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(起)「1年以上延滞」と「1年分以上延滞」との間

http://donttreadonme.blog.jp/archives/1080258052.html

(承)旧民法財産編3941

    http://donttreadonme.blog.jp/archives/1080258062.html



4 フランス民法旧1154

旧民法財産編3941項がそれに由来するフランス民法旧1154条は,次のように規定していました。(他方,同法旧1155条は,我が旧民法財産編3942項及び3項に対応する条項です。)

 

  Art. 1154  Les intérêts échus des capitaux peuvent produire des intérêts, ou par une demande judiciaire, ou par une convention spéciale, pourvu que, soit dans la demande, soit dans la convention, il s’agisse d’intérêts dus au moins pour une année entière.

  (元本の利息であって発生したものは,裁判上の請求又は特別の合意により,利息を生ずることができる。ただし,請求又は合意のいずれも,支払を要すべき(未払)利息であって少なくとも丸1年間分のものに係るものでなければならない。)(翻訳上難しかったのが“intérêts dus au moins pour une année entière”の部分です。ここでは“pour”が用いられていて“pendant”ではありませんから,「支払を要すべき利息であって少なくとも丸1年間分のもの」であって,「少なくとも丸1間延滞した利息」ではないものと判断しています。)

 

なお,フランス民法旧1154条の文言が,フランス語で読むと(むしろフランス語で読むのが本当なのですが。),重利許容の高らかな宣言から始まる形となっているのは,「複利(anatocismus)の契約は前51年の元老院議決より禁止せられている。」(原田157頁)とのローマ法以来の旧習を打破するのだとの意気込みを示すものでしょうか。

実は,共和暦12(ブリュ)(メール)11日(1803113日)の国務院(コンセイユ・デタ)の審議に付されたフランス民法旧1154条対応条文案(「第511項」)は,“Il n’est point dû d’intérêts d’intérêts.(「利息の利息によって支払が義務付けられることはない。」)と規定するものだったのでした(Procès-Verbaux du Conseil d’État, contenant la discussion du Projet de Code Civil, An XII. [Tome III], Paris, 1803; p.213)。これが,共和暦12霜月(フリメール)16日(1803128日)にビゴ=プレアムヌ(Bigot-Préameneu)から提出された修正案(「第55条」)においては,既にフランス民法旧1154条の条文となっています(Conseil d’État, p.322)。その間,霧月11日の国務院での審議(Conseil d’État, pp.256-261)においては,どのような議論がされていたものか。以下御紹介します。

 

ずルニョ(Regnaud)が,実際には終身年金権の年金については利息が認められていると言い出し,当該例外が認められます(我が旧民法財産編3942項参照)。

次にペレ(Pelet)が案文について,利息を締めて(liquider)元本に組み入れるという現に存在している慣行を廃止しようとしているのか,債権者が利息を元本に組み入れることによって強制執行による困難から債務者を免れさせてやるということもあるのだ,それに,利息が農地や建物の賃料よりも不利に扱われるのはなぜなのだ,と疑義を呈します。

ここでカンバセレス(Cambacérès)第二統領(第一統領は,あのボナパルトです。)が,原案511項の意味に係る考察を述べます。いわく,「当該規定は,専ら,裁判官が利息の利息の支払(une condamnation d’intérêts des intérêts)を命ずることを妨げようとするものですね。例えば,何年も延滞している金額及びその支払遅滞を理由とする利息の支払を債権者が求める場合,裁判所は,その双方を彼に認めます。しかし,裁判所は,元本から生じたものの支払の遅滞に係る利息〔利息の利息〕を同様に彼に認めることはできません。とはいえ,例えば新たな合意によって両当事者が共に取り決め,かつ,例えば元の元本に,既発生の利息を加え――当該新たな信用の対価たる利息に係る約定と共に――その全てについて債権者が債務者に対して新たな信用を供与した場合においては,当該約定がその効力を有すべきことについての疑問は全くありません。」と。

いい男(長谷川哲也『ナポレオン~覇道進撃~第4巻』(少年画報社・2013年)60-61頁参照の当該発言に対し,ビゴ=プレアムヌ及びトレイラアル(Treilhard)が,起草委員会(la section)はその意思をもって起草したのです,と直ちに協賛の意を表します。

マルヴィル(Maleville)は,当事者の合意によるものをも対象に含む重利全面禁遏原則の歴史を説きつつ,「タキトゥスいわく,Vetus urbi faenore malum(この都市に,利息による害悪は,古くからのものである)と。家庭,更には国家を滅ぼすためにこれより確かな手段はないのであります。ささやかな負債であっても,絶え間なく(sans cesse)新たな利息を他の利息について生じさせることにより,そのようにして当該負債を増大させしむることを貪欲な債権者に許したならば,その累増の厖大及び迅速(l’énorme et rapide progression)は,ほとんど観念しがたいものとなるのであります。」と獅子吼します。しかし,結論としては,重利は結局根絶できぬものではある,しかし法律で正面から認めることはやめてくれ,ということになります。いわく,「もちろん,監獄に入っている(dans les fers)債務者に請求する債権者が,彼に対し,既に生じた利息を,彼に貸し付けられた新たな元本として認めさせることを妨げることはできません。しかし,法が,彼にこの方法を示してやる必要はありません。また,何よりも,法は,利息の利息を正式かつ直截に肯認してはならないのであります。」と。

