(記事が長くなり過ぎて,前編及び後編に分けて掲載することになりました。御了承ください。)

 


1 会社法の一部を改正する法律(平成26年法律第90号)の成立及び予定施行期日(201551日)

 昨年(2014年)1月15日の本ブログの記事(「会社法改正の年に当たって(又は「こっそり」改正のはなし)」http://donttreadonme.blog.jp/archives/2471090.html)で,会社法(平成17年法律第86号)を改正する動きについて触れるところがありました。当該改正に係る法案は,2014年6月20日に第186回国会の参議院本会議で可決されて法律として成立。当該会社法の一部を改正する法律は,同月27日に平成26年法律第90号として公布されました。同法は,「公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」ものとされていますが(同法附則1条),政府においては「平成27年5月1日から施行することを予定」しています(20141125日法務省ウェッブ・サイト掲載「会社法の改正に伴う会社更生法施行令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集について」参照)。

そこで,施行を3箇月余の後に控えた平成26年法律第90号による会社法の改正内容にちなんで,改めて会社法に関して何か書いてみようと思い立ちました。

 ところが,改正会社法を読み,改正前会社法を改めて読むと,やはり相変わらず「むむむ,これは・・・」と頭を何重にもひねって脳を活性化させるべき素材に満ちています。楽しく会社法世界に遊ぶことができるかどうか,果たして会社法関係シリーズを途中で挫折することなく続けられるものかどうか・・・。とにかくやってみましょう。

 


2 子会社等及び親会社等並びに子会社及び親会社

 改正会社法(平成26年法律第90号による改正後の会社法)は,第2条3号の2において新たに「子会社等」を,同条4号の2において新たに「親会社等」を定義しています。

しかし,会社法における子会社及び親会社の定義(同法23号・4号)は,かつて新しい会社法の勉強を試みた際に,まずすっきりと頭に入らなかったつまずきの石でした。

 名が体を分かりやすく表してくれていないのです。

 所蔵の江頭憲治郎教授の『株式会社法』(有斐閣・2006年(初版))を見直すと,その8頁(「親会社・子会社の定義」という注のある頁)の欄外に,次のような書き込みがしてあります。

 

  親会社は会社に限らぬ。

  子会社も会社に限らぬ。

  しかし,親会社の「子」は株式会社に限られ,

  子会社の「親」は,会社(株式会社,合名会社,合資会社又は合同会社)に限られる。

  「親」が会社でない「子」は,子会社になれぬので,子法人等になる。

 


 魂の叫びでしょうか。自分で書いたはずのものですが,はて,今読み返すと,自分に何か非常に深刻な悩みごとがあったのではないかと心配されてしまいます。

さて,それはともかく,改正会社法下では,子会社及び親会社並びにその関連事項に関する諸定義について変化があるのかないのか,変化があるとしてその内容はどのようなものか。

 


3 子会社等

 まず「子会社等」について見てみましょう。

 


(1)子会社等の定義(改正会社法23号の2

 「子会社等」とは,「子会社」(改正会社法23号の2イ)又は「会社以外の者がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」(同号ロ)と定義されています。

 


ア 子会社の定義

 


(ア)会社法23

子会社は,「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」です(会社法23号)。

 


(イ)会社法施行規則3条1項:子会社は会社に限らぬ。

 会社法2条3号の子会社の正確な定義は,結局法務省令を見なければ分からないのですが,当該法務省令である会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)3条1項には「法第2条第3号に規定する法務省令で定めるもの〔子会社〕は,同号〔法2条3号〕に規定する会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等」と規定されています(下線は筆者)。ところで,ここでの「会社等」は,「会社(外国会社を含む。),組合(外国における組合に相当するものを含む。)その他これらに準ずる事業体をいう」ものとされています(会社法施行規則231号)。すなわち,子会社といっても,会社法上の会社とされる「株式会社,合名会社,合資会社又は合同会社」(同法21号)には限定されず,また,法人格を有するものに限定(同条3号の「法人として」参照)もされず,広く組合及びその他の事業体をも含むものとなっています。子会社は「子・会社」ではなく,飽くまでも三文字熟語の「子会社」であって,必ずしも会社とは限られないというのが,会社法の世界における従来からの正統文法なのです。

 


