1 判決主文,事案,関係条文及び争点

(1)判決主文

原告ら及び被告らがいずれも電気通信事業者である平成23年(ワ)第32660号独占禁止法第24条に基づく差止請求事件に係る東京地方裁判所の判決が,平成26年(2014年)6月19日に出ました。

 主文は,


 1 原告らの主位的請求をいずれも棄却する。

 2 原告らの予備的請求に係る訴えをいずれも却下する。

 3 訴訟費用は原告らの負担とする。


 というものです。請求棄却に訴え却下,更に訴訟費用負担と,正に一刀両断真っ向唐竹割りです。武士の情けもあらばこそ,優秀な弁護士らを訴訟代理人に擁した原告らの残念・無残な敗北です。


(2)事案の概要

 当該事案の概要は,判決書における東京地方裁判所の整理によれば,次のようなものでした。


  本件は,戸建て向けFTTHサービス(Fiber To The Home, 光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス)を提供するために被告らの設置する設備に接続しようとする原告らが,被告らに対し,接続の単位を1分岐単位としOSUOptical Subscriber Unit, 被告ら局舎内の光信号主端末回線収容装置〕等を原告らと被告らが共用する方式での接続を,被告らが拒否したことは,電気通信事業法に基づく接続義務に違反するものであり,不当に原告らとの取引を拒絶し,又は被告らの優越的地位を濫用するものであるから,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)19条に違反する等と主張して,独占禁止法24条に基づき,主位的に,①8分岐単位での接続を強要しないこと,②1分岐単位での接続の申込みを拒否しないこと,③被告らが原告らとの間でOSUの共用に応じること,④被告らの設備を別紙1〔別紙は本記事では略〕のAないしDの接続箇所で原告らの設備と接続することを請求し,予備的に,被告らが,原告らに対し,①8分岐単位での接続を強要してはならない義務,②1分岐単位での接続の申込みを拒否してはならない義務,③被告らが原告らとの間でOSUの共用に応じる義務,④被告らの設備を別紙1のAないしDの接続箇所で原告らの設備と接続する義務を負うことの確認を求める事案である。


(3)関係条文

昭和22年法律第54号(独禁法。これは,201422日の記事で御紹介したように,題名の無い法律です。)19条及び24条は,次のとおり。


19条 事業者は,不公正な取引方法を用いてはならない。


24条 第8条第5号〔事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。〕又は第19条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者は,これにより著しい損害を生じ,又は生ずるおそれがあるときは,その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる。


 なお,後にしばしば出てくる電気通信事業法(昭和59年法律第86号)32条をここで掲げると,次のとおり。


 32条 電気通信事業者は,他の電気通信事業者から当該他の電気通信事業者の電気通信設備をその設置する電気通信回線設備に接続すべき旨の請求を受けたときは,次に掲げる場合を除き,これに応じなければならない。

  一 電気通信役務の円滑な提供に支障が生ずるおそれがあるとき。

  二 当該接続が当該電気通信事業者の利益を不当に害するおそれがあるとき。

  三 前2号に掲げる場合のほか,総務省令で定める正当な理由があるとき。


(4)争点

 本件事案における争点は,東京地方裁判所の整理によると,次の8項目になりました。


 1 主位的請求に係る作為命令が独占禁止法24条の対象となるか否か

 2 主位的請求と接続約款及び電気通信事業法32条について

 3 確認の利益(予備的請求)

 4 被告らの原告らに対する優越的地位(独占禁止法295号)の有無

 5 優越的地位の濫用行為(独占禁止法295号)の有無

 6 取引内容等の制限(独占禁止法296号,一般指定2項)の有無

 7 公正競争阻害性(独占禁止法296号)の有無その1―参入を著しく困難にする効果の有無

 8 公正競争阻害性(独占禁止法296号)の有無その2―電気通信事業法32条の接続拒否事由の有無


原告らは,第1の争点はクリアしたものの(それに伴い,第3の争点である予備的請求の確認の利益は否定された。),第2の争点の段階であえなく討ち死に。第4の争点以下に関する経済法に係る高邁な議論は,そのために費やされた時間,労力及び費用と共に空しく無駄となってしまいました。

