(上):はじめに並びに連続複利法の場合の収束値及び旧判例
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(中):大判昭和11年10月1日並びに山中評釈及び我妻説
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4 最判昭和45年4月21日
(1)最高裁判所判決
ここで改めて最判昭和45年4月21日の判示(前記1に掲載してあります。)を見てみると,「いわゆる法定重利につき民法405条が1年分の利息の延滞と催告をもつて利息組入れの要件としていることと,利息制限法が年利率をもつて貸主の取得しうべき利息の最高額を制限していることにかんがみれば,金銭消費貸借において,年数回にわたる組入れをなすべき重利の予約がなされた場合においては,毎期における組入れ利息とこれに対する利息との合算額が本来の元本額に対する関係において,1年につき同法所定の制限利率をもつて計算した額の範囲内にあるときにかぎり,その効力を認めることができ,その合算額が右の限度をこえるときは,そのこえる部分については効力を有しないものと解するのが相当である。」との部分のうち,下線部分には我妻説,傍点部分については山中評釈の影響が歴然としています(しかし,山中評釈から横着に「コピペ」したわけではないのでしょうが,発生した利息の全てが不払のまま元本に組み入れられるわけではなくきちんと弁済期に弁済される利息もあるのであろうところ,そのような弁済済み利息は利息制限「法所定の制限利率をもつて計算した額」と比較されるべき額に算入されないものとされてしまっているように読めます。それでよいのでしょうか・・・。また,金融法委員会「論点整理 メザニン・ローンに関わる利息制限法・出資法上の問題――重利特約の取扱いを中心に――」(2015年11月)7頁註19は,最判昭和45年4月21日における「毎期における組入れ利息とこれに対する利息との合算額が本来の元本額に対する関係において,1年につき同法所定の制限利率をもつて計算した額の範囲内にあるときにかぎり」との判示の部分にいう「本来の元本額」とは,「各期における「組入れ前の元本額」(すなわち,各期の期初時点における前期までの元本組入れ額を含む元本金額)を指しているものと考えられる。」との解釈を示していますが,しかし,当該解釈は「本判決における事案への当てはめ部分を見ると,「組入れ前の元本額」という表現が用いられてお」ることからの推論であるところ,当該「当てはめ部分」は,利率が利息制限法上の上限利率であるときには利息の元本組入れを少しでもするとたちまち「1年につき同法所定の制限利率をこえる」ので「重利の約定に従つて元本に組み入れる余地を失つた」ことを説明するものです。すなわち,当該利率の場合は最初から利息の元本組入れはされないのですから,「各期の期初時点における」元本金額は最初の元本額から変わらないのであって,「前期までの元本組入額を含む」ことはそもそもないわけです。特殊な場合に係る表現を捉えて一般化することは適当ではないでしょう。)。ここでの問題は,「そのこえる部分については効力を有しない」の意味です。
前記3(2)第3段落(及び同(3)カ最終段落)のとおり山中評釈では,利息の計算をやり直せということになっています。しかし最高裁判所は,単に「効力を有しないもの」としています。しかしてその,効力を有しないものとなる主体は何かといえば,「年数回にわたる組入れをなすべき重利の予約がなされた場合においては」なのですから,当該「重利の予約」であるのでしょう。また,「そのこえる部分」が失効するということですから,前記3(3)の我妻説にも鑑みるに,不払利息の元本組入れの全部又は一部が認められなくなるということになるのでしょう。調査官解説も,我妻説式に「本件の事案についてみると,本件のような1年内に6回の組入れをする予約も全体として無効というわけではなく,1年を基準としてみて,利息制限法所定の制限利率をこえる〔筆者註:ここは,最判昭和45年4月21日の記載にも鑑みるに,精確には「利息制限法所定の制限利率をもって計算した額をこえる」でしょう。制限利率を超える利率であれば制限利率に引き直されるだけです。〕額の部分はその組入れを認められない限度で特約が働く余地を失うことになる。」と述べています(吉井213頁。下線は筆者によるもの)。利息の発生自体には変化がないのでしょう。
