行不能の不能

 民法6461項の金銭の引渡債務は金銭債務ということになるのでしょう。しかして金銭債務については,「金銭債務の不履行の態様としては履行遅滞しかないと考えられている。換言すれば金銭債務は履行不能にならないと解されている。こう解することは,第一に,金銭債務については不可抗力を抗弁としえないことと相俟って,履行不能を理由に債務が消滅することがないことを意味し,第二に,期限前に債務不履行責任が生じることがないことを意味しよう。」と説かれています(能見140頁)。金銭債務が履行不能にならないと解する理由は,「金銭債権は,一定額の金銭の給付を目的とする債権である。種類債権の一種とみることをえないでもないが,目的物の範囲を限定する抽象的・一般的な標準さえなく,数量をもって表示された一定の貨幣価値を目的とし,これを実現する物(貨幣)自体が全く問題とされない点で,債権の内容は,種類債権より更に一層抽象的である。その結果,普通の種類債権のように目的物の特定という観念はなく,また履行不能もない」ということであって(我妻Ⅳ・35頁),種類債務性を更に発展させた「抽象性」に求められているようです。仮想通貨の「引渡」債務についても,数量をもって表示された一定の財産的価値を目的とし,これを実現する物(有体物)自体が全く問題とされていないのですから(資金決済法25項参照),金銭債務同様に履行不能はない,ということになりそうです。

仮想通貨交換業等に関する報告書においても,「仮に受託仮想通貨が流出したとしても,仮想通貨交換業者が顧客に対して受託仮想通貨を返還する義務が当然に消滅するわけではない」と説かれています(4-5頁(註11))。仮想通貨交換業等に関する研究会の第6回会合(2018103日)において加藤貴仁教授から,「〔略〕顧客と仮想通貨業者の契約によって異なるかもしれませんけれど,コインチェックの事例でも,テックビューロ―の事例でも,仮想通貨は確かに不正に流出しましたが,流出したことによって,仮想通貨交換業者の仮想通貨を返す義務はなくなってはいないはずです。つまり,交換業者は,顧客から預かった仮想通貨を流出させても,倒産しない限り,仮想通貨を返還する義務を負い続けるということです。仮想通貨を返還する義務を果たすということは,顧客が別の仮想通貨交換業者に開いた口座に移す,もしくは顧客がブロックチェーン上に持っているウォレットに移すといったことを意味します。」との発言があったところです。
 (2019415日の追記:ところが,上記のような行政当局の整理に対して,別異に解する裁判例があります。前記マウントゴックス社破産事件に係るこちらは東京地判平成30131日判時2387108頁です。いわく。「ビットコイン(電磁的記録)を有する者の権利の法的性質については,必ずしも明らかではないが,少なくともビットコインを仮想通貨として認める場合においては,通貨類似の取扱をすることを求める債権(破産法10321号イの「金銭の支払を目的としない債権」)としての側面を有するものと解され,同債権(以下「コイン債権」という。)は,ビットコイン(電磁的記録)が電子情報処理組織を用いて移転したときは,その性質上,一緒に移転するものと解される。〔届出破産債権が一部しか認められなかったことを不服として破産債権査定異議の訴えを提起した〕原告は,原告が破産会社に対してビットコインの返還請求権を有するとして,破産債権の届出をしたものであるが,ビットコイン自体は電磁的記録であって返還をすることはできないから,原告は,コイン債権について,破産法10321号イの「金銭の支払を目的としない債権」として,破産手続開始時における評価額をもって,破産債権として届け出たものと解される。原告が主張するように破産会社の代表者が原告のビットコインを引き出して喪失させたのであれば,既にビットコインは他に移転し,同時にコイン債権も他に移転したことになるから,破産手続開始時において,原告は破産会社に対し,コイン債権を有しなかったことになる。本件届出債権は,原告が破産会社に対してコイン債権を有することを前提とするものと解されるところ,その前提を欠くことになるから,原告の上記主張は,結論を左右するものとはいえない。」と。当該判決では「ビットコイン自体は電磁的記録」であるものと解していますが,資金決済法25項における定義は仮想通貨を「財産的価値」としています。「電子的方法により記録」されている「財産的価値」といった場合,そこでの「財産的価値」とその記録たる「電磁的記録」とはやはり別物でしょう。前記東京地方裁判所平成2785日判決は「口座Aから口座Bへのビットコインの送付は,口座Aから口座Bに「送付されるビットコインを表象する電磁的記録」の送付により行われるのではなく」,かつ,「ビットコインアドレスに,有高に相当するビットコイン自体を表象する電磁的記録は存在しない」と判示しています。特定の電磁的記録によって表象される特定のビットコインというものはないのでしょう。(なお,特定物の寄託の場合,その特定物が滅失すれば当該寄託物返還債務は履行不能になります。ちなみに,債務不履行による損害賠償債権は金銭債権ですから(民法417条),破産法10321号イの金銭の支払を目的としない債権にはなりません。)また,平成30131日判決のいう「コイン債権」とは「ビットコイン〔について〕通貨類似の取扱をすることを求める債権」ということであって,かつ,その債務者は「ビットコイン〔略〕の預かり業務や利用者間のビットコインの売買の仲介業務」を行っていた破産会社マウントゴックスということであるようです。しかし,仮想通貨の管理を受任した仮想通貨交換業者(資金決済法273号)が当該利用者に対して負う債務は,現にその管理に係る仮想通貨について「通貨類似の取扱」をすることだけなのでしょうか。)

 

(3)SALUS UXORIS MEAE ?