(ウ)「法人として」の法人格の無いもの

 商法会社編の改正作業にかつて携わった稲葉威雄元広島高等裁判所長官は,会社法2条3号(及び4号)においては「法人として法務省令で定めるもの」と規定されているにもかかわらず,法務省令である会社法施行規則では子会社に法人ではないもの(「組合(外国における組合に相当するものを含む。)その他これらに準ずる事業体」)をも含ませていることについて,次のように疑問を呈しています。

 


  この場合,会社法が「法人として法務省令で定める」という意味は,何であろうか。法人かどうかは,実体たる事実の問題であって,法務省令の定めによって法人でないものが法人になるはずはない。組合の意味もあいまいであるが,民法上の組合であれば法人格はもたない。

  事業体というのも,法人格とは結び付かない広い概念である。そもそも〔会社法〕2条3号・4号の法人として定めるという限定の趣旨が判然としない。

  法人でないものを法人として定めたところで法人格は生まれない。親会社,子会社という用語を使うから,法人でなければならないとするのは,表現にとらわれ過ぎている。「法人として」を「ものとして」にするほうが,ずっと簡明である。(稲葉威雄『会社法の解明』(中央経済社・2010年)76頁)

 


法人でないものを法務省令で「法人として」定めても,確かに法人格は生まれません(民法331項参照)。しかしながら,会社法令上は「法人として」定められたことにはなるのでしょう。法人格は無いが「法人として定めるもの」は,それでは,亜法人(あほうじん)とでも称すべきものでしょうか。

 


  ・・・法の「法人として」という文言がもつ意味をどう解したのであろうか。これは,もともとの会社法の規定の詰めが甘く,文言が適切でなかったことに起因する弥縫策かもしれず,親会社・子会社という文言にひきずられて,これに該当するものは法人でなければならないと考えたのかもしれない。

  しかし,法人の実体のないものについて法務省令で定めれば法人となるものでない以上,このような限定をする意味は理解できない。

  むしろ自然人以外のものとする趣旨と考えるべきであろうか(事業体には,個人を含まないことになるか)。

  親子会社は,実質支配基準によって定まり,議決権の過半数を支配している場合は,その典型例(形式的に判断できる)であるが,これには限られない。この基準を具体化する定めが,施行規則3条3項であるが,財務・事業の方針の決定を支配しているかどうかは,事実認定の問題であるから,客観的な(第三者による)判断には困難がある(金融商品取引法の適用局面とは違って行政庁等の関与はない)。

・・・

渉外関係,企業結合(企業再編行為を含む)関係については,日本法上の形式的な意味の会社以外の存在を対象にする必要があることが,明らかであるから,その適用局面を明確にし(日本の会社法がどのような形で効力をもつか),必要に応じ,会社とか法人にこだわらない表現を採用する等の工夫をすべきであった。・・・(稲葉129130頁)

 


イ 「子会社以外の子会社等」の定義

 


(ア)会社法施行規則改正案3条の2第1項

 会社法的に表現すれば「子会社以外の子会社等」というくせのある表現になるであろう改正会社法2条3号の2ロの「もの」は,20141125日に法務省から意見募集手続に付された会社法施行規則の改正案(以下「会社法施行規則改正案」という。)によれば,改正会社法2条3号の3「ロに規定する者〔「会社以外の者」〕が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等」とされています(会社法施行規則改正案3条の21項)。ここが会社法文法の精緻なところなのですが,改正会社法2条3号の2ロに規定する「者」は「会社以外の」であって,「もの」は上記のとおり同ロ(「・・・法務省令で定めるもの」)の定義対象それ自体である「子会社以外の子会社等」ということになります。

なお,「子会社以外の子会社等」たる主体の性格について,坂本三郎編著『一問一答 平成26年改正会社法』(商事法務・2014年)の97頁に,「会社以外の者がその経営を支配している法人」という表現がありますが,ここでいう「法人」は会社法施行規則2条3項2号の会社等であって,法人格の無いものをも含む概念ですよね(前記の「亜法人」ですよね。)。

 


(イ)子会社と「子会社以外の子会社等」との分別:「親」の相違

 子会社と「子会社以外の子会社等」との違いが分かったでしょうか。分かりにくいですよね。

 実は,どちらも他者に財務及び事業の方針の決定を支配されている事業体等なのですが,当該他者たる支配者(「親」)の違いが子会社と「子会社以外の子会社等」との違いです。子会社の支配者(「親」)は会社(株式会社,合名会社,合資会社又は合同会社)でなければなりませんが(会社法23号),「子会社以外の子会社等」の支配者(「親」)は,「会社以外の者」でなければならず(改正会社法23号の2ロ),会社であってはいけません。むしろ,子会社については「子会社」といわずに逆立ちして「会社の子事業体等」といい,「子会社以外の子会社等」については「会社以外の者の子事業体等」とでもいうことにすれば分かりやすいでしょうか。