第4ないし第7の争点が,「独禁法に基づく本件請求の本質的な論点」ということになるようですが,東京地方裁判所が当該各論点に関する判断を避けるまでもなく,電気通信事業法がらみの第2の争点を,電気通信事業者である原告らが越えることができずに終わってしまったということのようです。例えていえば,富士山頂を目指したが,登山道にたどりつく前に,ふもとの段階で樹海に迷い込んでしまったようなものでしょうか。それとも,五合目登山口から登るつもりで富士スバルラインを自動車で走っていたら,途中で自動車がエンコしたようなものか。


すこしの事にも先達はあらまほしきことなり(徒然草・第52段)


2 独禁法関係の判示

無論,本件判決が,独禁法に関する論点に全く触れなかったわけではありません。インターネットに掲載された白石忠志東京大学教授の法科大学院の「経済法」用レジュメには,本件判決に関して,「24条による作為命令は可能」及び「事業法で強制された行為は独禁法に違反しない」との二つの命題が示されています。


(1)「24条による作為命令は可能」

独禁法「24条による作為命令は可能」という点について,本件判決の該当部分は,次のとおり。第1の争点である「主位的請求に係る作為命令が独占禁止法24条の対象となるか否か」に関係します。


 独占禁止法24条は,不公正な取引方法に係る規制に違反する行為によってその利益を侵害され又は侵害されるおそれがある者は,その利益を侵害し又は侵害するおそれがある事業者に対し,「その侵害の停止又は予防」を請求することができると規定しているところ,ここでいう不公正な取引方法に係る規制に違反する行為が不作為によるものである場合もあり得ることから考えると,差止請求の対象である「その侵害の停止又は予防」は,不作為による損害を停止又は予防するための作為を含むと解するのが相当である。この点,被告らは,独占禁止法24条に基づき作為命令を求めることはできないと主張するが,上記に判示したところに照らし,被告らの主張は採用できない。


 とはいえ,原告らの独禁法24条に基づく差止請求は別の理由で棄却されたのですから,以上は一般論にすぎません。なお,当該判示は,三光丸事件判決(東京地判平成16415判タ1163235)が独禁法24条に基づく引渡請求を作為命令の請求であることを理由として不適法却下したことに対する学説の批判(白石忠志『独禁法事例の勘所〔第2版〕』(有斐閣・2010年)191192頁参照)にこたえたものでしょう。


(2)「事業法で強制された行為は独禁法に違反しない」

「事業法で強制された行為は独禁法に違反しない」という点について,本件判決の該当部分は,次のとおり。第2の争点である「主位的請求と接続約款及び電気通信事業法32条について」に関係します。


・・・被告らの設置する加入者光回線設備は,〔電気通信事業〕法上の第一種指定電気通信設備に当たるから,本件請求に係る接続は,同法33条2項所定の接続に当たると認められ・・・そうすると,被告らは,〔総務大臣から〕電気通信事業法33条2項の接続約款の認可又は同条10項の接続に関する協定の認可を受けていない以上,本件請求に係る接続に関する協定を締結するなどして,このような接続をさせることはできないのであって,接続約款の認可を受けずに原告らとの間で本件請求に係る接続に関する協定又は契約を締結すれば,刑罰法規の構成要件に該当することになる(同法1864号,339項)。

 もとより,電気通信事業法による規制は,独占禁止法による規制を排除するものではなく,電気通信事業法に基づき総務大臣が認可した接続約款による接続が,具体的な事案において,独占禁止法違反の要件を満たす場合に,独占禁止法に基づく規制に服することがあり得ることは否定できない(・・・最高裁平成221217日第二小法廷判決参照)。しかしながら,前記のとおり,被告らは,本件請求に係る接続に関する接続約款等についての総務大臣の認可がない以上,電気通信事業法上,このような接続に応じてはならない義務を課されている状況にあるといえるのであって,にもかかわらず,独占禁止法により,このような接続をしなければならない義務を被告らに課すことは,被告らに相互に矛盾する法的義務を課すことにほかならないことを考えると,独占禁止法24条に基づき,被告らに対してこのような接続を請求することはできないと解される。