最判昭和45年4月21日が上告論旨に直接答えている部分は,我妻説(「〔利息制限法上の〕最高の利率だから――債権者は,特約に拘わらず,単利計算による総計額を請求することができるだけである(但し,2年の後に請求する場合には,1年分の利息を催告なしに組み入れて計算してよい。その限りで特約の効力を認むべきだからである)。」)を彷彿とさせるものとなっています。いわく,「昭和32年9月20日にその利率が日歩5銭(年利1割8分2厘強)に改定されて後は,上告人は右制限利率の範囲内〔利率年15パーセント又は18パーセント〕においてのみ利息の支払を求めうるのであるが,そればかりでなく,右利率改定の結果,重利の約定に従つて2箇月ごとの利息の組入れをするときは,ただちに,その組入れ利息とこれに対する利息の合算額が組入れ前の元本額に対する関係において,1年につき同法所定の制限利率をこえる状態に達したことになり,上告人は,右改定後は延滞利息を重利の約定に従つて元本に組み入れる余地を失つたものというべきである。それゆえ,これと同旨に出て,同32年9月21日以降利息の元本組入れの効果を認めなかつた原判決には,なんら所論の違法はない。」と。上告論旨は,原審判決が「1年を経過しなければ利息を元本に組入れることを得ない」としたことが違法だと言っていましたが,では1年が経過したら利息を元本に組み入れることができるのかどうか,という点についてまでの判示はされていません(昭和32年9月21日以後昭和33年5月31日までの8箇月余間にされた利息の元本組入れの有効性が争われていたのであって,現実に1年経過前であった当該事案において,利息の元本組入れが認められないという結論を導くには,これで充分な判示であったわけでしょう。)。
とはいえ,1年が経過したら利息を元本に組み入れることができるのかどうかという点については,我妻説的には「1年分の利息を催告なしに組み入れて計算してよい。その限りで特約の効力を認むべきだからである」ということですから,肯定されるのでしょう。調査官解説も「原判決が述べるように,240万円の債権については,すでに約定利率が制限利率をこえているから,予約は制限利率に引き直された利率により単利計算をした1年分(昭31年8月3日から同32年8月2日まで)を元本に組み入れる限度で特約が働き,その後弁済期である同33年5月31日までは1年に満たないから制限利率による単利計算の額を加えうるにとどまる。」と述べています(吉井213頁)。
しかし,我妻説において「但し,2年の後に請求する場合には,1年分の利息を催告なしに組み入れて計算してよい。その限りで特約の効力を認むべきだからである」とある部分の適用を,1年ずつということについて過度に限定的に考える必要はないのではないでしょうか。利率が上限利率である貸付けにおいて最終的に元本の弁済期が到来したときは,その時が直前の利息組入れ期又は当初貸付時から1年が経過する前であっても,筆者としては,「特約の効力」を認めてよいように思われます(最判昭和45年4月21日の事案については,最後に組入れ手続のされた昭和33年5月31日の日は各債権の弁済期であったことが,最高裁判所によっても認められています。)。この点については,前稿「(結)起草者意思等並びに連続複利法及び自然対数の底」の5(2)において御紹介した「日本近代法の父」ボワソナアドの見解,すなわち,旧民法財産編394条1項に関する「法はそれについて述べていないが,最終的な形で(d’une manière finale)利息が元本と共に履行期が到来したもの(exigibles)となったときには,当該利息は1年分未満であっても,総合計額(la somme totale)について,請求又は特別の合意の日から利息が生ずる,ということが認められなければならない。返還期限又は支払期限が1年内である(remboursable ou payable avant une année)貸金又は売買代金に関する場合と同様である。これらの場合においては,債務者は,この禁制がそこに根拠付けられているところの累増の危険にさらされるものではないからである。」との見解が筆者を援護するものでしょう。利息制限法からする組入れ利息額の制限については,1年未満の期間については期間比例的に額を考えればよいはずです(通常の利息計算自体はそうされています。)。(ああ,心ならずも判例にケチをつけてしまった。)
(2)原審・東京高等裁判所昭和43年12月17日判決に関して(及びニセ石田説再構成)
最判45年4月21日の事案における債権のうち,240万円の口の処理(これは上告論旨の対象となっていないものと判断されています。)及び1200万円の口のそれの是非が,筆者を悩ましています。