 


(ウ)「子会社以外の子会社等」と子法人等との分別:「親」としての自然人の許否

 また,「子会社以外の子会社等」については,法務省は現行会社法施行規則3条の改正は考えていないようなので,同条3項1号柱書きの二つ目の括弧書き内にある「子法人等」との分別がまた問題となります。(ただし,現行の会社法施行規則では子法人等が出てくるのは同規則3条3項1号の括弧書きの中だけのようですから,子法人等の概念は実は重要なものではないのでしょうが。)

子法人等は,「会社以外の会社等が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等」であるものとされています。この場合の支配者(「親」)は「会社以外の会社等」ですから,会社法施行規則2条3項2号の会社等から会社を除いた「外国会社,組合(外国における組合に相当するものを含む。)その他これらに準ずる事業体」ということになります。支配者(「親」)が会社でないものは「子会社以外の子会社等」でありますが,更にそのうちの支配者(「親」)が事業体等(会社を除く。)であるものが子法人等であることになります。自然人が支配者(「親」)であるものは,「子会社以外の子会社等」にはなっても,子法人等にはなりません。子法人等とは,「会社以外の事業体等の子事業体等」ということになるのでしょう。

 支配者(「親」)が自然人であり得るか否かが「子会社以外の子会社等(子法人等を除く。)」と子法人等との違いの決め手です(坂本97頁(注)参照)。子会社の「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」の定義に係る会社法施行規則3条3項の規定と,「子会社以外の子会社等」の当該定義に係る会社法施行規則改正案3条の2第3項の規定とを見比べるとそれが分かります。会社法施行規則改正案3条の2第3項2号イ(4)には「自己(自然人であるものに限る。)の配偶者又は2親等内の親族が所有している議決権」という規定が,同号ロ(1)には「自己(自然人であるものに限る。)」という規定及び(6)には「自己(自然人であるものに限る。)の配偶者又は2親等内の親族」という規定が,並びに同号ニの三つ目の括弧書きに「自己(自然人であるものに限る。)の配偶者又は2親等内の親族が行う融資の額を含む。」という規定があります。これらの規定にいう「自己」は「〔改正会社法2条3号の2〕ロに規定する者」(会社法施行規則改正案3条の31項)たる「会社以外の者」ですが,そこには自然人が含まれているからこそ,上記のような規定が設けられるわけです。自然人でないものに,配偶者や親族があるわけはありません。

 


ウ 子会社等,子会社,「子会社以外の子会社等」及び子法人等の相互関係

 以上,他者に支配される事業体等(「会社等」)である子会社等という全体集合があって,そのうち会社に支配されるものが子会社であり,子会社の補集合が「子会社以外の子会社等」であって,更に「子会社以外の子会社等」の部分集合として子法人等があるということのようです。「子会社」や「子法人等」といった場合,下線部分の「会社」や「法人等」は子の性質を表すものかといえばそうではなくて,むしろ「親」の性質を表すものとして考えた方がしっくりするわけです。しかし,そのようにあえて考えて納得するときであってもすべてがきれいに説明されるわけではなく,会社は法人である(会社法3条)にもかかわらず,そこには目をつぶることになります(子法人等の支配者には,法人であっても会社は含まれない。)。これもまた,会社法の味わいの珍なるところです。

 


(2)完全子会社等

 


ア 子会社等と完全子会社等との違い

 なお,改正会社法847条の3(最終完全親会社等の株主による特定責任追及の訴え)第2項2号で定義されている「完全子会社等」は,子会社等の延長線上にはない,一応別種のものだと考えましょう。これまた「完全・子会社等」ではなく,「完全子会社等」という六文字熟語であるからです。すなわち,改正会社法847条の3第2項2号で定義される完全子会社等は,「株式会社がその株式又は持分の全部を有する法人」でありますから,①その支配者たる株式又は持分の全部を有する者が株式会社に限定されていることによって子会社等(支配者に限定はない。),更には子会社(支配者が会社であればよい(同条3号)。)よりも狭く,②支配されるところの当の主体の性質においても法人に限定されていることによって会社等(会社(外国会社を含む。),組合(外国における組合に相当するものを含む。)その他これらに準ずる事業体をいう(会社法施行規則232号)。)たる子会社等(同規則31項,会社法施行規則改正案3条の21項)よりも狭いものとなっているところです。「親」に完全に支配されている子会社等が,すべて完全子会社等になるわけではありません。