注意深い読者であれば,接続協定と接続との関係が気になると思います。この点に関する東京地方裁判所の判示は,次のとおり。


原告らは,電気通信事業者の接続義務を定める電気通信事業法32条を根拠に,被告らに対する接続請求権があると主張する。しかしながら,同条は,接続という行為義務自体を定めたものではなく,接続に関する協定を締結しこれを維持しなければならないことを定めたものであると解される。


 ここで東京地方裁判所がいいたいのは,「原告らは,電気通信事業法32条から直ちに,被告らの局舎に立ち入って被告らの電気通信回線設備との接続工事をする権利が発生するかのように思っているかもしれないが,立入りや工事の権利は同条から直接生ずるものではなく,同条に促されて事業者間で締結される接続協定によって初めて生ずるのだよ。」ということでしょう。確かに,「電気通信事業法32条の権利の行使だっ。」と称して,いきなり,勝手に人様の局舎に侵入して勝手に接続工事をするのは,刑罰法規に触れる行為でしょう。また,高らかに電気通信事業法32条を理由に掲げて「直ちに接続工事をせい。」と言われても,献身的に黙々と, 気持ちよく仕事をしてくれる都合のいい人ならざる電気通信回線設備設置事業者としては,具体的な費用負担やら接続の条件について接続協定の合意のないまま,一方的に自腹で,かつ,接続請求者の言いなりに接続工事をするわけにはいかないでしょう。

 ところで,原告らがそこに接続させたいと言っている被告らの加入者光回線設備は電気通信事業法上の第一指定電気通信設備なので,当該設備との接続に係る協定を,総務大臣の認可なしに締結すると,被告らは同法33条9項の禁止に違反することになり,同法186条4号によって200万円以下の罰金に処せられてしまいます。独禁法24条に基づき裁判所が,総務大臣の認可をバイパスして,「総務大臣の認可の必要なんか無視していいからこの差止命令に従って接続せよ。電気通信事業法1864号の罰則の適用の有無など心配するな。」と被告らに言っていいのかどうかが問題となるわけです。電気通信事業法が青信号を出したものに対して独禁法が「いや,やっぱり独禁法上はいけないんです。」と赤信号を出すことは認められています。しかし,電気通信事業法がなお赤信号を出しているとき,それにもかかわらず,電気通信関係の諸立法も経済法である以上独禁法の方が偉いのである,普遍的・一般的思考による問題解決が必要なのであって,区々たる法文の単なる当てはめに拘泥してはいけないのである云々などと言って,裁判所が独禁法の名の下にあえて,被告らに対して電気通信事業法の赤信号を無視させてよいのかどうかが問題になったわけです。電気通信事業法も独禁法も法形式は同じ法律ですし,また,独禁法は「一般競争法」にすぎないのならば,特別法は一般法を破るでしょう。結論として,東京地方裁判所は,独禁法が電気通信事業法と別個にgo-stopの信号を出してもよいが,電気通信事業法の赤信号を青信号に変えることまではできない,と判断したもののようです。両法間(お役所間)で赤か青か信号が一致しないときは,結局事業者にとっては「赤信号」ということになるわけです。


3 協定の申込みに対する承諾の意思表示を求める請求権の存否

 なお,以上の議論は,独禁法24条に基づく裁判所に対する差止請求の名の下に,電気通信事業法上の総務大臣による接続協定認可制度をバイパスしてはいけないということでもありました。第一種指定電気通信設備への新たな接続は,これまで電気通信事業法32条等における接続義務に基づき,被告らと事業者間とで協議した上で,被告らが総務大臣に接続約款認可申請又は協定認可申請を行うという手順で実現してきた,というのならば正に当該手順を踏むべく,独禁法の名の下に裁判所を使って事業者間の協議及び総務大臣の認可をバイパスするという一見容易そうでありながら実は荒涼索漠たる樹海への道をとるな,ということでしょう。