まず,「昭和31年8月1日付契約書によ」るものとされていながら,両口の貸付けについて現実に出捐がされたのは,昭和31年8月3日であり同「日以前は利息を生ずる余地がない」もの(なお,民法589条2項参照)と原審の東京高判昭和43年12月17日によって認定されているところが,最初から少々いやらしかったところです(民集24巻4号338-339頁)。
次に,「2箇月ごとの手形の満期日に利息を支払つて手形を切り替えて行くことにした」とされていますが,手形の満期日(利息の支払期)は精確に2箇月ごとではありませんでした。利息発生開始日である昭和31年8月3日の後の各利息支払期は,①同年9月30日(59日分),②同年11月30日(61日分),③昭和32年1月31日(62日分),④同年3月31日(59日分),⑤同年5月31日(61日分),⑥同年7月20日(50日分)及び⑦同年9月20日(62日分)並びに⑧同年11月20日,⑨昭和33年1月31日,⑩同年2月28日,⑪同年3月31日及び⑫同年5月31日であったものと原審によって認定されています(民集24巻4号339頁)。
約定利率については,240万円の口については前記1記載の判決文のとおり一貫して年36.5パーセントでしたが,1200万円の口のそれは,当初は年10.95パーセントだったものが,昭和32年7月21日から年14.6パーセント(民集24巻4号339頁),同年9月21日から年18.25パーセント,同年11月30日から年29.2パーセントへと変化しています。
上記の利率のうち,年15パーセントを超えるものは利息制限法上の上限利率年15パーセントに引き直されるので(同法1条3号),ある意味分かりやすいところです。また,年10.95パーセントであれば,連続複利法でも1年後には元本は1.1157倍強(=e^0.1095)にしかなりませんので,利息制限法上の最低上限利率の年15パーセントを超えることはなく,同法上の問題を起すことにはなりません。しかし,年14.6パーセントは厄介です。組入れ間隔均等の年6回組入れで1年後に1.155175倍,同様の年2回組入れでも1年後に1.151329倍になってしまいます。いずれも上限利率年15パーセントに係る1.15倍を超えるものです。
さて,筆者を悩ましている240万円及び1200万円の両口の処理に係る問題は3点ありましたが,そのうち,昭和32年9月21日から元本弁済期の昭和33年5月31日までの分の利息の組入れがされなかったことについては,既に前記(1)の最終段落で触れたところです。残っているのは,第1に,東京高等裁判所は,240万円の口について昭和31年8月3日からきっかり1箇年経過時の昭和32年8月2日限り単利年15パーセントでの利息36万円を元本に組み込んでいるが,その時点で利息の元本組入れを行う法的根拠は何か(その時点で利息の元本組入れをする旨の当事者の合意はありません。),第2に,上記のように剣呑な利率である年14.6パーセントの割合での利息62日分を当該62日経過時にあっさり元本に組み入れているが,それは許されるのか,という問題です(利率年14.6パーセントで2箇月ごとに利息を元本に組み込んでいけば,「1年につき」利息制限法所定の制限利率年15パーセントをもって計算した元利金合計額の範囲を超過する結果になることは,前記のところから明らかでしょう。)。
前者については,民法405条に拠ろうにも同条は1年分以上といっているのできっかり1年分で組入れを行う理由付けには利用できないでしょうし,利息制限法は利息組入れを制限することはあっても積極的に根拠付けるものではないでしょう。1年経過以後最初の合意による利息組入日である昭和32年9月20日での組入れではいけなかったのでしょうか(なお,計算上,昭和32年8月2日組入れの場合における昭和33年5月31日経過時の元利金合計額は310万2542円であるのに対して,昭和32年9月20日組入れの場合は310万円0316円となります。上告人としては,東京高等裁判所による2226円分の温情を感じていたかもしれません。)。