 「仮想通貨は確かに不正に流出しましたが,流出したことによって,仮想通貨交換業者の仮想通貨を返す義務はなくなってはいない」ということになると,仮想通貨交換業者としては泣きっ面に蜂のような状況になります。「倒産しない限り,仮想通貨を返還する義務を負い続ける」ということであれば会社はお取潰しで従業員は路頭に迷わなければならないというのが御当局方面のお考えか,と関係者は愕然,武士の情けもあらばこそとの嫋々たる嘆きが続きます。

そうだ契約約款に事業者は消費者に対し損害賠償の責任を一切負わない旨規定しておけばよいのではないか,そうだそうだそう書こう,という発想も出て来ます。しかし,これはいささか短絡的です。問題は債務の履行不能後の損害賠償ではなくて(ただし,小野傑1頁記載の「ホットウォレットに混蔵保管された仮想通貨の一部がサイバー攻撃等で流出した場合の顧客保護の在り方であるが,交換業者にはホットウォレットの管理責任があり,金銭賠償による場合の顧客の価格変動リスク回避のため,信託法における受託者の原状回復責任にならい,現物返還を原則とすることが考えられよう。」の部分は,金銭「賠償」といい,かつ,わざわざ信託法を援用しているところからすると,損害賠償責任を論じているものと思われます。),履行不能とならずに残っている元からの債務の履行そのものだからです。(なお,事業者は消費者に対して損害賠償責任を一切負わないとまで書くと,当該条項はかえって無効となります(消費者契約法(平成12年法律第61号)811号・3号)。)
 何か救済策はないものか。

この点,我妻榮が民法6461項に関して述べることころが参考になりそうです。我妻は,金銭に係る「占有=所有権」理論採用前の古い大審院判決を批判して(「判例は,受任者が代理権を有し委任者の代理人として事務を処理した場合には,第三者から受け取る金銭の所有権も委任者に帰属するという。そして,この前提で,受任者が盗難にあつたときは返還義務は履行不能になるとい〔う〕(大判明治3435313頁)」が「然し,金銭について所有権を問題とすることは妥当を欠く」(のでおかしい)。),「受任者は,受取つた金を返還すれば足りる。必ずしも受取つたその金銭を返還する必要はないというべきである」と述べつつも,続いての括弧書きで,「(前掲〔略〕の判決のうち,〔略〕盗難の場合は,むしろ6503項の趣旨を類推して責任なしというべきものと思う)」と説いています(我妻Ⅴ₃・678頁。下線は筆者によるもの。ただし,『新注釈民法(14)』281頁(一木孝之)は当該我妻説に対してなお大判明治3435判例との抵触を問題としています。)。なるほど,民法6503項という手があったのでした。

民法6503項は「受任者は,委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは,委任者に対し,その賠償を請求することができる。」と規定する条項です。同条に関しては,「「事務処理の過程で受任者に生じる不利益等を填補する委任者の責任」を構想することが可能である。」とされています(『新注釈民法(14)』308頁(一木))。

市場から有価証券(NTT株券)を購入して委任者に帰属せしめた受任者が当該有価証券の購入代金について民法6503項に基づく損害賠償請求を委任者に対して行ったので,委任者が当該損害賠償金支払債務の不存在の確認を求めた訴えについて,委任者は受任者に対して「民法6503項に基づき,損害賠償義務を負うことになる」と判示した裁判例があります(大阪高判平成12731日判タ1074216頁)。当該受任者による当該NTT株券の購入が「委任事務を処理するため」のものかどうかが争われたのですが(本件は,委任者が当該NTT株券の売却を受任者(証券会社)に委託していたところ,当該株券が盗難届の出ている事故株券であったため,当該株券を市場で既に売却していた受任者が東京証券取引所の「事故株券及び権利の引渡未済の処理に関する申合」(19491210日実施)に基づく義務の遂行として買戻しを行った案件でした。),裁判所は「本件株券は,証券取引所の開設する市場において取引されるのであるから,右市場において商慣習となっている申合に従って処理されるべきは当然であるところ,第一審被告〔受任者〕は,委任契約に基づき,本件株券を売買したものの,東証申合に基づき,本件株券を買い戻さざるを得なくなったものであるから,右買戻しは,委任事務の処理の一環と認められる。」と判示して「委任事務を処理するため」のものであると認めています(買い戻したNTT株券の所有権は商法5522項に基づき委任者に帰属)。この事案に比べれば,仮想通貨の委任者への「引渡し」のための調達は,当該「引渡し」(民法6461項参照)という「委任事務を処理するため」のものであるということは容易に認められるでしょう。問題は,当該「調達」を必要とすることになった原因(仮想通貨の流出等)の発生について受任者(仮想通貨交換事業者)にbon administrateurとして過失がなかったかどうかでしょう(無過失の立証責任は受任者にあります(我妻Ⅴ₃・685頁,『新注釈民法(14)』316頁(一木))。)。委任者については,自分に過失がなくとも(例えば,仮想通貨交換業者からの仮想通貨の流出について自分には過失がなくとも)損害賠償しなければならない無過失責任とされています(我妻Ⅴ₃・685頁,『新注釈民法(14)』317頁(一木))。

 なお,消費寄託構成の場合(片岡17頁には,仮想通貨交換業者による利用者の仮想通貨の管理について,「仮想通貨は,財産的価値単位として均一の抽象的な存在であるから,準消費寄託というべき性質のもの」との記述があります。),「消費寄託にあつては,目的物の滅失の危険は受寄者が負担する,といわれる」とされていますが(我妻Ⅴ₃・727頁),そうとはされつつも「団体の役員や財産の管理人などが,その職務の一部として金銭を保管する場合には,委任事務の処理とみるべきであつて,その責任は,専ら委任の規定に従つて定められるべきである」とされています(我妻Ⅴ₃同頁)。