 ということで,「これまでの手順」の道になるべく沿うべく東京地方裁判所は丁寧に,「総務大臣の認可がない場合であっても,原告らが,被告らに対し,協定の内容についての承諾の意思表示を求める請求権が発生し得ると解する余地があるかも問題となり得るところ」である,という問題を自ら提起し,検討しています。同裁判所は,原告らからの接続協定の内容に係る申込みに対して被告らに承諾の意思表示をさせ,その上で当該内容に係る合意における債務として被告らに当該協定に係る認可申請をさせるという「手順」を考えたのかもしれません(厳密にいうと総務大臣の認可前に協定を締結してしまうと犯罪構成要件に触れることになるので,正式な協定の締結は認可取得後にすることになるのでしょう。)。独禁法24条に基づきそのような作為(承諾)をさせることができるのであれば,原告らの請求にもまだまだ脈はあります。


(1)本件請求の場合に係る否定

 しかしながら,原告らの請求においては,接続協定の内容たるべき具体的内容(接続料及び接続条件)がそもそも欠けていましたから,原告らの本件訴訟は,やはりここで倒れてしまいました(被告らが仮に承諾し,又は裁判所が承諾の意思表示を命じてもそもそも有効な接続協定として成立しない。)。


(2)独禁法24条に基づく場合に係る否定

 とはいえ,東京地方裁判所は,なお不屈の親切さをもって考察を進めます。


  なお,本件で,仮に原告らが,協定の具体的な内容を定めた上で,独占禁止法24条又は電気通信事業法32条に基づき,被告らに対し承諾の意思表示を請求することができるかを検討するに,まず,独占禁止法24条については,同条に基づく差止めとして意思表示を命じることができるか否かはともかくとして,接続の単位についてのみ不公正な取引方法に当たるとして独占禁止法上の救済を与えるべき場合に,このような接続の単位を超える協定のその他の具体的な内容を被告らに強制すべき理由はないから,同条に基づく請求としては失当であるといわざるを得ない。(下線は筆者)


独禁法24条の差止めは,「その侵害の停止又は予防」の限度でされるべきであって,その先の事細かな当事者間の法律関係の形成までは独禁法では面倒を見られないよということでしょうか。
    ところで,「現行〔独禁法〕24条の判決例には,作為命令の請求を不適法として却下したものがあるが(・・・東京地判平成16415日〔三光丸〕),全く説得力がない・・・。本判決は,それが机上の空論であることを静かに物語っている」(白石・勘所188頁)とされる蒜山酪農農業協同組合事件判決(岡山地判平成16413(平成8年(ワ)第1089号))の主文1項においては,「・・・被告蒜山酪農農業協同組合は,・・・乙事件原告らに対し,岡山県真庭郡八束村大字中福田地内に設置の八束村公共育成牧場の利用を正当な理由なく拒否してはならない」とされています(白石・勘所184頁に引用)。蒜山酪農農業協同組合が乙事件原告らに対し「・・・系統外取引を開始したことを理由に本件公共育成牧場の利用を拒否することは,事業者団体の内部において特定の事業者を不当に差別的に取り扱うことにより,その事業活動を困難にするものであり一般指定5項に該当し,独占禁止法19条に違反することとなる。」と判断された事案です(白石・勘所185186頁に引用)。しかし,当該判決主文との関係はどうなるかというと,当該判決主文における蒜山酪農農業協同組合に対する作為命令は,独禁法違反のみがその根拠ではなかったように思われます。独禁法19法違反の認定に続いて,「従って,原告らが組合員たる地位に基づき,本件公共育成牧場を利用することを拒否することは許されない。」とされているからです(白石・勘所186頁に引用。下線は筆者)。まず,原告らの組合員としての公共育成牧場利用権が,独禁法違反云々以前に成立していたことが前提になっていたように思われます(ただし, 現行の独禁法24条が導入される前の事案ではあります。)。  