後者については,東京高等裁判所は「1200万円〔略〕の〔略〕口につき日歩3銭〔年10.95パーセント〕或いは4銭〔年14.6パーセント〕の率により昭和32年9月20日迄になされた大体2ヶ月毎の重利の約束による利息の元本組入れは,その結果が利息制限法の制限利率年1割5分〔略〕の率により単利計算した結果の範囲内であるから,有効と解すべきであるが,昭和32年9月21日より日歩5銭〔年18.25パーセント〕と改訂された以降の前記利率の定めは利息制限法による前記制限利率を超える部分は無効であり,かつ,これらの率により昭和33年5月31日迄になされた前記重利の約束による利息の元本組入れは,右改訂時から1年を経ていないから,利息制限法の関係で,これについて効力を認める余地がないものとするのが相当である」と判示しているところです(民集24巻4号340-341頁)。昭和32年9月20日経過時の組入れ後元本額は1365万4663円ですが(民集24巻4号341頁・362頁),この額は昭和31年8月3日から年15パーセントの利率で1年49日間分単利計算した場合の元利金合計額1404万1463円を下回るからよいのだ,ということのようです。しかし,利率年15パーセントである240万円の口については厳格に守られた端数なしの1箇年の区切りが,1200万円の口に係る利率が年15パーセント未満の期間については弛緩してしまっているようでもあります。(とはいえ実は,1200万円の口について機械的に1箇年の区切りを厳格に適用すると問題がありました。1200万円の口は,元本出捐日から1年経過時(昭和32年8月2日経過時)において,組入れ済み元本額1332万4223円であったのですが(民集24巻4号362頁。なお,弁済期が未到来であるその時までの(利率年14.6パーセントの)利息分6万9285円との合計は1339万3508円。これは,利息制限法1条3号の上限利率である年15パーセントで単利計算をした算出額1380万円を優に下回ります。),当該元本額につき同月3日から年15パーセントの利率で単利計算をすると,元本弁済期の昭和33年5月31日までの302日間には利息が165万3663円つき,同日終了時の元利金合計額は1504万7171円となるはずでした(ちなみに,元本額1339万3508円で計算しても,1505万5770円)。ところが,現実に東京高等裁判所が認めた昭和33年5月31日終了時の元利金合計額は1507万4373円であって(昭和32年9月20日の組入れ後の元本1365万4663円及びこれに対する同月21日から昭和33年5月31日まで253日間における年15パーセントの割合の利息141万9710円の合計額),昭和32年8月3日基準の利息制限法準拠上限額を2万7202円(又は1万8603円)超過していたのでした。1年きっかりの期間で区切って計算して見てみると,実は利息制限法違反の高裁判決に最高裁判所がお墨付きを与えていたのではないか,ということになってしまうのでした。)
東京高等裁判所の採用した理論を筆者なりに忖度してみましょう。
まず,同裁判所は,適用されている利率が利息制限法上の上限利率未満である場合と上限利率そのものである場合とを分けて処理するもののようです。
利息制限法上の上限利率未満の利率で発生する利息に係る元本組入れは,それを認めた上,その結果については――その間利率の変動があっても――通算し(実は最後まで通算せずに各1年経過以後最初の組入れ期で区切るのかもしれませんが,一応区切らずに通算するものと考えます。少なくともきっかり1年で締めるとまずいことになったのは,前記のとおりです。),これと,最初の元本額について利息制限法上の上限利率によって単利計算をし,かつ,1年ごとに元本組入れ(判決文には,単利計算をしつつも各1年経過時には元本組入れをするとは書かれていませんが,民法405条との関係で,1年ごとの元本組入れは必要でしょう。ここは正に筆者の忖度です。)をした結果たる元利金合計算定額(面倒ですから,以下「1条+405条基準元利金合計額」といいましょう。)との比較を事後的にして,当該1条+405条基準元利金合計額を超過していない限り有効とするのでしょう(しかし,超過した場合にはどう処理するのかははっきりしていません。本件の場合は結果オーライでしたが,厄介な問題です。むしろ,あらかじめ超過の結果が発生しないような仕組みにしておくべきもののようです。)。
利息制限法上の上限利率で発生する利息については,1年ごとの元本組入れしか認めないこととしているわけなのでしょう。しかし,上限利率も上限利率未満の利率も利息制限法上はいずれも適法な利率であるのに,利息の元本組入れの場面では取扱いが異なるのは奇妙ではあります。