 

 

弁護士 齊藤雅俊

大志わかば法律事務所

150-0002 東京都渋谷区渋谷三丁目5-16 渋谷三丁目スクエアビル2

電子メール:saitoh@taishi-wakaba.jp 

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1 フィンテック法による仮想通貨に係る法規制

 何やら難しく響く名称の「仮想通貨」について論ずることは,一般の方々においては敬遠されているだろう,したがって,当該主題について書くと,「長い」「難しい」とつとに評判の悪い本ブログの読者を更に減らすことであろうとばかり思っていました。

 しかしながら最近,仮想通貨の将来性及びそこにおける投資機会について熱心に語られる年配の御婦人方と会う機会があり,考えを改めました。今や仮想通貨の日常化はすぐそこまで来ているのであり,そうであるのならば,あらかじめ,仮想通貨に関する法規制に関して一般の方々もある程度の知識を持っておられる方がよいと考えるに至ったものです。

 今年(2016年)6月3日に公布された情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律(平成28年法律第62号。長い題名ですので以下「フィンテック法」と呼称することにしましょう。)によって,仮想通貨概念は既に実定法化されているところです。具体的には,フィンテック法11条によって改正される資金決済に関する法律(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」といいます。)の改正後2条5項が次のように規定しています(なお,フィンテック法の施行は,公布の日(2016年6月3日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日からです(同法附則1条)。)。

 

 5 この法律において「仮想通貨」とは,次に掲げるものをいう。

  一 物品を購入し,若しくは借り受け,又は役務の提供を受ける場合に,これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ,かつ,不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り,本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって,電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

  二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって,電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 

 なお,通貨建資産については,改正後資金決済法2条6項が次のように定義しています。

 

6 この法律において「通貨建資産」とは,本邦通貨若しくは外国通貨をもって表示され,又は本邦通貨若しくは外国通貨をもって債務の履行,払戻しその他これらに準ずるもの(以下この項において「債務の履行等」という。)が行われることとされている資産をいう。この場合において,通貨建資産をもって債務の履行等が行われることとされている資産は,通貨建資産とみなす。

 

 やはり難しいですね。

長くなりすぎず,難しくなりすぎないように注意しながら,今回の記事を書いていこうと思います。

なお,「現在交換所において法定通貨との取引が確認されている,ビットコイン(Bitcoin),ライトコイン(Litecoin),ドージコイン(Dogecoin)は①〔改正後資金決済法2条5項1号〕の定義に該当し,ビットコインと相互に交換ができるイーサ(Ether),カウンターパーティコイン(XCP)などは,②〔改正後資金決済法2条5項2号〕の定義に該当すると考えられ」ています(堀天子『実務解説資金決済法[第2版]』(商事法務・2016年)37頁)。

 

2 仮想通貨の定義に係る解釈

まず,改正後資金決済法2条5項による仮想通貨の定義についてです。この定義をかみ砕いたものとしては,次のような国会答弁が,麻生太郎国務大臣(金融担当)からされています。

 

・・・仮想通貨というものは,いわゆるマネーロンダリングとかテロ資金供与の対策のために国際基準というものをつくらねばいかぬということで,多国間の枠組みでありますファイナンシャル・アクション・タスク・フォース,FATFというものの定義というのがございますので,それを踏まえて,〔一,〕不特定の者に対して対価の弁済に使用でき,かつ,不特定の者を相手方として法定通貨と相互に交換できる,二,電子的に記録され,移転ができる,三,法定通貨または法定通貨建ての資産ではないとの性質を有する財産的価値と定義をいたしております。

 したがいまして,プリペイドカードなどの前払い式の支払い手段とか,その他,企業が発行しますポイントカードなどにつきましては,例えば,それらを使用可能な店舗というものが特定の範囲に限られておりますので,不特定の者に対して対価の弁済に使用できないものであるならば,これは基本的には仮想通貨には該当しない,そういうように定義をされております。

(第190回国会衆議院財務金融委員会議録第1613頁)

 

 池田唯一政府参考人(金融庁総務企画局長)は,仮想通貨とそれ以外のものとの切り分けについて次のように答弁しています。

 

  仮想通貨の定義に特定の取引が該当するかどうかは,個別の商品,サービスごとに具体的に判断されるべきものでありますが,一般論で申し上げれば,ただいまお尋ねのありましたポイント〔Tポイント,ANAマイル等〕ですとか電子マネー〔Suica等〕ですとかゲーム内で利用可能な通貨につきましては,例えば,それらを使用可能な店舗が発行者との契約や利用者への表示等で示されている,そして,そうしたものの交換を行う不特定の者が存在しないという通常の形態のものであるということでありますと,基本的には,仮想通貨には該当しないものと考えられるかと考えております。

 (第190回国会衆議院財務金融委員会議録第161920頁)

 

 FATFについては,「平成元年(1989年)に,マネロン・テロ資金供与対策の国際基準(FATF勧告)作りを行うための多国間の枠組みとして設立。FATF勧告は,世界190以上の国・地域に適用。FATF勧告の履行状況は加盟国間で相互審査がなされ,その際に特定された不備事項の改善状況についてフォローアップがなされる。」と紹介されています(金融審議会決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告「決済高度化に向けた戦略的取組み」(20151222日)27頁註63)。

 2015年6月26日のFATFの「リスクに基づく仮想通貨へのアプローチのためのガイドライン(Guideline for a Risk-Based Approach to Virtual Currencies)」(以下「FATFガイドライン」といいます。)においては,仮想通貨(virtual currency)は次のように定義されています。