(3)電気通信事業法32条に基づく場合に係る否定

独禁法19条及び24条において不作為が問題になる場合には作為義務が前提としてあるはずですが,本件において原告らが主張していた被告らの作為義務の根拠は,電気通信事業法32条のようです。同条が,接続を要求する当事者が協定の具体的内容を定めてその承諾の意思表示を相手方に請求することまでを認めるものであるかどうかについての東京地方裁判所の見解は,次のとおり。


・・・電気通信事業法は,同法32条により接続に関する協定を締結し維持しなければならない場合であっても,当事者間に協議が調わなかったときには,総務大臣の裁定により協定の具体的内容を定めることとし,これにより同条の規定を担保することとしたものと解されるのであって,当事者の協議が調わない場合に,このような裁定の手続を経ないまま,一方の当事者が協定の具体的内容を定め,その承諾の意思表示を請求することにより,相手方にその内容を強制できるとする理由は見出し難く,このような事態は電気通信事業法32条の想定するところではないと解されるから,同条に基づく請求としても理由がないというほかはない。


 これに対して,総務大臣の裁定の制度(電気通信事業法35条)は司法手続に加えて導入されたものであって,民事訴訟による解決を否定するものではないとの主張がありますが,どうでしょうか。当該主張の根拠とするところは,2012年7月付け総務省作成の「事業者間の協議の円滑化に関するガイドライン」に「「協議が整わなかった場合,当事者は法令の定める紛争処理スキーム(総務大臣による協議命令・裁定及び電気通信紛争処理委員会によるあっせん・仲裁)を利用することができる」と記述しているとおり,これ以外に,接続請求事業者が裁判所に対して民事的救済を求めることを排除するものではありません。」ということのようですが(原告ら訴訟代理人弁護士らの第14準備書面),強い理由づけではあるとはいい得ないでしょう。無論,裁判を受ける権利は何人にも認められているのですが(憲法32条),紛争の解決は,残念ながら,自らが正義であると信ずる原告の無念の敗訴という形によっても達成され得るところです。そもそも電気通信事業法32条によって接続請求事業者に認められる具体的な権利は,電気通信回線設備設置事業者に対して誠実に協議に応ずることを求めるところまでではないかとも考えられているところです(東京弁護士会所属の宮下和昌弁護士による論文「電気通信事業法32条の「応じなければならない」の法的意味」(2012年)を参照)。


4 独禁法戦線から電気通信事業法32条ラインへの後退可能性

 ところで,本件における原告らは,被告らとの紛争を解決しようとするに当たって,あるいは併せて独禁法24条の万能性をも立証しようとして,そのいわば学問的情熱に引っ張られ過ぎたのかもしれません。万能条項存在の立証を急ぐ余りに,結局よろずのものを失ってしまったようにも思われます。(万能細胞をめぐる騒動もありましたね。学者の世界は大変です。)経済法あるいは競争法の考え方を正確に理解して問題の解決に結び付けることができる実務家が不足していたものでもありましょうか。

本件訴訟における原告らと被告らとの間の争点は8項目になったところですが,実は,第8項目(公正競争阻害性(独占禁止法296号)の有無その2―電気通信事業法32条の接続拒否事由の有無)のみを争う確認訴訟という形もあり得たのではないでしょうか。被告らが原告らの1分岐接続請求に対して当該「接続に関する協定を締結しこれを維持しなければならない」義務を有するのかどうかが双方の間における電気通信事業法上の争いに係る本来の中心の一つであったようですから,当該義務の存否を明らかにすれば,紛争の解決に大きく進むことがあるいはできたのではないでしょうか。公法上の法律関係に関する確認の訴えとしての当事者訴訟(行政事件訴訟法4条)ということになるのでもありましょう。原告らがそこでも武運つたなく敗訴すればそれまでですが,勝訴すれば,その後の協議に対する追い風になり,総務大臣の裁定等の手続も円滑に進むことになったのではないでしょうか。

とはいえやはり,華やかかつ理念的な独禁法の旗を降ろして,官僚臭のする伝統的業法の流れを汲む野暮な電気通信事業法の旗の下で戦うことは,原告らにおける新進・優秀な人々はいさぎよしとしなかったものでしょう。(控訴せず。)