以上のような筆者の諸小疑問にかかわらず,「延滞利息を元本に組み入れる重利の予約と利息制限法との関係に関する基本的なルールは既に確立されている状況にあると言ってよい」そうです(金融法委員会8頁)。所詮小疑問は小疑問にすぎず,「基本的なルール」は金甌無欠なものとして厳然と確立しているのでしょう。(なお,当該「ルール」の一環として,金利制限法規の適用において制限基準となる(それを超えてはならない)元利金合計額は,単純な単利計算に基づくものではなく,1条+405条基準元利金合計額となるのだ,ということもあるものでしょうか(最判昭和45年4月21日の射程に関する金融法委員会11-14頁参照)。)
適用利率が上限利率である場合には1年未満の間隔での利息の元本組入れを一切認めないのは,1条+405条基準元利金合計額を上回る額の組入れ後元本額(と既払利息額との合計額)の発生をもたらすこととなる余計な利息の発生をあらかじめ抑えるためなのでしょう。しかし,そうであれば,当該事前予防的効果を得るためには,組入れを制限するよりも,端的に利息自体の発生が制限されるものとする解釈を採用する方が,筆者には分かりやすいところです。上限利率が適用される場合でもそれ未満の利率が適用される場合でも,約定どおりの時期に不払利息の元本組入れを認めることとするが,その結果の組入れ後元本額と既払利息額との合計額が当該時点における1条+405条基準元利金合計額を上回ることとなる場合には,(事後的に制限超過状態が発見されてしまってその修復処理を――改めて理論構築しつつ――することとなる面倒を避けるために)その都度,超過をもたらす分の利息はそもそも発生しなかったものとする(あるいは発生することに執着がされるのならば,「裁判上無効」でもよいでしょう。),というような解釈論の展開がされるわけにはいかないものでしょうか。(なお,その都度処理が望ましいことに関しては,利息制限法は「単に制限超過の利息契約をなすことを制限するに止まらず,制限超過の利息の生ずる法律状態そのものを禁圧する趣旨と解し,遡及効を認めなくとも,なお改正後における利息の発生を制限すると解するのが正当」と,利息制限法改正の際の法の適用関係に関して説かれてもいるところです(我妻Ⅳ・51頁。下線は筆者によるもの)。ただし,経過規定の定めがなかった大正8年法律第59号による旧利息制限法の改正の際,判例は,「法律不遡及の原則」を理由として「大正7年中の契約により2000円につき1割2分の利息を生じているときに大正8年の改正があっても1割に制限されない(大判大正10・5・23民957頁)」としていたそうです(同頁)。しかし,当該前例にかかわらず,現行利息制限法附則4項は「この法律の施行前になされた契約については,なお従前の例による。」との明文規定を設けています。)
ちなみに,上記解釈論は,前記3(3)エのニセ石田説の修正版ということになりましょう(ということで,石田真説の孫だと思ってもらえば,全くの荒唐無稽の説ということにはならないでしょう。)。すなわち,その弁済期にちゃんと支払われていた利息についても忘れずに考慮に入れることとし,制限基準を純粋単利の「最初の元本に対する最高制限利率による〔貸付時からその時点までの〕利息の額」から1条+405条基準元利金合計額に改め,利息の元本組入れに係る複利契約の効力を失わせるまでのことはしないこととし,「爾後は,約定利率の如何に拘わらず最初の元本に対する最高制限利率に依る利息が発生する」を「当該時点における1条+405条基準元利金合計額を上回ることとなる場合には,その都度,超過をもたらす分の利息はそもそも発生しなかったものとする」と改める,というわけです。
念のため検算すると,昭和31年8月3日に貸付けられた1200万円について,昭和33年5月31日経過時の1条+405条基準元利金合計額は1551万2712円となります(=12,000,000×1.15×(1+0.15×(302÷365))。1200万円の口に係る昭和33年5月31日経過時の現実の元利金合計額は,東京高等裁判所によれば,前記のとおり,元本1365万4663円及び利息141万9710円の合計1507万4373円です。当該合計額について見れば,1条+405条基準元利金合計額との関係はもとより問題ありません。ただ筆者としては,元利金合計額ではなく,すっきりと元本額1507万4373円ということでもよかったのではないか,と(今年2023年11月15日が来日150周年となるボワソナアドと共に(というProjet解釈(前記(1)最終段落参照)でよいのですよね))思うばかりであるところです。
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