 


イ 完全子会社:株式会社限定

 さらに,会社法施行規則改正案218条の3(完全親会社)第1項(現行会社法施行規則2191項)に規定されている「完全子会社」は,「当該ある株式会社が発行済株式の全部を有する株式会社」とされています。完全子会社等とは,支配者が株式会社である点では同じであっても,支配されるところの当の主体が法人より狭い株式会社でなければならないところで違います。

 


4 親会社等

 「親会社等」に移りましょう。

 


(1)親会社等の定義(改正会社法24号の2

 改正会社法2条4号の2は,「親会社等」を「親会社」(同号イ)又は「株式会社の経営を支配している者(法人であるものを除く。)として法務省令で定めるもの」(同号ロ)と規定しています。

 


ア 親会社の定義

 


(ア)会社法2条4号

会社法上の親会社は,「株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」です(同法24号)。

 


(イ)会社法施行規則3条2項:親会社は会社に限らぬ。

親会社について会社法施行規則を見ると,親会社は「会社等が〔会社法24〕号に規定する株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該会社等」とされています(同規則32項。下線は筆者)。親会社は,会社等(会社(外国会社を含む。),組合(外国における組合に相当するものを含む。)その他これらに準ずる事業体(同規則232号))です。したがって,親会社といっても組合等を含むものであって,会社には限られません。

 


イ 「親会社以外の親会社等」の定義(会社法施行規則改正案3条の22項)

改正会社法2条4号の2ロの「親会社以外の親会社等」は,会社法施行規則改正案3条の2第2項において「ある者(会社等であるものを除く。)が〔改正会社法2条4号の2〕ロに規定する株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該ある者」と定められています。会社等が株式会社を支配していれば当該会社等は親会社です。すなわち,株式会社を支配する者であって,親会社ではない者が,「親会社以外の親会社等」ということになります。自然人が典型的なものとして考えられるのでしょう。「例えば,株式会社の経営を支配している自然人は親会社に該当しません。」ということになっている一方(坂本98頁。すなわち,会社法施行規則232号の会社等には自然人は含まれないことになります。なお,稲葉130頁の「〔「法人として」は〕むしろ自然人以外のものとする趣旨と考えるべきであろうか」参照),改正会社法2条15号ハ・ニ等の親会社等について「株式会社の経営を支配している者が自然人である場合」が該当することになる旨説明されています(坂本98頁(注))。

なお,相続財産法人(民法951条)は会社等たる事業体ではないでしょうから,たといある株式会社を支配するに足る株式が当該法人に係る相続財産に含まれていても,当該相続財産法人は当該株式会社に係る親会社にはならないのは当然として,法人ではありますから(改正会社法24号の2括弧書き参照),その結果「親会社以外の親会社等」ともされないものとも考えられます。しかし,「株式会社の経営を支配している者(法人であるものを除く。)として」(「であって」ではない。)えいやっと法務省令で決めた会社法施行規則改正案3条の2第2項の定義のみを見ればよいのだということになれば,相続財産法人も,法人ながら,「親会社以外の親会社等」であるものとされ得そうです。

とはいえ,改正会社法2条4号の2ロの「親会社以外の親会社等」については,主に自然人が念頭に置かれていることになるとは,ちょっと文字面からは分かりにくいですね。「親会社・等」であって「親・会社等」ではないということでしょうか。会社法令の文法は,不規則活用が多いです。

 


ウ 親会社等の「子」:株式会社限定

 


(ア)株式会社以外には「親会社等の捜索は許さず」

また,親会社等が支配の対象とするのは,本来,株式会社に限られるはずです。子会社ないしは子会社等は,株式会社に限られず,会社等一般でよかったのですが,親会社等の「子」は,会社法を見ると株式会社に限られています(会社法24号及び改正会社法24号の2ロは「株式会社の経営を支配」するものと規定(下線筆者))。これはあれですね,株式会社ではない子会社等に対しては,「親」の捜索が禁止されているような具合ですね。法的には,子があれば必ずそれに対応する親があるというわけにはいかないのは,親族法について,昨年(2014年)1月3日の記事(「ナポレオンの民法典とナポレオンの子どもたち」http://donttreadonme.blog.jp/archives/2166630.html)で見たところでした(「父の捜索は許さず」に一種対応する「親会社等の捜索は許さず」ですか。)。