 

  仮想通貨とは,価値のディジタル表現(digital representation of value)であって,ディジタル方式によって取引されることができ(can be digitally traded),かつ,(1)交換の媒体(medium of exchange)として及び/又は(2)評価の単位(unit of account)として及び/又は(3)価値の保蔵手段(store of value)として機能するものであるが,いずれの法域においても法貨(legal tender)としての地位(すなわち,債権者に対して提供されたときには,有効かつ法定の支払の提供であるもの)を有しないものである。仮想通貨は,いずれの法域からも発行又は保証されたものではなく,上記の機能は,その利用者のコミュニティ内部における合意によってのみ果たされる。仮想通貨は,発行国の法貨として指定された硬貨又は紙幣であって,流通し,かつ,発行国における交換の媒体として慣習的に使用され受領(accept)されているものである法定通貨(fiat currency)(現実通貨(real currency),リアル・マネー又は国の通貨(national currency)ともいう。)とは異なる。仮想通貨は,法定通貨建ての価値を電子的に移転するために利用されるところの法定通貨のディジタル表現であるeマネーとは異なる。Eマネーは,法定通貨のディジタル方式による移転のための仕組み,すなわち,法貨としての地位を有する価値を電子的に移転するものである。

 (FATFガイドライン26頁)

 

 仮想「通貨」と名付けられているとはいえ,フィンテック「法案では,現時点〔2016年4月27日〕で仮想通貨が通貨と同等の性質を有しないということを前提としつつ,支払い決済手段としての機能を事実として有することがあることに鑑みて,仮想通貨と法定通貨の交換業者について一定の規制を設けることとし」たものです(第190回国会衆議院財務金融委員会議録第1611頁(牧島かれん内閣府大臣政務官))。フィンテック法によって「この仮想通貨を通貨や公的な支払とか決済手段として認定したというわけではありませんで,また,大体六百以上種類存在すると言われておりますこの仮想通貨に対してお墨付きを与えるものでもない」ところです(第190回国会参議院財政金融委員会会議録第1417頁(麻生太郎国務大臣(内閣府特命担当大臣(金融))))。お墨付きは与えないものの,「利用者の利便性とか経済効率性というところから,これは当事者間の自由意思を尊重するということが望ましいということになるんだと思いますけれども,いわゆる適切な判断で利用者の保護とか取引の安全確保というものが可能であることなどから,〔仮想通貨の〕全面的な禁止をするよりはバランスの取れた規制ということを考えるべき」との趣旨でされた立法であるということになります(第190回国会参議院財政金融委員会会議録第1418頁(麻生国務大臣))。

 「仮想通貨は,不特定の者に対して使用できるものであることを要件としており,一種の通貨的な機能を持つ財産的価値を意味しているが,一般的には,法定通貨とは異なり,強制通用力までは有しない。仮想通貨で支払いを行おうとしても,当然には通用力はなく,債権者がこれを拒否した場合には弁済の効力が生じないため,交換価値があるとまでいえないという点が法定通貨との違いとして挙げられる。仮想通貨を保有する利用者が,弁済を行う際に仮想通貨を提示して代金を支払うとの意思を表示し,債権者がこれを受容した場合には,弁済(債務の履行,民法482条)の効力が発生すると考えられる。/また,仮想通貨によっては,価格の変動幅が大きく,価値が保蔵されているといえないことも法定通貨との違いである。」ということでしょうか(堀40頁)。そこにいう民法(明治29年法律第89号)482条は,「債務者が,債権者の承諾を得て,その負担した給付に代えて他の給付をしたときは,その給付は,弁済と同一の効力を有する。」と規定する代物弁済に係る規定です。「債権者がこれを拒否した場合には弁済の効力が生じない」というより以前に,弁済の提供の効果(民法492条)に関して,仮想通貨によって金銭債務の弁済に係る現実の提供(同法493条本文)がされるものと認められるかどうかも問題となりますが,これは否定に解すべきでしょう。「強制通用力の有(ママ)とは,この効力を有する範囲の貨幣をもってする弁済は本旨に従う弁済になるという意味である。」とされているところ(我妻榮『新訂債権総論(民法講義Ⅳ)』(岩波書店・1964年(第10刷修正後))37頁),仮想通貨にはそもそも強制通用力がない前提でありました。信用ある銀行の自己宛振出小切手の交付は金銭債務の弁済の提供となるといっても(最判昭37・9・21民集16・2041参照),小切手は仮想通貨と異なりそもそも通貨をもって表示されています。また,「交換価値があるとまでいえない」といっても,交換価値があると思って交換する人もいるのでしょう。

 通貨の通用力の根拠としては,通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和62年法律第42号)7条が「貨幣は,額面価格の20倍までを限り,法貨として通用する。」と,日本銀行法(平成9年法律第89号)46条2項が「・・・日本銀行が発行する銀行券(以下「日本銀行券」という。)は,法貨として無制限に通用する。」と規定しています。ここでいう法貨とは,「取引において,法律上無制限に,又は一定の制限の範囲内において,強制通用力を有する通貨をいう。」とされ,通貨は「その抽象的な流通力を有する支払手段という点では法貨と同一の意義である」が,「法律的な強制流通力の側面に重点をおいて言い表す場合,特にその流通力の限界を規定する文脈では,「法貨」の用語が用いられている。」とされています(吉国一郎等編『法令用語辞典〈第八次改訂版〉』(学陽書房・2001年)673頁)。「「通貨」という用語は,通常,強制通用力のあるもの,すなわち,法貨について用いられるが(民法402)」といわれる場合(吉国等編536頁)の民法402条1項本文は,「債権の目的物が金銭であるときは,債務者は,その選択に従い,各種の通貨で弁済をすることができる。」と規定しています。また,同条2項は「債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは,債務者は,他の通貨で弁済をしなければならない。」と規定しています(相対的金種債権と推定(我妻38頁))。現在,通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律2条3項は「・・・通貨とは,貨幣及び日本銀行法(平成9年法律第89号)第46条第1項の規定により日本銀行が発行する銀行券をいう。」と定義しています。

