「姦淫するなかれ」と云へることあるを汝等きけり。されど我は汝らに告ぐ,すべて色情を懐きて女を見るものは,既に心のうち姦淫したるなり。もし右の目なんぢを躓かせば,抉り出して棄てよ,五体の一つ亡びて,全身ゲヘナに投げ入れられぬは益なり。もし右の手なんぢを躓かせば,切り棄てよ,五体の一つ亡びて,全身ゲヘナに往かぬは益なり。(マタイ伝福音書527-530


1 児童ポルノ単純所持罪の導入

 今年(2014年)6月18日に児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律が第186回国会の参議院本会議で可決され成立し,同月25日に平成26年法律第79号として公布され,翌7月15日から施行されました(同法附則11項)。同法によって,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号。以下「児ポ法」)の一部が改正され,いわゆる児童ポルノ単純所持罪が導入されたわけです。改正後児ポ法(題名が「児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」に改められています。)及び平成26年法律第79号における児童ポルノ単純所持罪に関する条項は,次のとおりです(なお,小括弧の数字は,後出の国会審議概要の整理に係る番号に対応します。)。


   (定義)

児ポ法2条 この法律において「児童」1とは,18歳に満たない者2)(3をいう。

 2 ・・・性交等(性交若しくは性交類似行為をし,又は自己の性的好奇心を満たす目的で,児童の性器等(性器,肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り,若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)・・・

 3 この法律において「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって,次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。4

  一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態

  二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの5

  三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に6児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部,臀部又は胸部をいう。)7が露出され又は強調8されているものであり,かつ,9性欲を興奮させ又は刺激するもの5)(10


   (児童買春,児童ポルノの所持その他児童に対する性的搾取及び性的虐待に係る行為の禁止)

 児ポ法3条の2 何人も,児童買春をし,又はみだりに11児童ポルノを所持し,若しくは第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管することその他児童に対する性的搾取又は性的虐待に係る行為をしてはならない。12


   (児童ポルノ所持,提供等)13)(14

児ポ法7条 自己の性的好奇心を満たす目的で15,児童ポルノを所持16した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者17)(18であり,かつ,当該者であることが明らかに認められる19者に限る。)20は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で15,第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識できる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者17)(18であり,かつ,当該者であることが明らかに認められる19者に限る。)20も,同様とする。21)(22

 〔第2項以下略〕


  (国民の国外犯)

児ポ法10条 ・・・第7条第1項・・・の罪は,刑法(明治40年法律第45号)第3条の例〔日本国外において罪を犯した日本国民に適用〕に従う。


  (両罰規定) 

児ポ法11条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関し,第5条,第6条又は第7条第2項から第8項までの罪を犯したときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。


  (施行期日等)

平成26年法律第79号附則1条2項 この法律による改正後の第7条第1項の規定は,この法律の施行の日から1年間は,適用しない。23



上記児ポ法の改正に関しては,インターネット上の世論等で盛り上がりがあるものかと思いましたが,意外と反応は激しくはないようです。法改正が終わってしまえばもうすべてが終わった気分になってあとは淡々と適応していくということなのか,それとも児童ポルノ単純所持罪に係る規定の適用は来年(2015年)7月15日からなので(平成26年法律第79号附則12項),まだピンと来ず,その時が近づいてからにわかに慌てて騒ぎ出すつもりなのか。

(ちなみに,議員立法(議案提出者は衆議院法務委員長)である平成26年法律第79号の附則1条2項では,いきなり「この法律による改正後の第7条第1項」という表現が出て来ます。これに対して,これが内閣提出に係るものであったならば,「この法律による改正後の児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第7条第1項」とされていたでしょう(下線は筆者)。平成26年法律第79号附則4条以下を見ると分かるところですが,同法によって改正された法律は児ポ法に限られていません。なお,平成26年法律第79号と児ポ法とは別個の法律であって,前者の溶け込み残りの附則が後者の条文に続いて出てくるのは,六法編集者がそのように編集してくれるからにすぎません。)


(なお,この記事はブログ記事としては長くなり過ぎて1回でアップロードできなくなったので,2回に分けて掲載します。次の記事にお進みください。)