 


(イ)例外:会社法135条1項と会社法施行規則3条4項

ところで,「子会社は,その親会社である株式会社の株式・・・を取得してはならない。」と定める会社法135条1項に関して,子会社及び親会社の各定義及びそれらの関係が問題になっています。当該問題を処理するためということで,会社法施行規則3条4項は「法第135条第1項の親会社についての〔会社法施行規則3条〕第2項の規定〔同規則における親会社の定義規定〕の適用については,〔法135〕条第1項の子会社を〔規則3条〕第2項の法第2条第4号に規定する株式会社とみなす。」とわざわざ規定しています。しかし,当該規定も難しい。一読して同項の意味が了解できるのであれば,あなたは会社法令ワールドの立派な住人です。

 


 ・・・会社法上の「親会社」は,日本法に基づき設立された「株式会社」の経営を支配するものに限られるので(会社則32項),外国会社に「親会社」は存在し得ない。ただし子会社による親会社株式の取得の禁止の規定(会社1351項)の適用に関しては,外国会社である子会社の経営を支配するものも親会社とみなされる(会社則34項)。(江頭9頁注(12))

 


 と言われただけでは,なおよく分かりませんね。更にいえば,「外国会社である子会社」ばかりが対象とされているわけではないようです。

 


 ・・・〔会社法施行規則34項は,会社法〕135条の親会社株式取得が制限される場合の子会社は,株式会社に限定されない(ここでは,〔会社法〕2条3号に定められた意味での子会社を意味する)。そのことを規定したものであるが,分かりにくい。つまり,〔会社法〕2条4号・施行規則3条2項は,日本法に基づいて設立された株式会社を子会社とするものを親会社としているが,135条の局面での子会社は,株式会社に限定されるものではない。そのことを明確にするための手当てとされる。(稲葉130頁)

 


 会社法における子会社及び親会社の各定義をそれとして読んで会社法135条1項を読むと,親会社が「子」とし得るものは株式会社に限られるはずであるから(同法24号),「子会社は,その親会社である株式会社」とある文言からは,同項の子会社は親会社の「子」である以上当然株式会社でしかあり得ないな,ということになります。しかし,そのように読まれては困るので,会社法施行規則3条4項に 晦渋ながらも規定を置いたということでしょう。

 会社法施行規則3条4項に従えば,会社法135条1項の「親会社」についての法務省令における定義規定は,同規則3条2項を読み替えた,「法第2条第4号に規定する法務省令で定めるもの〔親会社〕は,会社等が法第135条第1項の子会社の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該会社等とする。」となる,ということになるのでしょう。しかし,やっぱり,親会社の「子」は株式会社であるものとするはずの会社法2条4号との関係が釈然としませんね。やはり,「当該株式会社の経営を支配している法人として」えいやっと法務省令でそう決めたからそれでいいのだ,ということでしょうか。

 会社法135条1項を,「株式会社の子会社は,その株式会社の株式(以下この条において「親会社株式」という。)を取得してはならない。」とでも書いてくれれば困難が少なかったように思うのですが,どうでしょう。改正会社法においては,同項の改正はありません。

 


(2)完全親会社等

 


ア 親会社等と完全親会社等との違い:完全親会社等の株式会社限定性

ところで,改正会社法847条の3(最終完全親会社等の株主による特定責任追及の訴え)第2項で定義されている「完全親会社等」と親会社等との関係はどうなるでしょうか。せっかく自然人を含めるために親会社等という概念を改正会社法2条4号の2で作ったのですから,完全親会社等にも自然人が含まれるのでしょうか。否,そうではありません。完全親会社等は,株式会社に限られます(改正会社法847条の3第2項柱書き)。完全親会社等は,やはり「完全親会社等」という六文字熟語であって,「完全・親会社等」(自然人が含まれる。)でも「完全親・会社等」(株式会社以外の会社,組合,事業体が含まれる(会社法施行規則232号参照)。)でもないわけです。

しかし,「会社等」といわれれば会社でないものが含まれるように考えるのが自然なのですが,完全親会社等には,「等」にもかかわらず会社以外のものは含まれず,しかも会社の中でもその一部である株式会社しか該当しないということになっています。「完全親株式会社」というのでは長過ぎるということだったのでしょうか。それとも,「株式交換完全親株式会社」(会社法76811号)及び「株式移転設立完全親株式会社」(同法8043項)との関係が面倒だったということでしょうか。しかし,引っ込むべきはずなのに出っ張るように見えるのはどういうことか。