 米国のドル紙幣について,ミルトン・フリードマンいわく(Free to Choose)。

 

 ・・・法貨であるという性質(The legal-tender quality)は,政府は自己に対する債務の弁済及び税の納付について(in discharge of debts and taxes due to itself)当該紙片(the pieces of paper)を受領し(will accept),並びに裁判所はそれらをドルで表示された債務の弁済とみなす,ということを意味する。なぜ,財及びサービスの私的交換取引においても,私人らによってそれが受領されるのだろうか。

  各人がそれらを受領するのは,他者もそうするということについて彼が確信を有している(confident)からである,というのが端的な解答(the short answer)である。当該緑色の紙片は,価値があるものと全員が思うから価値があるのである。各人が,それらが価値を有するものと思うのは,彼の経験ではそれらは価値を有していたからである。・・・

  当該習律(convention)ないしは擬制(fiction)は決して脆弱なものではない。事態は反対であって,共通の通貨(common money)を有することの価値が余りにも大きいので,人々は非常な不都合がもたらされた状態下(under extreme provocation)にあっても当該擬制に執着するのである――ここに,後に我々が見るように,通貨発行者がインフレーションから得ることのできる利益の部分(part of the gain),さらにはインフレーション惹起への誘惑が由来するのである。・・・(Avon Books, 1980, pp.237-238

 

3 仮想通貨交換業等

 フィンテック法11条による改正後の資金決済法2条7項及び8項は,「仮想通貨交換業」及び「仮想通貨の交換等」並びに「仮想通貨交換業者」を次のように定義します。

 

 7 この法律において「仮想通貨交換業」とは,次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい,「仮想通貨の交換等」とは,第1号及び第2号に掲げる行為をいう。

  一 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換

  二 前号に掲げる行為の媒介,取次ぎ又は代理

  三 その行う前2号に掲げる行為に関して,利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること。

 8 この法律において「仮想通貨交換業者」とは,第63条の2の登録を受けた者をいう。

 

なお,「第63条の2の登録を受けないで仮想通貨交換業を行った者」は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処され,又はこれを併科されます(改正後資金決済法107条5号)。

仮想通貨の売買とは,仮想通貨と法貨との交換ということになります。すなわち,売買は,「当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し,相手方がこれに対してその代を支払うことを約することによって,その効力を生ずる」ものだからです(民法555条。下線部は筆者によるもの)。仮想通貨と仮想通貨との交換の契約は,正に「当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約する」ものですから,民法586条1項の交換です。

「媒介」は,「ある人と他の人との間に法律行為が成立するように,第三者が両者の間に立つて尽力すること」です(吉国等編609頁)。

「取次ぎ」は,「自己の名をもって他人の計算で法律行為をなすこと」です(近藤光男『商法総則・商行為法〔第5版補訂版〕』(有斐閣・2008年)36頁)。例として,問屋(といや)があります(商法(明治32年法律第48号)551条以下)。

仮想通貨の交換業者について,FATFガイドライン29頁は次のように定義しています。

 

交換業者(exchanger)(また,仮想通貨取引所(virtual currency exchange)と呼ばれることもある。)は,業として,手数料(コミッション)を得て,仮想通貨を現実通貨,基金又は他種の仮想通貨及びまた貴金属への交換並びにその逆方向の交換に携わる(engaged)個人又は組織(entity)である。交換業者は,一般に,現金,電信送金,クレジット・カード及び他の仮想通貨を含む広範囲の種類の支払を受領し,並びに仮想通貨発行管理人とつながりがあること(administrator-affiliated)があり,ないときがあり,又は第三者としての業務提供者であることがある。交換業者は,取引所(bourse)として,又は両替商(exchange desk)として業務を行うことがある。典型的には,個人は,仮想通貨口座にマネーを預け,及び当該口座から引き出すために交換業者を利用する。

 

FATFガイドラインは,「リスク・アセスメントはまた,マネーロンダリング対策・テロ資金供与対策規制は,換金可能仮想通貨に係る結節点(nodes),すなわち,規制された金融システムへの出入口を提供するところの交錯点(points of intersection)を対象とすべきこと及び財又はサービスの購入のために仮想通貨を入手する利用者を規制することを目指すべきではないことを示すところである。当該結節点は,第三者として業務を提供する換金可能仮想通貨に係る交換業者を含む。そうである場合(where that is the case),それらはFATF勧告の下で規制されるべきである。かくして,各国は,国際基準によって規定され求められているマネーロンダリング対策・テロ資金供与対策に係る当該事項(relevant AML/CFT requirements)を,換金可能仮想通貨に係る交換業者,及び換金可能仮想通貨の動きと,規制された法定通貨に係る金融システムとが交錯する結節点となる他の種類の機関(institutions)に適用することを検討すべきである。」と勧告していました(6頁。下線部は,原文イタリック体)。