カンバセレスの発言にウホッと思ったのか,ペレは,自分の発言は,当事者による組入れについてではなく,裁判によって精算された(liquidés judiciairement)利息についてされたものである,と述べます。

ルニョは,示談によるものであっても裁判によるものであっても,全ての清算(liquidation)について,負債となる金額の総体について利息を生ぜしめるという同様の効果があるようにすべきだ,と求めます。裁判でも認めろというわけですから,すなわちこれは,原案に対する修正要求です。

これに対してレアル(Réal)は,利息が利息を生むようにするために債権者が3箇月ごとに債務者を出頭させるというような極めて大きな濫用がされるだろう,と後ろ向きかつ原案維持的な予言をします。

ここでガリ(Gally)が,債権譲渡の結果,譲渡された利息には利息が生ずるようになるのではないかと言い出し,マルヴィル,ジョリヴェ(Jollivet)及びトロンシェ(Tronchet)の間でひとしきり議論があります。

当該脱線的議論の終わったところで,ビゴ=プレアムヌが,清算された利息についての利息は支払が義務付けられるべきものかどうか国務院の見解が示されるべきだと発言したところ,ベルリエ(Berlier)は当事者の合意によるものと裁判によるものとを分けて議論すべきだとの原案維持的な分類学説を表明し,これに対してルニョは,両者間に違いはなかろうと言います。ベルリエは,合意による場合においては債務者がいったん弁済すると同時に同額の新たな利息約定付き貸付けがされたものと擬制されて新たな信用の供与がされたことになるが,裁判においては専ら既発生の利息債権に係る執行力が認められるのであって債務者にその支払が猶予されるわけではない,それに加えて裁判の通達と同時に更に利息に利息が当然発生するものとされるならば債務者に酷に過ぎると反論します。

トロンシェは,古法ではそのような(当事者の合意によるものと裁判によるものとの)区別はなかった,専ら高利(usure)対策であった,利息の混合された金額についての利息の支払を求めることはパリでは認められていなかったことは争われない,風俗が改善されていないのに立法者が(重利に対して)より甘い顔を見せるべきではない,と述べます。トロンシェは重利反対派です。

ペレは,自分の発言は高利に関するものではなかったと言います。

重利容認派のルニョは,(いわゆる高利に対する)過酷な政策は風俗を矯正するよりは悪化させ,悪意の債務者に支払を怠ることに利益を見出さしめ,債権者及びその家族に害を及ぼすであろうと述べるとともに,更に,しかし利息の利息は当然に発生すべきものではないので,利息を元本に組み入れる請求(筆者註:この請求は,裁判外のものでよいのでしょう。)の日から生ずるものとするのがよい,と提案します。

ここでカンバセレスが,高利について,「金銭の利息が法律で一定されない以上,大多数の約定が高利的であるものと判断することは難しいでしょう。商業界の動きは,利息の評価について,不確か,かつ,しばしば幻想的なものにすぎない基準しか与えてくれないものですから。」と述べます。ルニョの提案に対しては,利息が当然のものとして債務者の同意なしに生ずるようになるという点において不正義を生ずることになってしまう,というのが第二統領の判断でした。

「しかし,両当事者が歩み寄り,既発生の利息を元本に組み入れると共にその全体について合理的かつ穏当な利息を約束することによって支払を猶予することに合意したときは,これは債権者が債務者に供与した新たな元本となります。ですから,元本に本来は利息として支払われるべきであったものが混合されているからといって,債務者の誓言がこのような取決めを駄目にできるということは不正義ということになります。」というカンバセレス発言に続く,ビゴ=プレアムヌの次の言明が注目されるべきものです。

 

少なくとも丸1年間分の未払利息(intérêts dus au moins pour une année entière)に係るものでなければ,利息の利息は支払を求められ,又は合意される(être exigés ou convenus)ことができない,という手当てを少なくともする必要がありますね。

 

トロンシェ及びレアル並びにマルヴィルへの譲歩でしょうか。フランス民法旧1154条並びに我が旧民法財産編3941項及び現行民法405条の起源は,実にここにあったのでした。

なおもトロンシェが,「この,発生した利息と元本との自発的併合というやつが,一家の息子をすってんてんにするために高利貸しが用いた手段なんですがね。」と否定的な発言をしますが,いい男・カンバセレスは,「しかしここでは,成熟し,かつ,彼らの権利を行使している人々が問題となっているのですよ。」と述べ,トロンシェ発言を未成年者保護的な対策に係るものとして片付けてしまいます。第二統領は更に「高利を禁遏しようとするならば,何よりも利率を一定し,それを超過する者に対する刑罰を再導入しなければなりません。そこまでしなければ,全ての対策は幻想です。」と述べます。ウホッ,利息の元本組入れ頻度の制限は,高利禁遏策として,いい男からは高く評価されてはいないもののようです。あるいは「いい男」は,後記6で御紹介するeにちなんで,重利問題の場面においては「e男」と呼んでもよいものでしょうか。

ラクエ(Lacuée)が,債務者に甘すぎると債権者が借金をしなければならないことになって彼自身が債務者になってしまう,と述べて,重利容認の方向に背を押します。

最後にトレイラアルの発言(利息の支払請求の裁判においては当該利息の利息が認められていたこと及び利息付き貸付けが認められるようになった以上は当該貸付けに係る利息についても従来からのものと同様の規整がされるべきことについて)があって当日の審議は終了し,原案は起草委員会の再考に付されたのでした。


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