あるいは,現行会社法804条3項の「株式移転設立完全親株式会社」は立法ミスですので,「完全親株式会社」は縁起が悪いとして忌避されたものか。すなわち,会社法2条32号の定義上株式移転で設立される会社は株式会社に限られており,当該会社については「株式移転設立完全親会社」といえば足りるにもかかわらず(同法77311号参照),現行会社法804条3項においては「株式移転設立完全親株式会社」なるものが定義の無いまま突然登場してしまっています(下線部筆者)。そこで平成26年法律第90号は「こっそり」改正を行い,改正後会社法8043項においは「株式移転設立完全親株式会社」が「株式移転設立完全親会社」に修正されているところです(姫野司法書士試験研究所のブログ2014年8月26日の記事「こんな会社法に負けるな!」参照)。

 


イ 完全親会社等と完全親会社との違い

 


(ア)完全親会社等の定義(改正会社法847条の32項)

 完全親会社等は,「完全親会社」(改正会社法847条の321号)又は「株式会社の発行済株式の全部を他の株式会社及びその完全子会社等(・・・法人をいう。・・・)又は他の株式会社の完全子会社等が有する場合における当該他の株式会社(完全親会社を除く。)」(同項2号。なお,多層にわたる完全子会社等が存在し得ます(同条3項)。)です。

 


(イ)完全親会社の定義(改正会社法847条の21項)

 完全親会社は,「特定の株式会社の発行済株式の全部を有する株式会社その他これと同等のものとして法務省令で定める株式会社」です(改正会社法847条の21項柱書き。現行会社法851条(株主でなくなった者の訴訟追行)1項)。完全親会社となる法務省令で定める株式会社に係る会社法施行規則改正案218条の3は,現行会社法施行規則219条(会社法施行規則改正案では削除)と同様の規定です。

 


(ウ)「完全親会社以外の完全親会社等」の定義:「子」・「孫」の株式会社純一性の有無

従来からの①完全親会社のほかに②改正会社法847条の3第2項2号の「完全親会社以外の完全親会社等」を設けた理由は,次の説明から理解すべきでしょう。

 


2 ①と②との違いは,株式会社Aが,その中間子法人による保有分(すなわち,株式会社Aの間接保有分)と合わせて,株式会社Bの発行済株式の全部を有する場合において,当該中間法人が,株式会社に限られるか(①),それとも,株式会社以外の法人が含まれるか(②)という点にあります。・・・(坂本163頁)

 


 そうだとすると,ブリーダー的に言えば,完全親会社の「子」や「孫」は代々折り目正しく株式会社であるのに対して,「完全親会社以外の完全親会社等」の「子」や「孫」には株式会社ならざる法人という斑(ブチ)が混ざるという点が,両者の相違ということになるわけです(親会社の「子」として株式会社以外の法人があることは,本来あるべからざることです(会社法24号参照)。)。

 


ウ 最終完全親会社等

 しかし,お話は完全親会社等では終わりません。改正会社法847条の3第1項において更に「最終完全親会社等」が規定されています。

 最終完全親会社等は,「当該株式会社の完全親会社等であって,その完全親会社等がないものをいう。」と定義されています。なお,最終完全親会社等は,「最終・完全親会社等」なので,株式会社でなければなりません。「例えば,一般社団法人がグループ企業の最上位に位置する株式会社の発行済株式の全部を有する場合には,当該一般社団法人が「最終完全親会社等」に該当してその社員が多重代表訴訟の原告適格を有するわけではなく,あくまでも,当該株式会社が「最終完全親会社等」に該当し,当該一般社団法人が当該株式会社の株主として多重代表訴訟の原告適格を有すること」となるわけです(坂本161162頁)。

 しかし,「最終」完全親会社等というネーミングも何でしょうかね・・・「最初」完全親会社等や「元祖」完全親会社等では変だということでしょうね。とはいえ,単なる○○者ではなくて,「最終○○者」と自称していた人がいましたね。終末論的響きがあるというべきか。確かに,今次会社法改正について触れるところもあった2013年6月14日の閣議決定は,「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」と題されていました。ターミネーターですね。

 


(と,この辺で字数オーバーです。次の後編に続きます。)

 


弁護士 齊藤雅俊

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