フィンテック法11条による改正後の資金決済法63条の2は,仮想通貨交換業について登録制度を設けます。登録制であって免許制を採らなかった理由については,「一般に我が国で免許と申しますと,法令による一定の行為の一般的禁止を公の機関が特定の場合に解除するという意味を持っていて,免許を受けた者をある程度独占的地位に置く性質を有するものと理解されていると思」われ,かつ,「他方,登録と申しますのは,一定の法律事実又は法律関係を行政庁等に備える特定の帳簿に記載するということで,一般には免許を付与する場合の方が登録のような場合よりも裁量が広く認められていると解されているかと考え」られることを前提に,「金融関係法令,法律では,顧客から資金を預かりリスク資産を含め運用を行う例えば銀行とか保険会社等については免許制が取られている。一方で,有価証券の売買,媒介,取次ぎなど,主として顧客から資金を預かるというようなことはありますが,運用を行うということのない金融商品取引業者ですとか受け入れた資金を顧客の指図に基づいて他者に移転させる資金移動業者,こういった者については現在〔2016年5月24日〕の金融関連法の中で登録制とされているところ」,「そうした中で,今回の仮想通貨交換業者につきましては,顧客から預かった財産を事業者の財産と分別して管理する義務が課されている〔フィンテック法11条による改正後の資金決済法63条の11第1項〕など,事業者において顧客の資産を自由に運用するというものではないということでありまして,こうしたことを踏まえまして,他の金融事業者との整合性等も勘案し,登録制ということで法律案を策定させていただいたということでございます。」と説明されています(第190回国会参議院財政金融委員会会議録第1419頁(池田唯一政府参考人(金融庁総務企画局長)))。

 フィンテック法11条による改正後の資金決済法63条の5第1項は,仮想通貨交換業の登録に係る登録拒否事由を掲げています。同項1号によると,仮想通貨交換業者は株式会社及び外国会社に限られます。同項3号は「内閣府令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない法人」が登録申請者である場合を登録拒否事由としていますが,最低資本金として1000万円程度を求めることが当局によって考えられています(第190回国会衆議院財務金融委員会議録第1620頁(池田政府参考人))。仮想通貨交換業者として登録されるためには「仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備」が行われており(同項4号),かつ,フィンテック法11条による改正後の資金決済法第3章の2となる「仮想通貨」の章の規定を遵守するために必要な体制の整備」が行われていること(同法63条の5第1項5号)等が求められています。

 

4 投資家保護規制に係る継続検討

 仮想通貨を対象とした外国為替証拠金取引(いわゆるFX)類似のハイ・リスク取引が既に行われているそうですが(第190回国会衆議院財務金融委員会議録第1613頁(宮本岳志委員)),投資家保護のためのFXにおけるレバレッジの上限規制のような規制は,今回のフィンテック法においては,仮想通貨に係る取引について導入されるには至っていません。

 

  ・・・この仮想通貨を用いた取引というのを法令上どのように規制するかということにつきましては,仮想通貨と既存のいわゆる有価証券等々との類似性の程度とか,また,仮に仮想通貨を用いた取引につきましても,何らかの規制を導入する場合には,具体的にどのような類型があるかとか,また,内容の規制がふさわしいかといったことなど,これはいろいろな論点というものをもう少し整理してみる必要と,その時間も要るんだと思っております。

  したがいまして,今回の法案では,実際に投資家に被害の生じましたマウントゴックス社の破綻というものを踏まえまして,早急に仮想通貨と法定通貨との交換業者に対する登録制と,マネロンとテロ資金供与規制を導入するということにしつつ,・・・仮想通貨を用いた取引というものを法令上どのように規制するのかということにつきましては,これは今しばらく時間をいただいて,今後とも,継続して検討させていただきます。

 (第190回国会衆議院財務金融委員会議録第1614頁(麻生国務大臣)。また,同号13頁)

 

ここでいうマウントゴックス社の破綻とは,「ビットコイン」の交換所である東京都渋谷区の株式会社MTGOXが2014年2月に東京地方裁判所に民事再生手続開始の申立てをし,同年4月同裁判所は当該申立てを棄却して破産手続開始を決定(その時点での同社の資産は約39億円であったのに対し負債は約87億円あって,約48億円の債務超過),更に2015年に同社代表者が業務上横領(ビットコイン売買のため顧客が預けた資金の着服等)等の容疑で逮捕されたというものです(「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」に係る説明資料(金融庁・2016年3月)8頁)。

「ビットコイン」については,「平成20年〔2008年〕に「ナカモトサトシ」と名乗る人物が公表した論文に基づき,インターネット上で有志の開発者によって開発されたと言われている仮想通貨。ネットワークに参加する者の間において,電子的に移転がなされ,全ての取引履歴は,参加者が共有する公開台帳に記録される。なお,ビットコインには,発行者は存在せず,取引を認証し,公開台帳に取引を記帳した者(一般に採掘者といわれる)に対して,その報酬としてシステム上自動的に発行される。」と紹介されています(決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告26頁註57)。

フィンテック法11条による改正後の資金決済法63条の10(「利用者の保護等に関する措置」との見出し)は,「仮想通貨交換業者は,内閣府令で定めるところにより,その取り扱う仮想通貨と本邦通貨又は外国通貨との誤認を防止するための説明,手数料その他の仮想通貨交換業に係る契約の内容についての情報の提供その他の仮想通貨交換業の利用者の保護を図り,及び仮想通貨交換業の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じなければならない。」と規定しています。

 

5 マルチ商法の客体性問題等

 

(1)連鎖販売取引の客体性

なお,消費者保護との関連でいえば,仮想通貨がマルチ商法といわれる連鎖販売取引の客体となるものかどうかも気になります。連鎖販売取引は,特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)33条1項において「物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。・・・)の販売(そのあつせんを含む。)又は有償で行う役務の提供(そのあつせんを含む。)の事業であつて,販売の目的物たる物品(以下・・・「商品」という。)の再販売(販売の相手方が商品を買い受けて販売することをいう。・・・),受託販売(販売の委託を受けて商品を販売することをいう。・・・)若しくは販売のあつせんをする者又は同種役務の提供(その役務と同一の種類の役務の提供をすることをいう。・・・)」若しくはその役務の提供のあつせんをする者を特定利益(その商品の再販売,受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供をあつせんする他の者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。・・・)を収受し得ることをもつて誘引し,その者と特定負担(その商品の購入若しくはその役務の対価の支払又は取引料の提供をいう。・・・)を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。)」と定義されています。

 仮想通貨は,「物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。・・・)」又は「有償で行う役務の提供」に該当するものかどうか。しかしながら,仮想通貨は少なくとも「物」たる有体物(民法85条)ではないところです。他方,金銭は所有権及び占有の対象となる動産なのですから(最判昭29115刑集81675参照),役務ではないでしょう。金銭は,「財貨の交換の用具として国家がその価格を一定したものをいう。」とされています(吉国等編176頁)。金銭が役務でないのであれば,仮想通貨も役務とはいえないのでしょう。

 ただし,仮想通貨に関する「教育パッケージ」の販売ならば,連鎖販売取引の客体たる「施設を利用し又は役務の提供を受ける権利」たる物品の販売ということになるのでしょう。

 

(2)売買及び交換と「採掘」との関係

 さて,フィンテック法の施行後は,仮想通貨交換業を行うには内閣総理大臣の登録を受けなくてはならず(改正後資金決済法63条の2,107条5号),更に外国仮想通貨交換業者(同法2条9項)は,当該登録を受けずに仮想通貨交換業に係る改正後資金決済法2条7項各号に掲げる行為の勧誘も行ってはならぬものとされています(同法63条の22)。登録を受けなければならないというのは厄介ですが,細かく見てみると「仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換」(同法2条7項1号)によらずに仮想通貨を入手することに関する行為は,規制の網の目を潜れることができそうではあります。すなわち,「トークン」などを用いて仮想通貨を原始的に自ら作成(「採掘」)するのであれば,売買にも交換にも当たらないもののごとし。商法4条2項は「鉱業を営む者は,商行為を行うことを業としない者であっても,これを商人とみなす。」と規定していますが,同項のような手当てが,仮想通貨交換業の定義に関しても今後必要となるものか否か。これはいささか,先走り過ぎでしょうか。

 

6 銀行又は金融商品取引業者による仮想通貨交換業

 銀行又は金融商品取引業者が仮想通貨を取り扱えるかどうかの問題については,金融庁当局は慎重です。

 銀行の業務の範囲について規定する銀行法(昭和56年法律第59号)10条から12条までは,フィンテック法によって改められていません。

 

  一般論で申し上げますと,御指摘の仮想通貨の販売,投資,勧誘等の業務が法令で銀行に認められております業務に該当するかどうかという点は,その業務につきまして,その銀行の固有業務との機能的な親近性やリスクの同質性があるかどうか,それから,その業務規模が銀行の固有業務に比して過大ではないかなどの観点から業務の態様に応じて判断されていくべきものであると考えております。

  また,金融商品取引業者のうち,御指摘の第一種金商業者〔第一種金融取引業の定義は金融商品取引法(昭和23年法律第25号)28条1項〕あるいは投資運用業者〔投資運用業の定義は金融商品取引法28条4項〕という者については,法令に定められた一定の業務以外の業務を行う場合には当局から個別に承認を受けることが必要とされておりますが〔金融商品取引法35条4項〕,その承認に当たりましては,業務が公益に反すると認められないかどうか,あるいはリスク管理の観点から問題がないかなどの観点から判断していくことになると考えております〔同条5項〕。

  いずれにしましても,こういう判断に当たりましては,今回の法案に基づく法的枠組みの整備等を通じて,仮想通貨が銀行や金融商品取引業者が取り扱うことがふさわしい社会的な信頼等を有する決済手段として定着していくかどうかといったことも十分見極めながら判断していく必要があると考えているところでございます。

 (第190回国会参議院財政金融委員会会議録第14号5頁(池田政府参考人))

 

7 仮想通貨と税務

 

(1)消費税

 仮想通貨の事業上の取引は,消費税法(昭和63年法律第108号)2条1項8号の資産の譲渡等(「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。」)に該当するということで,消費税が課されます(同法4条1項)。仮想通貨は,支払手段だといっても,消費税法の別表1の第2号の支払手段(外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)6条1項7号に規定する支払手段)に該当しないので,その譲渡は消費税法6条1項によって非課税にはならないから,と説明されています。「非課税として限定列挙されております支払い手段」である「法定通貨とか小切手とか,そういったような物品切手に該当しませんので」ということです(第190回国会衆議院財務金融委員会議録第16号7頁の麻生国務大臣の答弁)。

外国為替及び外国貿易法6条1項7号は,「支払手段」として,銀行券,政府紙幣,小額紙幣及び硬貨(同号イ),小切手(旅行小切手を含む。),為替手形,郵便為替及び信用状(同号ロ),証票,電子機器その他の物に電磁的方法により入力されている財産的価値であって,不特定又は多数の者相互間で支払のために使用することができるものであり,その使用の状況が通貨のそれと近似しているものとして政令で定めるもの(同号ハ。外国為替令(昭和55年政令第260号)2条を見ると,当該政令の定めは無いようです。)並びに同号イ又はロに掲げるものとして政令で定めるもの(同号ニ)を掲げています。外国為替及び外国貿易法6条1項7号ニの「政令で定めるもの」として,外国為替令2条1項1号は約束手形を掲げ,同項2号は「法第6条1項7号イ若しくはロ又は前号に掲げるもののいずれかに類するものであって,支払のために使用することができるもの」と規定していますが,外国為替令2条1項2号の「もの」も,やはり有体物ということになるでしょう。なお,消費税法の別表1第2号は支払手段に「類するものとして政令で定めるもの」の譲渡についても消費税は課されないものとしていますが,この「政令で定めるもの」は,国際通貨基金協定15条に規定する特別引き出権です(消費税法施行令(昭和63年政令第360号)9条4項)。

 

附:小額紙幣

外国為替及び外国貿易法6条1項7号イに「小額紙幣」というものが出て来るのでこれは何だということになりますが,通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律附則2条3号によって廃止された臨時通貨法(昭和13年法律第86号)5条に「政府ハ必要アルトキハ臨時補助貨幣ノ外50銭ノ小額紙幣ヲ発行スルコトヲ得/小額紙幣ハ10円迄ヲ限リ法貨トシテ通用ス/小額紙幣ノ形式ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」と,同法6条2項に「小額紙幣ハ他ノ通貨ヲ以テ之ヲ引換フ」と,同法7条に「小額紙幣ノ発行,銷却及引換ニ関シテハ大蔵大臣ノ定ムル所ニ依リ日本銀行ヲシテ其ノ事務ヲ取扱ハシム」と規定されていたものです。臨時通貨法は,その附則2項に「臨時補助貨幣及小額紙幣ハ支那事変終了ノ日ヨリ1年ヲ経過シタル後ハ之ヲ発行セズ」とありましたから,本来は前年(1937年)からの支那事変対策のための法律だったのでしょう。政府が発行するものであるので,銀行券ではありません。

 

 「消費税の課税事業者である個人のトレーダーが仮想通貨を購入する行為,これは課税仕入れということになりますし,逆に,仮想通貨で円を買うという行為は仮想通貨の販売になりますので,課税売り上げということになります。/したがって,他の取引とあわせて,課税売り上げに係る消費税額から課税仕入れに係る消費税額を差し引いた額を納税するということになります。」(第190回国会衆議院財務金融委員会議録第1615頁(星野次彦政府参考人(国税庁次長)))

 なお,仮想通貨の取引に係る上記の消費税課税の取扱いは,2017年6月までのこととなりました。2016年12月22日に閣議決定された平成29年度税制改正の大綱における「四 消費課税」中「(5)その他」の「(国税)」 の「(2)仮想通貨に係る課税関係の見直し」が,「①資金決済に関する法律に規定する仮想通貨の譲渡について,消費税を非課税とする。/②その他所要の措置を講ずる。」ものとしています。これには経過措置に係る(注1)から(注3)までが付されていますが,(注1)によれば,「上記の改正は,平成29年7月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用する。」とされています。

 

(2)所得税又は法人税

 所得税又は法人税については,「ビットコイン〔仮想通貨〕の譲渡によりまして利益が生じた場合は,所得税または法人税の課税の対象」となります(第190回国会衆議院財務金融委員会議録第1614頁(麻生国務大臣))。

 

(3)登録免許税

 仮想通貨交換業者の登録に係る登録免許税の額は,1件につき15万円となります(フィンテック法附則9条による改正後の登録免許税法(昭和42年法律第35号)別表第1第49号(三))。

 

8 犯罪収益移転防止法の一部改正

 仮想通貨を用いた「いわゆるマネーロンダリングとかテロ資金供与の対策」(実はこれが本丸でしょう。)を直接担うものとして,フィンテック法附則14条によって犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号。以下「犯罪収益移転防止法」といいます。)の一部改正がされています。

すなわち,仮想通貨交換業者は,犯罪収益移転防止法上の特定事業者となります(改正後犯罪収益移転防止法2条2項31号)。犯罪収益移転防止法は,「特定事業者による顧客等の本人特定事項(・・・)等の確認,取引記録等の保存,疑わしい取引の届出等の措置を講ずることにより」,「犯罪による収益の移転防止を図り,併せてテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の的確な実施を確保」する法律です(同法1条参照)。

また,改正後犯罪収益移転防止法30条は,他人になりすまして仮想通貨交換業者との間における仮想通貨交換契約(改正後資金決済法2条7項各号に掲げる行為を行うことを内容とする契約)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として,仮想通貨交換用情報(仮想通貨交換業者において仮想通貨交換契約に係る役務の提供を受ける者を他の者と区別して識別することができるように付される符号その他の当該役務の提供を受けるために必要な情報)の提供を受けること等に関する罰則を定めています。

 

弁護士 齊藤雅俊

1500002 東京都渋谷区渋谷三丁目5‐16 渋谷三丁目スクエアビル2階

大志わかば法律事務所

電話:0368683194

電子メール:saitoh@taishi-wakaba.jp

 

今年最後のブログ記事となりました。今年は,『プレジデント』の雑誌取材を受けたほか(8月29日号に記事掲載),引き続き企業法務をお手伝いする仕事に携わる一方,相続関係事件,親族関係事件,損害賠償請求事件,民事執行事件,債務整理関係事件等々,幅広い業務経験を積み重ねさせていただきました。

来年は,更により多くの方々のために御満足いただける仕事をすることができるよう祈念し,かつ,精進を期しております。

お悩みのある方は,お気軽に御相談ください。法律面からの切り口ということになりますが,かえって確実なお答えができることになろうかと思っております。(なお,弁護士相談料は,305400円(消費税額込み)が基本ということになっています。)

刑事でも,当番弁護士・国選弁護人の仕事がありました。ただし,刑事事件については,読者の方のための仕事を多々しなければならなくなるようなことがないよう,祈っております🎍

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